Piano Music Japan

シューベルトピアノ曲がメインのブログ(のはず)。ピアニスト=佐伯周子 演奏会の紹介や、数々のシューベルト他の演奏会紹介等

シューベルト中期のピアノソロ作品群一覧(No.1668)

2009-07-12 22:11:53 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
 昨日号を編集してみよう! グループ内の前後関係は維持しながら、グループ間の位置を決め、作曲年を少し絞り込む。

  1. 1819.11.12作曲 Ms.33 「9のドイツ舞曲」変イ長調D365

  2. 1819末-1820作曲? Ms.34 「20のレントラー」D145L,D970

  3. 1820.05作曲 Ms.35 「6のエコセーズ」D697

  4. 1820.10-12作曲 Ms.38 「8のレントラー」D145L,D980C

  5. 1820.12-1822.02 Ms.28 「5のレントラー」D366,D974

  6. 1821筆写譜 「2のドイツ舞曲」D365 Ms.33の中の2曲を筆写

  7. 1821.03作曲 1824.06.09出版 「ディアベリ」変奏曲D718

  8. 1821.03.08-05.20作曲 Ms.39 「7のドイツ舞曲」D365,D722,D145

  9. 1820.05?,1821?作曲 Ms.40 「4のドイツ舞曲」D145W,D365

  10. 1821.05?作曲 Ms.41 「2のドイツ舞曲」D145W Ms.40の中の2曲を再度自筆

  11. 1821.06作曲 Ms.42 「6のアツェンブルクドイツ舞曲」D145W,D365

  12. 1821.08作曲 Ms.43 「4のドイツ舞曲」D365,D145

  13. 1821.08-09作曲 1821.11.29出版「36のオリジナル舞曲集」作品9 D365

  14. 1821-1823作曲 通称幻想曲(実際は変奏曲)ハ長調(未完成)D605

  15. 1822.08.15作曲 行進曲ロ短調D番号無し

  16. 1822.11作曲 1823.02.24出版 「さすらい人」幻想曲ハ長調作品15 D760

  17. 1822.11作曲 オペラ「アルフォンソとエストレッラ」序曲D759A

  18. 1822.12?作曲 1823.01.10出版「3のドイツ舞曲」D971

  19. 1822.12-1823.01前半作曲 1823.02.05出版「12のワルツ、17のレントラー、9のエコセーズ」作品18 D145

  20. 1823頃作曲 ピアノソナタ断片(未完成)ホ短調 D769A

  21. 1823.01作曲 Ms.44 「12のエコセーズ」D781(D783E を含む)

  22. 1823.02作曲 Ms.45 「17のドイツ舞曲」D779,D146,D783

  23. 1823.02?作曲 Ms.46 「9のドイツ舞曲」D779,D973

  24. 1823.02作曲 ピアノソナタ第14番イ短調 D784

  25. 1823.05作曲 Ms.47 「12のドイツ舞曲」D790(D783D を含む)

