Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

「歴史に『もし』は存在しない」のだが(No.1401)

2006-10-26 16:05:25 | 作曲家・バルトーク(1881-1945)
久しぶりに、バルトーク論である。バルトークのピアノ演奏は本当に素晴らしい! 自作自演の見事さだけでなく、ベートーヴェン や スカルラッティ や リスト も見事なモノである!
 バルトークは「ピアノ科教授」であって「作曲科教授」の瞬間は生涯1度も無かったのである。これ、本当!

1905年ルビンシュタインコンクールで第2位だった



このことを バルトーク は心に引き摺っていたと伝えられている。念のため申し添えるが
  • 「第2位になってうれしかった」のではなく
  • 「優勝できなくて放心状態」

である。
 う~ん、遺された録音を聴くと、バルトーク自身の想いは、正当に思える。
・・・で「誰が優勝?」かと言うと

優勝したのは3才若いバックハウス!



  • 世界中で シュナーベル に続いて、世界で2番目に「ベートーヴェンピアノソナタ全集を録音」した
  • 『鍵盤の獅子王』と呼ばれ、尊敬され畏れられていた


 う~ん、唸る。 「歴史に『もし』は存在しない」のだが

  1. バックハウス が「もし」コンクールに出場しなかったら
  2. バルトーク は当然優勝し(← 第2位だったのだから)
  3. ピアニスト になってしまい
  4. 作曲家バルトーク の傑作群は存在しなかったかもしれない!

と思う。 「第2位」になってくれたおかげで、バルトーク作曲の傑作は作られる素地が固まった、ように思える。つまり、バックハウスがコンクールに参加してくれたおかげで(まわりまわって)バルトークの名作を私たちは聴ける! と感じる。私高本は、ねじ曲がった性格か???
 コンクール第2位の翌年 = 1906年 から「民族音楽採譜」をバルトークは開始したのである。
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作曲家論 : バルトーク 第5回 (No.1380)

2006-09-24 20:03:11 | 作曲家・バルトーク(1881-1945)
 バルトークの生涯で、「最も長い職歴 は ピアノ科教授」である。「作曲科教授」では無い。 生涯を「ピアノ教育に捧げた」と言っても良いのかも知れない。そんなバルトークの1面を知るのに最も良い楽譜を
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バルトーク お薦め楽譜 その4



パップ晶子編集 ニュースタンダードピアノ曲集 作品集(2)




  • 推薦度  :☆☆☆☆☆
  • 正確さ  :☆☆☆☆☆
  • 資料価値:☆☆☆☆☆
  • 校訂報告:☆☆☆☆☆

価格: ¥ 1,680 (税込)


2002年出版。 2003年には既に第2刷が発行される人気曲集である。

  1. 10のやさしいピアノ小品 BB51
  2. ピアノの初心者のために 18のやさしいピアノ小品 BB66
  3. ルーマニアのクリスマスの歌(ルーマニアのコリンダの旋律) BB67

の3集が収められており、全てが「初級者向け」作品である。既に紹介した「子供のために 全2巻」と同じ方向の曲集ばかりが集められている、と考えて良い。

 いろいろと工夫が凝らされているが、最も「他社版」と異なるのは、ルーマニアのクリスマスの歌(ルーマニアのコリンダの旋律) BB67 である。
  • バルトーク自身が「演奏会用編曲」した曲が
  • 曲集全部が終わった後に
  • まとめて最後に集められている

が特徴。

 素晴らしい楽譜なのだが、2点だけ同じパップ晶子編集校訂楽譜と比べた場合、やや物足りない。

  1. バルトーク自作自演録音についての考察が、この曲集だけ欠落している!(← 10のやさしいピアノ小品 第5番&第10番は バルトーク全曲の中でも録音が豊富な曲だけに残念)
  2. 「子供のために」全2巻冒頭にあった「挿絵」があればさらにわかり易い

の2点。もし改訂版を出す機会があればお願いしたい。
 民謡の日本語訳まできちんと正確に記されている素晴らしい楽譜である。
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作曲家論 : バルトーク 第4回 (No.1378)

2006-09-22 23:36:27 | 作曲家・バルトーク(1881-1945)
 本日号はバルトーク。 1年前まで著作権が残存していた関係で、楽譜もCDも「著作権分高かった」のだが、今や著作権フリーになり、世界的作曲家となった! (← バルトーク並びに著作権所有していた遺族の皆様、ごめんなさい!)
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バルトーク お薦め楽譜 その3



