Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

晩年の名作 D916B+D916C の本来の姿 6(No.1749)

2010-05-30 19:20:25 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
(Taka)
2010-05-23 05:36:08
Takaです。
[[2010-05-18 20:30:07]]のコメント確認致しました。
ご返信頂き有難うございます。
>デムス&ゼルダーの実行したことは「補筆」であり、「改訂ではない」
とありますが、
私も、ちょっと思い違いがありましたね。
「改訂」とか、「編曲」とは性質が異なるということですね。

現状、D916b+D916cは、イエルク・デムス氏の補筆によるものが
完成版とさせたということの認識でよろしいのでしょうかね?
もっとも、個人的にも(出版当初みたく)「ピアノ小品」よりも
「ピアノソナタ・ハ長調」としての方が相応しい気がするのです
がね。
>D916B+D916C の補筆完成稿楽譜は ユニヴァーサル版 NO.18575
は、
近いうちに購入しようかと考えております。
併せて、来る7月20日の
佐伯周子リサイタルも行こうかどうか現在考慮中であります。
とにかく、有難うございます。


 

D916B+D916Cは、イエルク・デムス氏(&ゼルダー)の補筆によるものが、これまでの唯一の補筆完成版


です。これは間違いなくデムスの功績です。

 頂いたコメントについて、私高本が本日のタイトル標題「本来の姿」について考え込んでしまいました。ピアニスト佐伯周子 にも、この件について尋ねたところ、意外な答えを頂きました。(後述します)
 「本来の姿」について、ベーレンライター新シューベルト全集編集者=デュル と デムス は「時間軸」がずれているのです。つまり

  1. デュル → 「作曲した瞬間」
  2. デムス(&ゼルダー) → 「作曲後に1番(=D899/1)を取り除いた形で D916B+D916C が残った瞬間」

を問題にしているのです。
 D916B+D916Cは、「作曲した瞬間」は間違いなく「即興曲集の第2曲と第3曲」でした。しかし、出版社=依頼者=ハスリンガー から言われたのか、シューベルト自身が1人で判断したのかははっきりしませんが、即興曲集作品90 は第2曲以降を全部差し替えて作曲し直され出版され、D916B+D916C は取り残されました。

デムスは「残り2曲でピアノソナタの両端楽章」だ!


と確信し、補筆完成版を作成しました。


 7/20に演奏する 佐伯周子 の見解は、デュル よりも デムス に近いですがまた別の意見でした。

D916B+D916C は「オーケストラ用の曲」だと感じる


と言うのです。

佐伯周子説では、「D916C は グリーグピアノ協奏曲終楽章と瓜二つ」


です。
 聴かせてもらった私高本もこれには完全に同意します。

D916B は、ピアノ3重奏曲変ロ長調D898 の第1楽章に1部転用された後に、交響曲ニ長調D936A の第1楽章冒頭にそのまま転用される


と言うほどシューベルトが愛した楽想です。
 「31才での死」が無ければ、交響曲ニ長調D936A は完成された可能性が高い曲です。ちなみに、D936A は

  1. D936A/1 ニ長調 4/4 速度指示無し 145+71小節 未完 スケッチ

  2. D936A/2 ロ短調 3/8 Andante 204小節 未完 スケッチ

  3. D936A/3 ニ長調 2/4 スケルツォ「第1稿」 124+94小節、「第2稿」 389小節 どちらも 未完 スケッチ


の『3楽章』と考えられています。つまり「終楽章は作曲に手を付けられていない」可能性が高いのです。多くのシューベルト学者は「スケルツォ=終楽章」と考えているようで、ニューボールト補筆完成版も終楽章扱いですし、他の学者の補筆完成版も終楽章扱いです。しかし

シューベルトは、D936A/3 = スケルツォ明記


です。ベートーヴェンには「2拍子のスケルツォ」は存在しており、中期ピアノソナタ変ホ長調作品31/3 に既に現れています。「2拍子だから終楽章」は安易な考えと思います。


 佐伯周子の見解は「D916C はオーケストラ曲の終楽章」と言うことなので、「交響曲D936A の終楽章」が最も当てはまり易いと思います。すると、デムスが主張していた形と極めて似たことになります。つまり

  1. D916B → ピアノソナタ または 交響曲の第1楽章

  2. D916C → ピアノソナタ または 交響曲の終楽章


となります。


 デムス、ゼルダー、佐伯周子 の3名の見解を聞くと

D916B+D916C は「ピアノ小品」として着手されたが、規模が「交響曲クラス」の大規模曲であった!