  26. 1823秋?作曲 1823.12.19出版 「ロシア風の歌」D780/3

  27. 1823秋?作曲 1823.12.19出版 ドイツ舞曲ニ長調D769/2

  28. 1823年末?作曲 1824.02.21出版 「2のレントラー」D366/6&D146/2

  29. 1823年末?作曲 1824.02.21出版 「3のエコセーズ」D781/4,D782&D781/7

  30. 1823.11-1824.09作曲 Ms.56 「6のドイツ舞曲」D783D,D975,D366,D146

  31. 1824作曲 Ms.50 「4のドイツ舞曲」D146,D769,D783D

  32. 1824.01作曲 Ms.49 「2のドイツ舞曲」D769

  33. 1824.07ツェリス作曲ブラームス筆写譜 Ms.51 「11のドイツ舞曲」D366 ブラウン論文とは違う構成

  34. 1824夏頃?作曲 Ms.52 「4のドイツ舞曲」D783D,D146,D366

  35. 1824.09.02作曲 「ハンガリーのメロディー」D817

  36. 1824秋?作曲 1824.12.11出版 「吟遊詩人の嘆き」D780/6

  37. 1824秋?作曲 1824.12.22出版 ワルツ変ホ長調D366/17

  38. 1824.09ツェリス作曲 Ms.53 「3のエコセーズ」D816

  39. 1824.10ツェリス作曲 Ms.54 「6のドイツ舞曲」D820

  40. 1824.11作曲 Ms.55 「2のドイツ舞曲」変ホ長調D366,D783D ブラウン論文とは違う構成

  41. 1824.11作曲 1825.01.05出版「12のドイツ舞曲、2のエコセーズ」作品33 D783

  42. 1824年末?作曲 1825.02.07出版「トリオ付きドイツ舞曲」D779/8&D779/9


 この順序でほぼ間違い無い! ベーレンライター新シューベルト全集の「汗の成果」である!
 シューベルト中期のピアノ作品の特徴として

  1. 舞曲が多く、同一曲が重複していることが多い

  2. 1823.11-1824.01シーズン用に、シューベルトとしては随分早い時期(1823.01-1823.05)に、舞曲集を3ヶ(Ms.44=D781,Ms.45,Ms,47=D790)を作曲したが、そのままの形ではどれも出版されなかった。おそらく出版に失敗したのだろう。


の2点がわかる。「作品9」が出版されてからは「1823.11-1824.01シーズン」以外は毎シーズン「12曲以上のワルツ集出版に成功」したシューベルトが、1回だけ出版を落としてしまったシーズンである。早過ぎた用意が、出版社との交渉を強気にし過ぎてしまったからだろうか?
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シューベルト中期のピアノソロ作品群一覧(No.1667)

2009-07-11 22:45:02 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
 まずピアノソナタ並びにピアノ小品集を見よう。

  1. 1821.03作曲 1824.06.09出版 「ディアベリ」変奏曲D718

  2. 1821-1823作曲 通称幻想曲(実際は変奏曲)ハ長調(未完成)D605

  3. 1822.08.15作曲 行進曲ロ短調D番号無し

  4. 1822.11作曲 1823.02.24出版 「さすらい人」幻想曲ハ長調作品15 D760

  5. 1822.11作曲 オペラ「アルフォンソとエストレッラ」序曲D759A

  6. 1823頃作曲 ピアノソナタ断片(未完成)ホ短調 D769A

  7. 1823.02作曲 ピアノソナタ第14番イ短調 D784

  8. 1823夏-秋?作曲 1823.12.19出版 「ロシア風の歌」D780/3

  9. 1824.09.02作曲 「ハンガリーのメロディー」D817

  10. 1824夏-秋?作曲 1824.12.11出版 「吟遊詩人の嘆き」D780/6


以上である。
 意外に作曲数が多いが、「馴染みの薄い曲」が多い。「アルフォンソとエストレッラ」序曲は、楽譜を見る限り「聴き応え」のありそうな曲だが、少なくとも録音は無い。日本では演奏されたことも「音楽の友」を見る限り無い。シューベルト自身がピアノソロ用に編曲した唯一のオペラ序曲である。「さすらい人」幻想曲作曲直後に作曲されたと推測されるので、「さすらい人」幻想曲は、遅くとも1822.11.29以前に作曲完了していたようだ。広く資料を見渡すといろいろなことが浮き彫りになって来る!


