Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

オペラはフィルハーモニー?

2022-01-17 | 文化一般
昨年11月のコンサート形式公演「マゼッパ」のベルリンでの収録をハイレゾで初めて流した。生でバーデンバーデンで聴いたものを圧縮音源では偲びないから聴いていなかった。想定はしていたが、昨春にみっちり練習して更に秋にバーデンバーデンで一週間の練習と総練習、二晩の本番、フィルハーモニーの三晩で本番だけでも五回目の演奏だけの内容だ。

先日のベルリンの放送局の評論が「イオランテ」は、殆ど「マゼッパ」程度に迫っていたと話していた真意が分かった。ベルリンの聴衆は平素最初の出来上がりばかりを聴かされていて、これだけ熟れた演奏は聴いていなかったのだ。しかし玄人ならそれを言及するか少なくとも自覚して示唆しなくては玄人ではない。

要するにこのことは何回かここでも言及しているのだが、ベルリンでの定期の幾つかはツアーに出る前の総稽古に近い演奏しかしていない。反対に今後とも復活祭でのオペラ上演演目は最後にフィルハーモニーで演奏会形式で完璧に演奏する。

とても逆説的なのだが、オペラ演奏の完璧なものを「聴き」たければフィルハーモニー、管弦楽ならツアー先という構造が成り立つ。しかし先ごろの「イオランテ」こそは復活祭で今回は偶々歌手が代わるのだが四回目の本番が演奏会形式でなされることになる。勿論やり直して一回でそれ程上手くいくとは限らない。

「マゼッパ」公演に関しては昨春は舞台が作れなかったことから昨秋バーデンバーデンで特別に演奏会形式で行われたのだが、そこでの録音がまだ放送されていない。恐らく復活祭の最後の販促として3月頃に放送されると思う。

よって、ベルリンでのこの録画はもうそれだけで過去の同曲の決定版の録音になってしまう。同時にバーデンバーデンでは不満に思っていたマゼッパ役のスリムスキーの歌唱がここでは明らかにマイクによって欠点が隠されてしまっている。恐らくフィルハーモニーでもあの楽譜を見ながら歌う角度では天井桟敷には声は飛んでいなかったと思う。来る「スペードの女王」でもヘルマンを歌う予定になっているので総稽古にでも出かけて行って注意でもしないといけないと思うぐらいだ。演出家の仕事でもある。トップの実力派とされているがやはり若いので経験が薄いのかもしれない。ペトレンコのアシスタントを務めるコンクールで優勝した男性の仕事でもあろう。

ここでこれまた何回も考えている一体どこでどのように収録しておけば歴史的に残るベストのものが残せるかという話題になる。恐らく「スペードの女王」も音声としてはベルリンでの収録が決定的なものになると思われるが、演出云々によらず復活祭での収録はそれとは異なる熱いものになるという見込みがペトレンコにもあるのだろう。再び復活祭で四回上演するようになるので、編集素材は過不足なく出来るので、ミュンヘンでの総稽古から五回目ぐらいの質は残せるのではなかろうか。歌のことを考えれば後半は不利になるかもしれないが、上手く編集すればいいものを残せるだろう。

「イオランテ」はソニア・ヨンチェヴァ主演の商業ヴィデオが出ているので録らないかもしれない。しかし今回のグリゴーリアンのものが残せたのは幸運だった。ArteやSWRには僕と同じぐらいに真剣に考えて欲しいものだ。
Iolanta: Arioso ー ヨンチェヴァ、ニューヨークメトロポリタン歌劇場での公演から

Iolanta / The Nutcracker | "Atchevo" by Sonya Yoncheva | Palais Garnier 2016 (DVD & Blu-ray excerpt) ― ヨンチェヴァ、パリでの公演から


参照:
輝かしい満天の星 2022-01-14 | マスメディア批評
復活祭に向けての準備 2022-01-12 | 文化一般
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