がシューベルトの最終見解だった可能性が極めて高いです。交響曲ではなく「ピアノソナタ」の可能性も極めて高いです。完成型がないのですから、誰もが確定することはできません。
 佐伯周子の見解は、演奏会プレトークで本人が何か話すかもしれません。どうぞお楽しみに。
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「遺作3大ソナタ」ハ短調D958 その1(No.1748)

2010-05-29 19:29:38 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
 シューベルトは「人生31年10ヶ月」の内、「30年2ヶ月」がベートーヴェンが生きた時代を生き、しかも『同じ都市=ウィーン』で生活した。年齢差は27才あったが、『完全に同時代人&同地域人』だった。

シューベルトが最も尊敬した作曲家 = ベートーヴェン


である。モーツァルトもハイドンも尊敬し大きな影響を受けたが、シューベルトが最も影響を受けた作曲家は間違いなくベートーヴェンであった。
 ベートーヴェン「3大ソナタ = 悲愴+月光+熱情」はどれも名曲であるが、シューベルトも大いに影響を受けた曲を作曲した。「月光」の場合は、ピアノソナタやピアノ曲でなく「月に寄せて」作品57の3 D193 と言う歌曲になっている。「糸を紡ぐグレートヒェン」D118 の直後の作品で、「魔王」D326 よりも少し前だ。
 この曲も「シューベルトを代表する歌曲の1つ」ということは、岡原慎也 から教わった。レルシュタープが広めた「レマン湖上に浮かぶ月の姿」のイメージは、シューベルト作曲時=1815年5月17日=18才 には、ウィーンには敷衍していたことが鮮明にわかる。ベートーヴェン自身は「幻想曲風ソナタ」第2番 として作曲しただけであったのだから。
 1819年10月以前(=22才9ヶ月以前)の「初期シューベルト」の曲を詳細に追って行くと、

  1. ハイドン風
  2. モーツァルト風
  3. ベートーヴェン風
  4. ロッシーニ風

の4パターンが出現することがわかる。
 「中期シューベルト = 1819.11 - 1825.02」になると、オペラ作品でモーツァルトの影響が濃く残っていることはあるが、「ハイドン風」「ロッシーニ風」はほとんど消え去り、「ベートーヴェンの影響」が最大となっている。
 「後期シューベルト = 1825.03 - 1828.11」になると、「完全にベートーヴェンの影響最優先」となる。もう、モーツァルトの影響さえ薄くなってしまっている。「第9」「弦楽四重奏曲作品130」など「晩年のベートーヴェン」の影響も大きいので、シューベルト自身は死ぬ間際まで「ベートーヴェン研究」を続けていたことが判っている。


 多くのスカな音楽学者が「シューベルトはベートーヴェンを模倣したので、ベートーヴェン以下の作曲家」と言う誤った評価を下している。

この論法だと、マルチェッロ > バッハ > モーツァルト > ベートーヴェン > シューベルト


と断定されることになる。こんなワケないでしょ(爆
 「若い時は先輩大作曲家の良いところを取り込む努力を誰もがする」のがクラシック音楽の伝統。ベートーヴェンもシューベルトも伝統に忠実に従い、その類い希なる才能を開花させたのだ!


シューベルトが「最もベートーヴェンに影響された名作」は何か?


 この問いに対しては、いろいろな意見が出るだろう。

  1. ピアノソナタ 変ロ長調 D960(← 終楽章冒頭が ベートーヴェン作品130の弦楽四重奏曲の終楽章と瓜二つ!)
  2. ピアノソナタ イ長調 D959(← 終楽章が ベートーヴェン作品31/1のピアノソナタ終楽章と構造が全く同じ!)
  3. ピアノソナタ ハ短調 D958(← あっちもこっちもベートーヴェン作品に似ているが、冒頭が WoO80 とほとんど同じ!)
  4. ヴァイオリン幻想曲 ハ長調 D934(← ベートーヴェンチェロソナタ第4番作品102の2 と構造が完全に同一)
  5. 8重奏曲 ヘ長調 D803(← 誰が聴いても ベートーヴェン「7重奏曲」作品21 と全く同じ構造)

などなど、挙げ始めるとキリが無いほどなのだ!


