Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

点火プラグの閃光

2005-09-15 | 歴史・時事
世論調査は指針でしかない。それでも、そこで標される傾向は何かを語る。投票傾向の世論調査は、もしかすると本番の選挙結果よりも社会の様相をクローズアップするかもしれない。

IAAの2005年フランクフルト・モータショーの開催祝辞をしたシュレーダー現首相は、先週辺りからその発言が伝えられていた原油価格について再び触れた。昨今の急騰を投機市場の弊害と捉え、「価格設定を透明にしろ」と国際燃料企業体へ要請する案を訴えた。これは勿論、独自動車産業の後押しとなるので時機を得た発言であり、有権者各々に訴えかける力も強い。恐らく、選挙前の重要な戦略的発言であったろう。週の後半に向けて、税制問題等で最後の花火を打ち上げるように予想される。

特にエネルギー問題に触れて、当面のハイブリッド車対策で日本車に負けるなと呼びかけた事も大きい。実用化で差を空けられた独自動車産業であるが、世界一の輸出大国として自動車産業の更なる振興は重要である。原油価格の設定への政治的介入とエネルギー政策を同時に盛り込んで声明する所が、この最も古い政党の政策ブレーンの優秀さを証明している。

実際のエネルギー政策とこのようなテクノロジーの振興が、環境政策にも矛盾無く結びつくかどうかは疑問である。しかし、自動車首相と言われた本人がモーターショーの会場でスポットライトに輝く美しい新車の運転席に納まるシーンは、自動車好きのドイツ市民にとっては途轍もなく大きな信頼感を与える。例えそれがSクラスメルセデスの新車であろうとも、少なくとも西独市民には一切否定的には映らないのである。

故障の無い日本車の信頼性に対しドイツの機械工学の信頼性が押され気味と言っても、産業界全体での特許数の優越や基幹産業としての自負は持ち続けている。それが、嘗てのように質の良い規律立った職人の作業によってなされるのではなくて、合理的な投資計画や下請け産業の底の厚さによって維持されている事を、労働者は余り考えない。

ここまで書き上げたところで、英国では燃料高騰へのプロテストが始まって、特に運送などの業種では死活問題となるので予定より早くM4の封鎖を行使して、ドーヴァー港を閉鎖したと伝え聞く。幾つかのEU諸国では、戦略貯蓄の放出に続き、燃料代を市民に換金したので、英国でもこれを求めている。一部ではパニック買いが起こり売り切れのスタンドが出て来ていると言う。英国蔵相は、世界的な原油安定供給への政治介入を申し出ているので、上のシュレーダー現首相の毅然とした態度は選挙に追い風になるだろう。
コメント (3)
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