Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

スーパーオペラへ熱い思い

2021-11-13 | 文化一般
(承前)秋に順延された小復活祭が無事に終了した。最終日はコンサート形式ながら合唱団、大管弦楽団、ロシアからの歌手陣などバックヤードを含めるとかなりの関係者がいたので万全ということはありえなかっただろう。

ロビーで声を掛けられたら、仕事の関係者ではなくて、ワイン試飲会で出合った人だった。カールスルーへに住むその夫婦もキリル・ペトレンコが正式に就任してからの初のバーデンバーデンでの指揮と認識していて、以前にはチャイコフスキーの五番を聴いていたらしい。そして、その音楽性に、あまり慣れていない作品「マゼッパ」を取り上げての運動性の高くそして同時に繊細な音楽に感動していた。因みにティーレマンのベートーヴェンは駄目で、クレンツィスには若い人も熱心なのでいいと話していた。だからショーかそうでないかの違いだと示唆しておいた。更に来年の「スペードの女王」はまだ購入していなかったようなので、アスミク・グリゴーリアンの名前を強調しておいた。その作品は劇場倒産後にゲルギーエフ指揮で観たからと話していたので、ヴィデオでもいいものはないよとまたこれも示唆しておいた。

そこで話したように、今回の「助走」で来る復活祭へのある程度の予想が可能になった。二回の公演とまた日曜日のベルリンからの中継でも確認できるだろうが、ペトレンコがミュンヘンでやっていたのと全く同じような制作の作り方がここでも踏襲されていて、予想通り初日と二日目金曜日では、歌手の出来不出来などを超えて、修正並びに完成へと進んでいた。

なによりもこの一連のペトレンコ指揮復活祭音楽祭即ちスーパーオペラを支援するオーナーやパトロン、常連さんの大きな期待と支持が示されたのが大きい。私が知る限りパトロン席でスタンディングオヴェーションがあったのを初めてである。偶々寄付者招待席でバルコン中央の端に座っていたので、その意思はよく伝わった。そのサイドブロックの端にはスタムパ夫妻がドアーボーイの様に陣取っていたが、演奏者やペトレンコなどと同じように手応えがあったのではなかろうか。

個人的には、この劇場が築かれた基礎理念にあるように、如何に聴衆の程度をミュンヘンなどのオペラの殿堂に近づけるかに留意してきたが、半年後に上演されるスーパーオペラに相応しいだけの聴衆の核は揃ってきていると感じだ。まだミュンヘンなどに比較すれば数分の一かもしれないが、徐々に援軍を含めて固まってくると思う。既に外国からの訪問者も戻ってきているようで、海外からの訪問者待ちとなる。

ペトレンコのオペラ指揮は、ベルリナーフィルハーモニカー自身でもどのような成果になるかは分からなかったであろう。つまりどのような劇場空間を表出させるかである。それは会場で体験しないと分からないもので、舞台の上でも練習を繰り返しても分からない。座付き楽団の様に毎晩のように奈落で演奏していれば、それは総稽古でもある程度分かるのかもしれないが、フィルハーモニカーはアバド以来長く本物のオペラ公演からは遠ざかっていた。
#BerlinPhilTour | Mazeppa in Baden-Baden DE


そしてペトレンコのオペラ指揮は、アバドのそれとは大分違う。そのものスーパーであるからだが、今回も水曜日には一幕などでも若干ガタガタしておさまりが悪かったところが、演奏者自体の入り方も含めて、収まるようになって、フィナーレを待つまでもなく劇場空間が広がりだした。コンサート形式でそれを得ることは容易くないと思うのだが、情景やそのドラマに空想の翼が羽ばたき出すのである。まさしく、ペトレンコ指揮のオペラの特徴は、従来の劇場における劇性の空間ではなくて、あくまでも音楽的な空間である。交響楽などと異なるのは同じ形而上の理念を提出するにしてもアプローチが異なるということでしかない。

春に全て仕上げておきながら先週再び総稽古をしてという入念な準備の理由が知れた。評にはベルリンの倍以上の入場料金でリハーサルを払ったのかとかあったが、そんなものでは足りない。熱い篤志家と熱心な幅広い支援の賜物であって、それをどのように実らせるかでしかない。詳細をメモを辿りながら、読み解いていきたい。(続く)



参照:
スーパーオペラへの道程 2021-11-10 | 文化一般
ロマンティックな芸術の意 2021-11-08 | 文化一般

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