 シューベルトの名作はどれもが甲乙付け難い名作である。私高本はどの曲も好きだ。その中で『どの曲が最もベートーヴェンに似た部分が多いか?』と問われば答える。

ハ短調ソナタD958 が「最もベートーヴェンの影響」を直裁的に反映した名曲だ!


と。
 D958 以上に「ベートーヴェンの影響を受けた曲」はある可能性が高い。「月に寄す」D193 の影響の方が大きいことは誰が聴いてもわかるだろうが、D958を越す名曲であるかどうかは大いに疑わしい。「ドイツリートファン」からは異論が来るかも知れないが(爆
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晩年の名作 D916B+D916C の本来の姿 5(No.1747)

2010-05-18 20:30:07 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
(Taka)
2010-05-17 19:55:37
Takaです。
お世話さまです。
先日は、[[2010-05-13 13:06:17]]に対して返信いただき、ありがとうございます。
文章内に、
>1.1978年 ドブリンガー社 世界初出版
とありますが、
この時点での楽譜に関してましては、純粋に2つのピアノ曲として、出版されたと聞いております。
確か、最初の曲(ハ長調)は、第2主題の途中までしか記されておらず未完成だった記憶でした
が、

後の文章の
>1988年 ユニヴェルザール社 「忘れられたソナタD916B」の名前で出版
を見ますと、
初出版以降から、イエルク・デムス氏により改訂されたということなのでしょうか?
また、
その改訂内容は・・・
■第1楽章:元の曲・D916b(ハ長調)
デムス氏改訂による完成版(締めも、ハ長調?)

■第2楽章:Allegretto ハ短調 D900を代用

■第3楽章:元の曲・D916c(ハ短調)
デムス氏改訂による完成版(締めは、ハ短調ではなくハ長調?)

という内容でよろしいのでしょうか?

もし、この改訂形式による楽譜が存在するのであれば是非入手したいと考えておるものです。

よろしくお願いいたします。


(Taka)
2010-05-18 16:29:58
Takaです。
[[2010-05-17 19:55:37]]の追記です。

実は私、このD916b+D916cに関してまして、
(うろ覚えなのですが)
今から25年前(1985年<昭和60年>3月の終わりぐらいであったことだけは間違いありません)
番組名は、FMクラシックコンサートだったと思います。(確か)
その日は、イエルク・デムス氏のピアノコンサートだったかと思うのですが、
その中で、シューベルトのピアノ曲を幾つか演奏していたものです。
その中の一つに、
D916b+D916cがあり、
この曲を全曲聴き終わった直後の司会アナウンサーのコメントに
「イエルク・デムスさんの独奏で、ピアノソナタ・ハ長調、忘れ去られたソナタでした」

とあったことを憶えております。
それと私、この曲は一旦テープ録音していたのです。
ラジオ番組だったので、ラジオを流している中で録音していたものです。

しかし、そのテープを破損してしまって、テープ自体まともに聴けない状態となってしまって・・・(泣)
この曲を、まともに聴きたいと思って、レコード店や楽譜の売っているお店にいろいろと出向いたのですが、見当たらず・・・

その後に、(この曲に関する情報を)いろいろと調べたところ、
実は「未完成」のような、「実の曲はまた別にある」かのような・・・
曖昧な形でしか、情報が得られず・・・今日に至っております。

ただ、かれこれ何十年か経って、このサイトを見付けたとき、
この曲の詳細をある程度、掘り下げた形で知ることが出来たので、
この際、可能な限りは当曲の詳細を知りたい!
そして、聴ける機会があれば是非!と思いまして、
ここにてコメントをさせていただいたものです。
ですので、
昨日の私のコメントと併せて、D916b+cの何らかの情報が
もっと頂きたいのです。

宜しくお願い致します。

 昨日&本日、Takaさんから「コメント」を頂いたので、その顛末を書く。(書いている最中に2度目のコメントを頂きました!)