パップ晶子編集 ニュースタンダードピアノ曲集 作品集




  • 推薦度  :☆☆☆☆☆
  • 正確さ  :☆☆☆☆☆
  • 資料価値:☆☆☆☆☆
  • 校訂報告:☆☆☆☆☆

価格: ¥ 1,680 (税込)


2000年出版。
 本年購入したのだが、「初版&第1刷」だった。 (1) も記載されていないので、2000年時点では後続の楽譜が刊行されるかされないかは決まっていなかったと推測される。
 割合に初期の作品から「難しくもなく易しくもなく」の作品が選ばれており

  1. バルトーク自作自演CD録音と「楽譜」との比較
  2. 初版楽譜のミス、が修正されている!

が魅力。全てを見渡したわけではないのだが、相当に、丁寧な編集 & 校正 で出来ている。 おそらくミスは
  • P42 3段目160小節の 右手3拍目の2ヶの音符に「シャープ」が抜けたことだけ!

だと思う。 素晴らしい楽譜がまた1つ日本から出た!
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作曲家論 : バルトーク 第4回 (No.1374)

2006-09-18 23:44:54 | 作曲家・バルトーク(1881-1945)
 本日号はバルトーク。ちょっとヤバげな作曲家だが、いいぞ! 1年前まで著作権が残存していた関係で、楽譜もCDも「著作権分高かった」のだが、今や著作権フリーになり、世界的作曲家となった! (← バルトーク並びに著作権所有していた遺族の皆様、ごめんなさい!)
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バルトーク お薦め楽譜 その2



パップ晶子編集 ニュースタンダードピアノ曲集 バルトーク子供のために(2)




  • 推薦度  :☆☆☆☆☆
  • 正確さ  :☆☆☆☆☆
  • 資料価値:☆☆☆☆☆
  • 校訂報告:☆☆☆☆☆

価格: ¥ 1,680 (税込)


2006年出版。
 副題に「スロヴァキアの子供の歌と民謡によるピアノ初心者のための小品集(オクターブ内の)」とある。
 第1巻 = 「ハンガリー編 40曲」に比較して、
  • 「ハンガリー音楽」の特徴は無く
  • 「ドイツ音楽」に馴染んでいる人(← 演奏家も、指導者も、生徒も!)には「楽」

な特徴がある。 バルトーク生前の大ヒット作であり、いくつかの「校訂楽譜」があるが、この パップ晶子版は

  1. 校訂報告が正確!
  2. 挿絵が極めて有用
  3. 日本語が正確(← 相当に大切なポイント!)

である。 「初版至上主義者」以外の日本人であれば、この楽譜は必携だと思う。
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作曲家論 : バルトーク 第3回 (No.1370)

2006-09-14 16:27:42 | 作曲家・バルトーク(1881-1945)
 本日、パップ晶子 による「バルトーク公開講座」を受講して来た。 パップ晶子 は「音楽之友社版 バルトーク」を既に5冊編集している大家である。 私自身全5冊購入して、いろいろと調べていたのだが、やはり「著者本人の講座」を聴くと、細部まで疑問がほどけて行く。本日号から(連続になるかどうかははっきり言えないが)全5巻に亘り、「パップ晶子版 バルトーク楽譜」について掲載する。
まずは、講座で最も力の入っていた「子供のために 第1巻」から

バルトーク お薦め楽譜 その1



パップ晶子編集 ニュースタンダードピアノ曲集 バルトーク子供のために(1)




  • 推薦度  :☆☆☆☆☆
  • 正確さ  :☆☆☆☆☆
  • 資料価値:☆☆☆☆☆
  • 校訂報告:☆☆☆☆☆

価格: ¥ 1,680 (税込)


2005年出版。
 正直言って「摩訶不思議な感触」が初めに手に取った時の思い出としてある。
  • 原典版楽譜であるのに
  • どこにも「原典版」とも「Urtext」とも書かれていない

からである。 何でだろう? 不思議だ!

 とにかく「使い易い楽譜」である!