 次に「生前出版された舞曲集」を見よう。これは意外だと思います。

  1. 1821.08-09作曲 1821.11.29出版「36のオリジナル舞曲集」作品9 D365

  2. 1822.12?作曲 1823.01.10出版「3のドイツ舞曲」D971

  3. 1822.12-1823.01前半作曲 1823.02.05出版「12のワルツ、17のレントラー、9のエコセーズ」作品18 D145

  4. 1823秋?作曲 1823.12.19出版 ドイツ舞曲ニ長調D769/2

  5. 1823年末?作曲 1824.02.21出版 「2のレントラー」D366/6&D146/2

  6. 1823年末?作曲 1824.02.21出版 「3のエコセーズ」D781/4,D782&D781/7

  7. 1824秋?作曲 1824.12.22出版 ワルツ変ホ長調D366/17

  8. 1824秋?作曲 1825.01.05出版「12のドイツ舞曲、2のエコセーズ」作品33 D783

  9. 1824年末?作曲 1825.02.07出版「トリオ付きドイツ舞曲」D779/8&D779/9


 ドイチュ番号があちらでもこちらでも「飛びまくり」なことがご確認できるだろう。ドイチュも迷ったのである。


 次に「舞曲自筆譜稿」である。ベーレンライター新シューベルト全集は次の通りの学説である。新シューベルト全集舞曲I(BA5529)掲載順をそのまま書く。

  1. 1819.11.12作曲 Ms.33 「9のドイツ舞曲」変イ長調D365

  2. 1818-1820作曲 Ms.34 「20のレントラー」D145L,D970

  3. 1820.05作曲 Ms.35 「6のエコセーズ」D697

  4. 1820.10-12作曲 Ms.38 「8のレントラー」D145L,D980C

  5. 1820.12-1822.02 Ms.28 「5のレントラー」D366,D974

  6. 1821筆写譜 「2のドイツ舞曲」D365 Ms.33の中の2曲を筆写

  7. 1821.03.08-05.20作曲 Ms.39 「7のドイツ舞曲」D365,D722,D145W

  8. 1820.05?,1821?作曲 Ms.40 「4のドイツ舞曲」D145W,D365

  9. 1821.05?作曲 Ms.41 「2のドイツ舞曲」D145W Ms.40の中の2曲を再度自筆

  10. 1821.06作曲 Ms.42 「6のアツェンブルクドイツ舞曲」D145W,D365

  11. 1821.08作曲 Ms.43 「4のドイツ舞曲」D365,D145W

  12. 1823.01作曲 Ms.44 「12のエコセーズ」D781(D783E を含む)

  13. 1823.02作曲 Ms.45 「17のドイツ舞曲」D779,D146,D783D

  14. 1823?作曲 Ms.46 「9のドイツ舞曲」D779,D973

  15. 1823.05作曲 Ms.47 「12のドイツ舞曲」D790(D783D を含む)

  16. 1823.11-1824.09作曲 Ms.56 「6のドイツ舞曲」D783D,D975,D366,D146

  17. 1824作曲 Ms.50 「4のドイツ舞曲」D146,D769,D783D

  18. 1824.01作曲 Ms.49 「2のドイツ舞曲」D769

  19. 1824.07ツェリス作曲ブラームス筆写譜 Ms.51 「11のドイツ舞曲」D366 ブラウン論文とは違う構成

  20. 作曲年不詳 Ms.52 「4のドイツ舞曲」D783D,D146,D366

  21. 1824.09ツェリス作曲 Ms.53 「3のエコセーズ」D816

  22. 1824.10ツェリス作曲 Ms.54 「6のドイツ舞曲」D820

  23. 1824.11作曲 Ms.55 「2のドイツ舞曲」変ホ長調D366,D783D ブラウン論文とは違う構成


 これだけ存在する!
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シューベルト中期のピアノソロ作品群一覧(No.1666)

2009-07-10 09:35:10 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
シューベルト中期(1819.11-1825.02)はピアノ作品は「創作の主力」では無かった。オペラが最も注力した作品。その影響からか「ロザムンデ D797」「美しき水車小屋の娘 D795」と言う「歌の傑作」もこの時期に産み出されている。ピアノソロ曲は、初期(1814.10.18-1819.10)や後期(1825.03-1828.10)の方が充実している。だが、中期にも名作はあるし、「出版の中核の1つ」でもあり、悪戦苦闘しながらもピアノソロ曲もきちんと作曲している。その全リストをここに掲載する。日本初であるし、世界初かも知れない
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『作品18』はいつ『出版用に作曲』されたのか?(No.1665)

2009-07-09 03:19:48 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
 「自筆譜が残っていない曲全てが新作」とは言い切れないが、自筆譜が残っていない曲の大半は「出版構想」を練ってから手を付けた可能性が高い。Ms.43 が 1821年8月日付、「オリジナル舞曲集」作品9出版が1821年11月29日。作品18出版が1823年2月5日。

作品18は、広く見積もって 1821年12月~1823年1月の構想


と考えられる。この期間に作曲された大作を挙げてみよう。

  1. オペラ「アルフォンソとエストレッラ」D732 1821.09.20-1822.02.27

  2. ミサ曲第5番変イ長調D678 1819.11-1822.09

  3. 交響曲第7番ロ短調「未完成」D759 1822.10.30-

  4. 「さすらい人」幻想曲D760作品15 1822.11


の4作品がある。壮観な顔ぶれである。順番は「作曲完了 または 放棄された時期」で並べた。
 オペラ「アルフォンソとエストレッラ」はシューベルトにとって『最も意気込んで作曲されたオペラ』の1つ。私高本は「シューベルトオペラの最高傑作」と思う。アバドは「フィエラブラス」が最高傑作と明言しているが。
 1820年はシューベルトにとって画期的な年の1つとなった。

