開放感だけで構築された ノリントン指揮シューベルト「未完成」&「グレート」
終演後にはブラヴォーが飛んだ公演であり、「ノリントン節」全開だった。ノリントンの特徴は
弦楽器にノン・ビブラートを徹底する「ピュア・トーン」
コントラバスを強調する配置(最後列の高い所に巾一杯1列で、しかもトロンボーンを挟み)広げる
ヴァイオリンの「対抗配置」に拠るヴァイオリンの広がり
ホルンを左、トランペット(&ティンパニ)
であり、ベートーヴェンもシューベルトも一緒。上記の内、シューベルトで効果があったのは、ホルンとトランペットの対抗配置だけで、緩徐楽章ではっきりと2曲とも効果を挙げていた。シューベルトは「第2ヴァイオリンには主旋律は任せない」作曲法なので、ヴァイオリン対抗配置は全くと言って良いほど、効果が無かったのはベートーヴェンでは効果があったので、作曲法の違いを改めて認識させてもらった。コントラバスの強調は、「未完成」冒頭からはっきり打ち出していたが、チェロとのユニゾンにてコントラバスだけ強調するのは、違和感大だった。
「ピュア・トーン」はノリントンが毎回来日時に強調していることだが
ノリントン「ピュア・トーン」は緊張感に全く欠け、全ての音が「外に向けて開放される」のが特徴
これは「オリジナル楽器」オケや「オリジナル楽器奏法」オケに共通するのでなく、ノリントン特有。例えば、同じシューベルト「グレート」を演奏した ホグウッド指揮東フィルでは充分に緊張感を保っていたことを明記する。
ノリントンは「グレート」では木管倍管&16型オケ編成、「未完成」では8-8-6-4-4で指示通りの管楽器。「グレート」では、ピアノのフレーズでは「未完成」と同じ8型オケで演奏するのと、倍管フル編成を(ある意味巧に)自在に切り替える。つまり、ピアノやピアニッシモのフレーズは「人数を落とし」音に緊張感を与えない。満足した聴衆も居て、ブラヴォーも掛かったのだから、説得力皆無なワケでは無いが、シューベルトの目指した音とは私高本は到底思えない。
ノリントンは「フレーズの終了」を統一しないので、楽器毎のクセがそのまま残って、「オケ全体」として統一感が全く無い のが欠点
である。「フレージング」が統一されていないのである。
「ベートーヴェン交響曲全曲」の終了後に「未完成」&「グレート」が来るとは夢想だにしなかったが、初期に比べてN響弦楽器は柔軟になり対応していた。(オーボエ首席は、「未完成」で完全にコケたが、何か奏法に無理を言ったのだろうか?)
だが、ノリントンの要求する「音」の表現の巾が極めて狭いので、スケールを要求する シューベルト音楽には全く合わなかった。さらに、「未完成」は音量が小さ過ぎて何も伝わって来なかった。後日、放映されるので、読者の皆様はご確認頂きたい。
「N響のシューベルト」は次回は「普通の演奏」でお願いしたい。