「循環ソナタの出発点」=シューベルト ヘ短調ソナタD625
「さすらい人幻想曲」作品15 D760 にて「循環ソナタ」を創造した
は有名。だが、天才シューベルト と雖も、下準備全く無しに「循環ソナタ」を創造できたワケではない。
前年1817年は「ピアノソナタの年」であり、計8曲作曲した。
- イ短調D537
- 変ホ長調D557
- ホ短調D566
- 変ニ長調D567
- イ長調D664
- ホ長調D459A+D506
- 嬰ヘ短調D571+D570
- ロ長調D575
この8曲は、「シューベルティアーデ」にて友人に聴いてもらうために作曲され、「交響曲の代役」として「完成曲」の形で披露された、と推定される。
8曲のピアノソナタの直後に「交響曲第6番ハ長調D589」を作曲したが、オーケストラメンバーを雇う金銭がシューベルトにも友人たちにも無かったので、演奏されなかった。
シューベルト は、「交響曲第6番」に匹敵するピアノソナタを2曲作曲する。「ハ長調D613」と「ヘ短調D625」である。どちらも「冒頭楽章から最終楽章へ、と順序良く作曲されなかった」ために、中間楽章が判り難いが「大ソナタ」である。
シューベルト ヘ短調ソナタD625 楽曲構成
第1楽章 ヘ短調 4/4 ソナタ形式
第1主題呈示 ヘ短調 第1小節から
第2主題呈示 変イ長調 第30小節から『第1主題からの発展に拠る』
第2主題中間にて6小節 ホ長調を堅持 第54-59小節
第3主題呈示 変イ長調 第69-75小節、呈示部終了
展開部 第76-117小節、ヘ短調にての再現部入りを明示
第1主題再現 へ短調
第2主題再現 変ニ長調
第2主題中間にて6小節 イ長調を堅持
第3主題再現 ヘ長調
短いコーダ
第2楽章変ニ長調 3/4 3部形式
主部呈示 変ニ長調(第1楽章第2主題再現の調性)
中間部 イ長調(第1楽章第2主題再現の6小節)
主部の変奏再現
第3楽章 ホ長調+イ長調 3/4 トリオ付きスケルツォ(3部形式)
スケルツォ呈示 ホ長調(第1楽章第2主題で6小節堅持の調性)
スケルツォ第49-68小節 ヘ長調(第1楽章第3主題再現の調性)
トリオ イ長調(第1楽章第2主題再現 & 第2楽章中間部 の調性)
第4楽章 ヘ短調 2/4 ソナタ形式
第1主題呈示 ヘ短調
第2主題呈示 ヘ長調(!)第27小節から
第3主題呈示 変イ長調 第73小節から「第2主題」から展開して派生(ヘ長調で呈示部を終結)
展開部
第1主題再現 ヘ短調
第2主題再現 変イ長調
第3主題再現 ヘ長調
コーダ ヘ短調 → ヘ長調