  1. オペラ「双子の兄弟」D647 1820.06.14上演

  2. オペラ「魔法の竪琴」D644 1820.08.19上演


とオペラが舞台に掛かったのである! 『オペラ作曲家として飯を喰って行ける!』とシューベルトが期待に胸を膨らませていたことは、手紙からはっきり読み取れる。そして次に作曲したのが「アルフォンソとエストレッラ」D732 である。友人ショーバーの台本で、ショーバー宅に寝泊まりして「台本ができると即作曲」と言う流れ作業で極めて集中して作曲された。「オリジナル舞曲集」は、「アルフォンソとエストレッラ」作曲以前に完成稿が出来上がっていたと考えるのが妥当であろう。つまり、1821年9月21日以前に「作品9」は完成していたと考えられる。
 すると、1822年2月27日までは「作品18」完成稿には手を付けていないと推測される。


 「未完成」交響曲D759 は、「さすらい人」幻想曲の作曲依頼が来て作曲中止された。1822年10月30日に「未完成」作曲開始、「さすらい人」幻想曲同年11月作曲開始、翌1823年2月24日出版。1822年12月7日のシュパウン宛の手紙では「完成した」と明記されているので、12月6日以前には完成している。この時期(1822.10.30-11)も作品18に手を付けた可能性は極めて低い。


 この間に完成されたのが、ミサ曲第5番D678 であり、1822年9月である。3年かかりの大作と言うのは、シューベルトではこの1曲のみである。ミサ曲に限らず、オペラや交響曲でも他には無い。
 作曲が中断された主な理由は、

  1. オラトリオ「ラザロ」D689 作曲 1820.02

  2. オペラ「双子の兄弟」D647 1820.06.14上演

  3. オペラ「魔法の竪琴」D644 1820.08.19上演

  4. オペラ「サクンターラ」D701 作曲 1820.10

  5. 弦楽四重奏曲第12番ハ短調「断章」D703 作曲 1820.12

  6. 交響曲ニ長調D708A 作曲 作曲年未確定だが1821頃

  7. 交響曲ホ長調D729 作曲 1821.08

  8. 「36のオリジナル舞曲集」作品9 D365 1821.08頃作曲 1821.11.29出版

  9. オペラ「アルフォンソとエストレッラ」D732 作曲 1821.09-1822.02


が原因である。オラトリオ「ラザロ」と、オペラ「サクンターラ」から交響曲ホ長調の4作品の合計5作品は完成されていない。つまり、

「36のオリジナル舞曲集」作品9 と オペラ「アルフォンソとエストレッラ」のみが完成作品


である。理想を求めては行き詰まりを繰り返していた時期であり、シューベルト作風が「大きな作品」になって行く最初の時期に当たる。(名作自体は初期作品にも数多い。)
 先の「1822年12月7日シュパウン宛の手紙」にこのミサ曲の完成についても明記されているので、わずかな箇所が1822年に作曲されたのではなく、多くの曲が1822年に作曲されたと推測される。



  1. 1822.02.28-1822.08
  2. 1822.09後半-1822.10.29
  3. 1822.12-1823.01前半

 このどれかの期間に作曲されたのかは断定はできない。


 別の面から見てみよう。シューベルトが生前出版した舞曲集一覧である。

  1. 作品9 1821.11.29出版

  2. 作品18 1823.02.05出版

  3. 作品33 1825.01.08出版

  4. 作品49 1825.11.21出版

  5. 作品50 1825.11.21出版

  6. 作品67 1826.12.15出版

  7. 作品77 1827.01.22出版

  8. 作品91 1828.01.05出版


 全て「11月下旬~2月前半」に集中している。そう、ウィーンは「冬がダンスシーズン」だからだ!
 1822年8月以前に作曲された可能性は、他の出版舞曲集と比べた時に極めて可能性が低いと考えられる。出版まで期間が空きすぎていて「時期遅れになりかねない」2月に出版されているからだ。
 さらに「作品18」以外の舞曲集は、11月~1月に出版されている。「作品18」だけが「2月」に遅れているのだ。私高本は「ウィーンの冬がどれだけ寒くて、ダンスシーズンがいつまでか?」は正確には知らないが、『冬 = ダンスシーズン』で、新年前後に最も華やかな舞踏会が開催される、とニュースでは見聞きしている。


