Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

女声につける女性指揮者

2020-09-11 | 
承前)2018年新制作の「清教徒」を体験した者ならより分かるだろう。今回コロナ規制での舞台に関してはこれだけ見ていても、オリジナルとの差異はよく分からなかった。しかし冷静に考えると、これだけ男女などでも離れてくっつかない演出は無い事に気が付く。しかし、それが演出にしか思えなかった。新制作時のプログラムも秀逸で、この手のものとして一級の出来だと思う。残念ながらラクロワ―の衣裳の写真は十六ページ程でそれほど多くはないが、少なくともドラマテュルギ―の人が今回YouTubeに出していた内容よりも上質だった。

上の修正演出ではエルヴィラとアルトューロの再会の情景が、その距離感から ― 恐らくそれ以前の距離との繋がりで ―、とても緊張をはらんでいた。その部分「僕の胸においで」はこの作品のハイライトで、そこからフィナーレの黒ロマン落ちへと流れ落ちるところだ。メロドラマ効果となっている。少なくとも今回は墓穴のようなものを挿んでそれを越えて対峙する形がとても効果的だった ― 幸いにもそこの場面はアルテューロを歌ったフランツェスコ・デムーロが練習場面をフェースブックに上げている。

この場面をシュツットガルトの演出で見るとエリヴィラが後半はおもちゃの家に入って仕舞っている。幾つかYouTubeでその場面を見ると面白い。役を間違っているエルサ・トライジークやどうにも下手な指揮とか色々と出てくる。
I puritani - "Vieni fra queste braccia"

Javier Camarena & Elsa Dreisig, 'Vieni fra queste braccia', I puritani (Bellini)

Juan Diego Flórez and Nino Machaidze sing Vieni fra queste braccia

Javier Camarena & Pretty Yende, 'Vieni fra queste braccia', I puritani (Bellini)

Dmitry Korchak, Venera Gimadieva. Vieni fra queste braccia. I Puritani, 10.01.2018

Javier Camarena & Diana Damrau, 'Vieni fra queste braccia', I puritani (Bellini)

I Puritani | Diana Damrau & Javier Camarena "Vieni fra queste braccia" (DVD & Blu-ray excerpt)

VIENI FRA QUESTE BRACCIA, MERRITT & DEVIA, ROMA ' 90

SALVATORE FISICHELLA "Vieni fra queste braccia" I Puritani



因みに当夜歌ったそのデムーロの歌であるが、高音も良く出ていてなるほどこの役で世界を回っているのはよく分かった。その反面、終演にでもそれほど受けていなかったのは、明らかに声のファンダメンタルが弱いからで、下が上手く響いていないと音楽作りの幅が狭まる。それで漸く昨年の復活祭におけるカッシオの歌唱を思い出した。まさにそこが弱く性格付けが薄かったのだ。偶々イヤーゴも代役となっていたのでそれほどの個性は持っておらず、主役のスケルトンも安定を欠いていたので男声陣は弱かった。

この場面が際立っているのも他の場面は絶えず他者の目があるというのが味噌らしい。つまりディアローグがあったとしても公衆の中で行われたり、またはアリアに続いて其の侭群衆の掛け合いに成ったりで、疑問に思っていた書法、つまり群衆にソリスツを意味なく重ねているという場面になる。ドラマを音楽で語らせるという以上に、登場人物をしっかりと社会の中に位置づけるとなる。リヒャルト・ヴァークナーに言わせると、イタリアのアレグロの管弦楽のごった返しの対極にあるのがベルリーニとなる。

上のヴィデオを聞くと分かるように、ブレンダ・レイの歌唱は矢張り練れていて、他の歌手陣のそれと比較してもレパートリーとしてものになっている。また指揮のリニヴもダイナミックスを付けながらも歌手に寄り添って、とても巧妙な指揮をしている。やはり彼女の一番いいところはペトレンコなどと同じスラ―の中で音楽の出来る東欧圏の音楽家のリズム感だろう。この点で完全にバレンボイムの指揮を引き離している。

ここでも男声から女声に代わってリズム取りが変わるとしっかりとそれにつけてきていて、もうこれはペトレンコにも出来ないもので、ミュンヘンでのニナ・シュテムメへの伴奏だけでなく管弦楽の協奏曲で示した音楽である。今まで誰も出来なかったような指揮をしている。

彼女は、ヘラクレスザールでBR交響楽団を振って、暮れにシュトットガルトで「蝶々夫人」、来る年の変わり目から四月まで「魔笛」を、二月にはヴィーンでドニゼッティ、五月にはミュンヘンで再演、そして六月にパリでアスミク・グリゴーリアンの「スペードの女王」を振る。(続く)



参照:
菜食男に負けない 2020-02-08 | 女
楽師さんの練習法 2020-09-03 | 生活

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