 頂いたコメントについて、2点に纏めてみました。

  1. 「デムス&ゼルダーの補筆完成版の楽譜」について
  2. 「D916B+D916C の演奏を聴く」について

 私高本の見解を纏めて書きます。


D916B+D916C「デムス&ゼルダーの補筆完成版の楽譜」は最高傑作!


  シューベルトの曲は完成曲ばかりでなく、未完成曲も魅力に溢れており、数多くの補筆完成版があります。「ピアノソナタ」では

  1. バドゥラ=スコダ 補筆完成版の ヘンレ版ピアノソナタ第3巻
  2. ティリモ 補筆完成版の ウィーン原典版全3巻

が入手も容易であり有名です。それぞれ、補筆完成版校訂者による「全曲録音CD」も発売されました。(バドゥラ=スコダ版については、楽譜と録音の食い違いは相当にありますが)

 バドゥラ=スコダ と ティリモ の補筆完成版は、「冗長に流れる側面がある」のが欠点、と私高本は感じます。これまで「佐伯周子 ベーレンライター新シューベルト全集に拠るピアノソロ曲完全全曲演奏会」では、第1回(D840)と第2回(D655)に「未完成ピアノソナタ」を演奏してもらいましたが、バドゥラ=スコダ の版も ティリモ の版も使用せず、「新たな補筆完成稿」を私高本が作成しました。

 しかし、D916B+D916C の2曲に関しては、「デムス&ゼルダー補筆完成稿」を越す補筆完成稿を想定することはできませんでした。

『D916B+D916Cのデムス&ゼルダー補筆完成稿』ほど、【シューベルトの意図に忠実な補筆完成版】は極めて珍しい


です。
 「補筆完成版を作る」時に、大前提があります。

シューベルトは「決まり切った再現部」を書く時間を惜しんで清書しなかったハズ!


です。この論理で推し進めると

  1. 「ソナタ形式再現部の第1主題 → 第2主題の転調問題」と

  2. コーダ 以外は補筆は不要


になります。「デムス&ゼルダー補筆完成稿」は完全にこの方針で補筆完成稿を作成しています。しかも、内容が充実しています。

D916B+D916C の補筆完成稿楽譜は ユニヴァーサル版 NO.18575


で購入できます。是非購入して下さい。

デムス&ゼルダーの実行したことは「補筆」であり、「改訂ではない」


を加えておきます。「分をわきまえた補筆完成稿」で、私高本が手本にしています!!!
 調性 等については、Takaさんが書かれた通りです。D916B については、デムス&ゼルダーの見解では「ソナタ形式展開部の終了直前」であり、私高本の見解も全く同じです。つまり、D916B はソナタ形式の展開部終了直前まで、シューベルト自身が作曲した、と考えています。D916C は「ソナタ形式再現部冒頭音まで作曲」したと考えています。


D916B+D916Cの演奏は、7/20(火)東京文化会館小ホール 佐伯周子リサイタル にて「補筆完成版」演奏


 デムス&ゼルダーの補筆完成稿が「1985年3月以前に完成」していた、との情報、Takaさん、ありがとうございます。私高本の「日本初演1987年前後」の記憶も確かとは言えません。1984年7月以前の可能性は皆無ですが、その後は断言できません。
 デムスの演奏は(D900の挿入は違和感あったものの)素晴らしかったので、録音でも再演でもあれば聴きたい! と思っておりましたが、2010年の本日まで叶いませんでした。私高本は 「佐伯周子の演奏」で聴かせてもらいました > リハーサル にて。
 素晴らしい曲です > D916B+D916C

 Takaさん も是非聴いてほしい、と願っております。楽譜は「アカデミア」等で購入可能です。事前にご用意頂くと、さらに掘り下げた鑑賞も可能かと思います。
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晩年の名作 D916B+D916C の本来の姿 4(No.1746)

2010-05-13 18:44:08 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
(Taka)
2010-05-13 13:06:17
D916B+D916C
は、ピアノソナタとしてCD化された・・
みたいな話をチラッと聞きましたが、
本当なのでしょうか?