 「作品9」が 1821年8月~9月構想作曲 → 11月29日出版 なので、2ヶ月程度あれば、出版社は印刷&販売に余裕があるようだ。楽譜が込み入った「さすらい人」幻想曲1822年11月作曲開始1822年12月6日前に作曲完了 → 1823年2月24日出版 なので、曲数は多くとも楽譜制作が楽な舞曲集ならば2ヶ月のスケジュールを立てたいだろう。1822年8月に出版社ディアベリが楽譜を受け取っていたならば、「ダンスシーズン開始前」の11月に出版した可能性が極めて高い。


 10月29日までに楽譜を受け取っていたら、11月には間に合わなかっただろうが、12月末 または 1月初には出版したと推測される。 新年の出版は「作品33」「作品77」「作品91」と3作品もある。全作品「出版用の署名入り自筆譜が存在しない」ので断定はできないのだが。


 とても興味深い資料が D145 には残されている。

1823年に作曲されたとほぼ断定されている エコセーズ第8番 D145/E8 自筆譜第2稿 = 嬰ト短調版


の存在だ。おそらく次の順序になるだろう。

  1. Brown Ms.29 (1818.11 Zselis)嬰ト短調版 2/4 16小節
  2. Brown Ms.48 (1823?) 嬰ト短調版 2/4 16小節
  3. 作品18 ロ短調版 2/4 8小節

「ワルツ」と「レントラー」を作曲終えて(?)、退場行進曲であるエコセーズを選択している際、どうしても取込たかった曲がこの曲のようだ。
 Ms.29 よりも アーティキュレーション が緻密に書かれた Ms.48。出版時には「テンポが倍速くなった ロ短調の8小節版」となった。そこまで改変してまでも出版したかった名作なのだ!


 状況を丁寧に洗い出すと、「作品18」の構想&完成版作曲時期はどうも出版直前ぎりぎりだったようだ。

「さすらい人」幻想曲作品15 D760 作曲完了直後に構想に入り、1823年1月前半に完成した 作品18


がおそらく99%くらいの確率で正しい。忙しかった理由は「未完成交響曲」作曲 → 「さすらい人」幻想曲依頼を受けて作曲である。やきもきしたディアベリは「さすらい人」幻想曲出版前にこの「12のワルツ、17のレントラー、9のエコセーズ」を出版している。彫刻師が「楽」なこともあるが、それ以上に「ダンスシーズンに間に合わせたい」意向があった、と推察される。時期遅れに成りかねない時期だったからだ。


 この「作品18」までをシューベルトは「何も考えずに」ディアベリから出版した。ディアベリに「いいようにふんだくられた」ことを理解したシューベルトは、次の作品(= 作品20の歌曲集)から、『ザウアー=ライデスドルフ社』と契約して出版を開始する。「作品21」出版のわずか2ヶ月後の1823年4月10日に出版されている。楽譜を渡したのは「作品18」出版頃なのだろうか?
 「作品18」は「世間の嫌な駆け引き」を知らない最後の瞬間に作曲された作品である。もう1回振り返ってみよう。

  1. オペラ「アルフォンソとエストレッラ」D732 1821.09.20-1822.02.27

  2. ミサ曲第5番変イ長調D678 1819.11-1822.09

  3. 交響曲第7番ロ短調「未完成」D759 1822.10.30-

  4. 「さすらい人」幻想曲D760作品15 1822.11

  5. 12のワルツ、17のレントラー、9のエコセーズD145作品18 1822.12-1823.01前半

  6. ピアノソナタ第14番イ短調D784 1823.02


と言う豪華なラインナップ! 「作品18」の位置付けはシューベルト自身にとって極めて高く、5年前の名作を1度ならず2度も手を入れて出版に漕ぎ着けたのだ!!
 D番号 が飛んで D678, D145 が入っているのが嫌でも眼に付く。