  1. 1946年改訂版を基礎にした「原典版」の基準に優に達している楽譜本体

  2. 子供にわかり易いように、冒頭に「挿絵」と「説明」、曲毎に「大意」を記載

  3. 指導者にわかり易いように、巻末に「作品解説」が17頁も(!)掲載


など、至れり尽くせりである。『曲毎の大意』は改訂版では削除されているので、改訂版(Boosey & Hawkes)よりも使い勝手は相当に良い(そして安い!)

 「ハンガリー音楽のリズムの特徴」なども極めて分かり易く記載されているので、まず「作品解説」を読んでから、弾くなり、指導すると良いように感じる。

 「初版至上主義」以外の日本人であれば、この楽譜が最も良いと思う。 
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作曲家論 : バルトーク 第2回 (No.1342)

2006-08-17 13:57:16 | 作曲家・バルトーク(1881-1945)
 真っ先に述べる必要なことがある。

バルトーク は、全体像を掴み難い作曲家



の1人! 演奏会でも頻度高く演奏されるし、ピアノ教育の途上でも多く出会う。また「音楽史」では、重要な作曲家と習う。その割には、何となく印象が定まらない。
 まずは魅力から列挙して見たい。
  • 力感が素晴らしい!
  • 集中力が卓越しており、完成度が高い(未完成の2作品を除く)
  • ハンガリーやルーマニアの「民族音楽」を生かしている
  • 教育的な作品の、完成度が高い

などなど。1曲づつだと、魅力あるのだが、なぜか、「部分評価 = 全体評価」には繋がっていないように思う。私高本なりに理由を考えてみた。
  • 管弦楽曲は 最後の3作品以外は「演奏会のトリ」を務める作品が無い。
  • ピアノ作品は多いが、時間的にまた質感的に短く、「全バルトーク演奏会」以外だと、「トリ」を務める作品が無い(かも知れない)。
  • 「心休まる」感触が皆無に近い

 好きな作曲家の1人なので、CDは少なからず所有しているのだが、バルトークCDを延々と聴くと疲れる 事実は否定できない。う~ん。

 バルトーク音楽の中心は「ピアノ音楽」である。管弦楽曲も多いし、オペラもあるし、バレエもあるし、声楽曲も、ヴァイオリンソロ曲もあるが、中心は「ピアノ音楽」である。ソロでCD8枚分。協奏曲と室内楽曲がこれに加えられる。

 量としては充分である上に、完成度も高いのだが、なぜか「ピアノ音楽」の水準から見た時に「妙な感じ」がする。

  • 「ミクロコスモス」は 全6巻 153曲 で CD2枚分もの大作!
  • しかし バッハ「平均律」や ドビュッシー「前奏曲集」 ラフマニノフ「前奏曲集」 に比べて「全曲演奏会」はほどんどない

ことである。 題名自体が 【小宇宙】 の意味だが、どうも全曲演奏は、弾く方も聴く方も敬遠気味だ。
--------

バルトークの「名作」は 1936年以降



に集中している。

  1. 弦楽器、打楽器、チェレスタのための音楽(1936)
  2. 2台のピアノと打楽器のためのソナタ(1937)
  3. ヴァイオリン協奏曲第2番(1937-1938)
  4. コントラスト(1938)
  5. 弦楽器のためのディヴェルティメント(1939)
  6. 管弦楽のための協奏曲(1943)
  7. 無伴奏ヴァイオリンソナタ(1944)

 この期間にバルトークはなぜか、ピアノソロ曲は ミクロコスモスの後半しか作曲していない。
 ピアノ作品が 「構想としての規模の不足」が否めないのは、成熟する前の作品の可能性が高い。個々の曲の魅力が高いだけに残念。もしかすると

卓越した「バルトーク弾き」がまだ出現していないだけの可能性



も少なからずある。 川上敦子 出現以前は、「伊福部昭ピアノ音楽」の評価が低かったので、この可能性は高い。

 主要作品 については、近日掲載予定。「バルトーク自作自演CD」から開始の予定。
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作曲家論 : バルトーク 第1回 (No.1341)

2006-08-16 21:24:00 | 作曲家・バルトーク(1881-1945)
次の通りです。

バルトーク(1881-1945)総合評価



ピアノソロ曲:☆☆☆☆
ピアノ協奏曲:☆☆☆☆
ピアノ室内楽:☆☆☆☆
連弾&2台 :☆☆☆☆☆
歌曲伴奏  :☆☆☆
ピアノ教育 :☆☆☆☆☆

音楽史評価 :☆☆☆☆


コメント等は明日号にて。
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