 本日、Takaさんから「コメント」を頂いたので、その顛末を書く。



D916B+D916C は、次のような順序で出版されました。

  1. 1978年 ドブリンガー社 世界初出版

  2. 1982年 ベーレンライター新シューベルト全集にて出版

  3. 1988年 ユニヴェルザール社 「忘れられたソナタD916B」の名前で出版


これがこれまでに出版された全ての楽譜です。他はありません。上の2種類は「自筆譜の通り」で、下の1種類が「補筆完成版」です。
 世界初出版の際に

D916B+D916C は、D899/1 に続く曲集であり、オペラ「グライヒェン伯爵」D918 の草稿と共に遺されていた


を発表し、続く ベーレンライター新シューベルト全集も同じように記載しました。

異論を唱えたのが ピアニスト=イエルク・デムス と 学者=ローランド・ゼルダー


です。新シューベルト全集刊行の2年後の1984年に精緻な楽曲分析を基に

D916B+D916C は2曲とも「ソナタ形式」で作曲されており、D916B = 冒頭楽章、D916C = 終楽章 説を唱えた


のです。中間楽章が無いと「シューベルトのピアノソナタ」には聞こえないので、「ドイチュ作品主題カタログ旧版(1951)」で同じ1827年作曲とされた 同じく未完成曲の アレグレット ハ短調D900 を中間楽章に据えます。そして、D916B+D916C と D900 の補筆を デムス&ゼルダー は1986年に完成させ、1988年に楽譜出版しました。
 デムスは 1987年前後にこの「忘れられたソナタ D916B(← このように表記していた)」を持って コンサートツアーを実施しており、日本でも東京で1回新宿文化センターで演奏しています。私高本も聴きに行っております。その時の演奏会プログラムかチラシか音楽の友にて「録音」の話は私も読みました。2010年の今ほど、輸入盤は入手が簡単な時代ではありませんでした。タワーレコード渋谷店がオープンしたのは1995年だったように記憶しています。
 デムスの演奏は面白かったので、録音を入手したいと考えていましたが、国内盤は発売にならなかったハズです。石丸電気の輸入盤コーナーも覗いていましたが、見付けることはできませんでした。
 来日時には既に録音はしていたようなのでおそらくCD化されたと思います。デムスは「広範囲のレーベルにて録音」しているピアニストなので、どのレーベルから発売されたかも掌握できておりません。


デムス&ゼルダーの補筆は素晴らしい!


ので、D916B+D916C は1人でも多くのシューベルトファンの皆様に聴いてほしいです。
 では、なぜ「デムス&ゼルダー補筆完成稿」が普及しなかったかについて、考察してみますと

既に1978年ベーレンライター新シューベルト「ドイチュ作品主題カタログ新版」に於いて、D900 は1820年頃の作品と確定していた


ことに尽きるように思えます。つまり「組合せに無理がある」のです。
 その為、「忘れられたソナタD916B」を弾くピアニストはデムス以外皆無のようです。もし、中古CDでも入手できれば聴いてみたい録音です。補筆自体は優れものです!
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岡原慎也新譜CD批評(No.1745)

2010-05-12 20:11:39 | CD&DVD 紹介&批評

シューベルト ピアノソナタ第21番変ロ長調D960 の最高録音の1つが登場



 『シューベルトのピアノ曲の最高傑作 = 変ロ長調ソナタD960』と考える人は多い。メロディーも和声もテンポもデュナーミクの広さも第2楽章主題が回帰して来る時の変奏技法も終楽章のコーダも全てが全て「シューベルトらしい」曲である。古く古くはシュナーベルの録音が1930年代には聴かれているから、80年以上に亘り愛されて来た名曲中の名曲である。


 ・・・が、「聴き手」側からは問題の多い曲の1つ。

  1. 第1楽章呈示部の「繰り返し部分」を演奏しないピアニストの方が多い

  2. ウィーンの名ピアノ=ベーゼンドルファー で聴くことがなかなかできない


が「主要2点の悩み」である。

シューベルトは「繰り返しは必要」と考えていたから、楽譜に遺した


のだが、ブレンデルを中心に「繰り返し無し派」が台頭しつつある21世紀。ちなみに「ウィーン派」と呼ばれるピアニストも過半数が「第1楽章繰り返しを弾かない」が50年前くらいからの実績である(涙