 この稿の最後に、『シューベルト作品カタログ旧版(1951)』に登場願おう。

    D145 の項目に「以下を参照せよ」と明記


    D299の前


    D679の前


    D697の前


    D729の前


    D769の前



 つまり

D145, D298A, D678A, D697A, D728A, D768A と名付けられて良い作品群 とドイチュ は考えていた


のである。ドイチュ は、「作品の着手時期」でドイチュ番号を決めた。

Ms.9 「12のコーダ付きのフォルテピアノのためのドイツ舞曲 1815年」


が標題である。この舞曲集の「2番トリオ」が D145/W9 である。別の舞曲集に収められた1曲を転用しただけである。ドイチュ は「作品着手時期」をできる限り早い時期でドイチュ番号を定めた。舞曲集が最もわかり難い曲集であり、できる限り多くの時期を「D番号で参照せよ」と明記しておいた。『新シューベルト全集 作品主題カタログ = 新版』は、この記述を大巾に削減してしまい、実際に『新シューベルト全集舞曲集I(BA5529)』を購入して、しかも目次でなく、楽譜全部に目を通さないとわからないようにしてしまった。(個別曲にD番号は振られているだけ!)これでは、使い難い。「次回のシューベルト作品主題カタログ」では、ドイチュの方式に是非戻してほしいモノだ。

「作品18」は D768A と称するのが「構想時期」には最もふさわしい舞曲集である。

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『作品18』はいつ『出版用に作曲』されたのか?(No.1664)

2009-07-08 23:30:24 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
楽譜を読み始めると、書くのを忘れて読みふけってしまうバカな私高本。やっと書くことができる。新シューベルト全集楽譜、主題カタログ新版(ベーレンライター新シューベルト全集)、主題カタログ旧版 を全部読まないと全貌が掴めないのが、「シューベルト舞曲」の特徴の1つ。


 ベーレンライター新シューベルト全集「舞曲I」を開くと、作品18 の舞曲はあちらこちらに散らばっていることがわかる。

目次には D番号 も 作品番号 も掲載されていない


ので、丹念に全頁をめくって読む(本当!)

  1. Brown Ms.9 (1815) 1曲 W9

  2. Brown Ms.37(1815/1816?) 2曲 E2,E3

  3. Brown Ms.29 (1818.11 Zselis) 2曲 E1,E8

  4. Brown Ms.34 (1818 - 1820) 11曲 L1,L2,L3,L5,L10,L11,L15,L16,L17,L14,L13

  5. Brown Ms.38 (1820.10-12) 6曲 L4,L6,L7,L8,L9,L12

  6. Brown Ms.39 (1821.03.08 - 05.20) 1曲 W2

  7. Brown Ms.40 (1821? or 1820.05?) 2曲 W5,W8

  8. Brown Ms.41 (1821.05?) 2曲 (W5),(W8)

  9. Brown Ms.42 (1821.07) 3曲 W1,W3,(W2)

  10. Brown Ms.43 (1821.08) 2曲 (W2)

  11. Brown Ms.48 (1823?) 1曲 (E8)


となっている。作曲年については、新シューベルト全集の 楽譜ならびに「前書き」に書いてある通りである。収録曲数は上記の通りだが、同一曲がいろいろな曲集に含まれているので注意が必要。

作品18 = D145 の自筆譜は、11の塊が残っている


ことになる。
 特徴的なことは以下の通り。

  1. 1816年以前の曲は3曲のみ

  2. レントラー は、1818-1820作曲の Ms.34 に11曲、1820作曲の Ms.38 に6曲で全て自筆譜が存在している

  3. エコセーズ は1818年以前の4曲のみが自筆譜が残っている

  4. ワルツ は1曲の例外を除き、1821年の作曲で、「作品9」出版を計画して未収録になった曲と考えられる

  5. エコセーズ第8番はアーティキュレーションを緻密に施した同じ嬰ト短調稿を1823年に作り直しているが、「作品18」として収録された曲は ロ短調になっている


である。どうも

「12のワルツ」と「17のレントラー」は、シューベルト自身の心の中で「別の曲集」と判断


していたようだ。

  1. 「12のワルツ」 → 「オリジナル舞曲集 作品9」の姉妹作品

  2. 「17のレントラー」 → 「20のレントラー Ms.34」の改良作で、1820年末には作曲完了と推測


となる。このように考えると「第1部」と「第2部」に構成されていることがとても明瞭に見えて来る。
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『作品18』はいつ『出版用に作曲』されたのか?(No.1663)

2009-07-01 23:51:46 | 作曲家・シューベルト(1797-1828
 作品18に限らず、「シューベルト生前に出版した作品番号付き舞曲集 → 自筆譜が完成稿の形で残っていない」ので、作曲時期が断定できない。そんな「シューベルト作品18」を解明するには、ベーレンライター新シューベルト全集舞曲I を開けないとわからない。これは「出版楽譜の形態でない舞曲全て」を収めている。

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