 日本を代表する「シューベルト弾き = 岡原慎也」がついに、変ロ長調ソナタD960 を録音した。カプリングは次の通り。

  1. ベートーヴェン : ピアノソナタ第14番嬰ハ短調 作品27-2「月光」

  2. シューベルト : ピアノソナタ第21番変ロ長調 D960

  3. シューベルト : アレグレット ハ短調 D915

  4. シューベルト : スケルツォ 変ロ長調 D593/1


 岡原慎也のソロCDは3枚目であるが、全てにおいてシューベルトが主役である。今回のCDでは「初のベートーヴェン」が入っており、「ベートーヴェン:ピアノソナタ全曲演奏会」を実施したエッセンスも盛り込まれている。


 全4曲の中で最も魅力的 = シューベルト ピアノソナタ第21番変ロ長調D960 であった。

「D960の魅力のツボ」を知り尽くした演奏


に聞こえる。『第1楽章呈示部繰り返し実行』『ピアニッシモのトリルの静けさ』『フォルティッシモツァートのトリルの轟き』『ベーゼンドルファーインペリアルの甘い音色』『もたつかないペダリング』などなど。

最大の美点は「シューベルトのスケールの大きい構想力」を余すところなく描く 岡原慎也の把握力


だと感じる。その結果

B=スコダ、デムス、グルダ、ブレンデル に代表される「ウィーン派」の演奏よりも魅力が深い演奏になった!


ことはここに特記しておく。
 アンコール曲かのように配置された シューベルトの2曲の小品(D915 と D593/1)もとてもチャーミングな演奏。しかし「小品だな!」と感じる。構想の大きさはシューベルト自身が盛り込んでいないのだから。

ベートーヴェン「月光ソナタ」は『静けさ』が漲った名演だが、聴き手により好みが分かれるだろう


 静けさの面が強調される反面、「激するベートーヴェン」の側面は抑えめに表出されている。グルダもブレンデルも「ベートーヴェンソナタではスタインウェイ」がウィーン流だったが、使用ピアノと作曲家の相性の問題があるかもしれない。(無いかも知れない。)


 CDを通して聴くと「ベートーヴェンソナタ → シューベルトソナタ」で演奏会プログラムが1夜分終わり、アンコールが2曲演奏された感触に浸れるCD。前のCDでドイツのハイデルベルクにまで録音に出張していた経験が反映されたのか、このCDでは「大阪イシハラホール」で収録されており、録音スタッフも変わっているが、私高本の感性では今回の方が「岡原慎也の魅力」を捉えられた割合が高いように聞こえる。岡原慎也の腕が上がった可能性も高い。このCDは

シューベルト変ロ長調ソナタD960 を「シューベルトの書いた楽譜通りにベーゼンドルファーインペリアルで名演を聴きたい人は必携!


と感じる。私高本もその1人である。
 尚、

解説は「全て岡原慎也自身執筆」であり、ベートーヴェンとシューベルトについての深い考察が盛り込まれている


ので、興味ある方が是非是非読んでほしい。

CDのタイトル名 = "An die Mond"


 これだけ深くピアノ曲だけでなく、ドイツリートまで含めた作曲家像を語ってくれる芸術家は本当に稀少である。ありがたい限りだ。
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ヤマハが コンサートグランドピアノ『CFシリーズ』発表(No.1744)

2010-05-11 19:14:49 | 実録! グランドピアノ購入実戦
本日2010年5月11日(火)に ヤマハ が19年ぶりになる「コンサートグランドピアノ」の大改訂を発表した。

ヤマハ コンサートグランドピアノ『CFシリーズ』 発表


1967年に『初代CF』が発表されてから、今回2010年の改訂を含めて

CF → CFIII → CFIIIS → CFX


とわずか4種しか「ヤマハコンサートグランドピアノ」は(国内モデルでは)発表されていない。リヒテル や ミケランジェリ や グールド がこれまでに愛用して来た「ヤマハ」が、また1段上を目指して、より素晴らしいピアノを世に送り出してくれることになった。おそらく、今月18日頃から発売になる クラシック音楽雑誌、ピアノ雑誌 に広告やレポートが出てくることだろう。本日5/11 に 東京オペラシティコンサートホール にて「お披露目コンサート」が開かれている。
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