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日本国憲法改正草案-3 ( 提灯と釣鐘 )

2013-01-17 11:43:57 | 徒然の記

 「第三章、国民の権利及び義務」・・第10条から40条まで、中身はともかくとして一番のボリュームを占めている。

 若い頃なら退屈し、居眠りをしそうな量だが、幸いにも退屈な経験を重ねてきたお陰で睡魔には襲われない。

 学生の時、入試の監督員のアルバイトをしたことがある。大学の事務員が説明会で、「生きることは退屈さとの闘いなのです」と、試験監督の心得を語ってくれた。

 何と志の低い人間かと軽蔑したが、受験生には必死の時間でも、バイトの学生には確かに退屈そのものだった。いい加減そうなのに、不思議な真実味を持つこの訓話を、私は折に触れ思い出す。しかし憲法草案を読む作業と、一緒にしてはならない無関係な話だから、思い出すのをやめよう。

 「第十二条 ( 国民の責務 )」・・

 現憲法は、「個人の自由と権利は、公共の福祉のために利用する責任がある」と規定している。

 改正草案では、「自由と権利には、責任と義務が伴う」という言葉を追加し、「公益及び公の秩序に反してはならない」と書き改めてある。

 私を含め戦後の教育で育った人間は、自由と権利を主張する割には、その背後にある責任と義務を忘れる。「今どきの若いもんは」と、年長者に眉をしかめられたのは、大抵こんな時だった。


 安倍氏は自民党の総理で、保守の党首らしく若者の放縦を戒めているが、こうした道徳的文言は憲法に馴染まないという思いが拭えない。

 「公益と公の秩序に反してはならない」という言葉に、私は自民党への警戒心を覚える。「公の秩序」という言葉は、どのようにも解釈され、反対勢力の逮捕投獄を、容易した用語だ。面倒な市民運動を黙らせたいと言う自民党の思いが、「衣の下から出た鎧」だ。

 怠け者の学生だったが、法学部だからこの程度の推理力はある。反対意見や反対運動は不愉快だが、社会に不可欠のものだから、寛容な憲法であって欲しいと願う私だ。

 当然のこととして、「二十一条 ( 表現の自由 )」の2項は、削除してもらいたい。この条文は、政府に不都合な結社や、国民運動の根絶やしを可能にするものだ。安倍氏にその意思がないとしても、年月がたち政権が変われば、どんな勢力が何に利用するか分かったものでない。危惧せずにおれない諸刃の刃だ。

 「二十四条 ( 家族婚姻等に関する基本原則 )」では、家族が社会の基本単位であると、書かれている。敗戦後ずっと個人が強調されてきたが、ここにきてやっと日本国民に、家族の大切さを告げた点を良しとする。

 しかし、「家族は助け合わなければならない」という、おせっかいな言葉は、憲法に書くまでもないことだ。自己主張ばかりし、今にも崩壊しそうな家族があるが、わざわざ書かずとも、新憲法が浸透して行けば、自ずと学校教育が変わり、教師も親も、偏った、一方的な人権教育をしなくなるはずだ。

 ここはひとつ、大きな心で、国民を信じて貰いたい。

 「二十五条の四 ( 犯罪被害者等への配慮 )」は、新設の条文だが諸手を擧げて賛成する。犯罪者の人権が強調されるあまり、被害者の人権が軽視されて来た現在の不公平がこれでなくなる。

 学校のいじめ問題にしても、亡くなった生徒への不公平な扱いが減るだろうし、まともな社会が出来る一助となるはずだ。

 「二十八条  (勤労者の団結等 )」は、2項 ( 新設 ) で公務員の団結権の制限が述べられている。私は妥当と思うけれど、労働組合の側には受け入れられない条文になるような気がする。

 「二十一条の二 ( 国政上の行為に関する説明の義務 )」と、「二十六条の3 ( 教育に関する権利及び義務等 )」は、いずれも新設の条文だが、私にはあまり必要性が分からない。

 残る条文については、妥当でないかと考える。反撃したい人もいるだろうが、そう云う人びとは反対すれば良い。冷淡な言い方だが、かって憲法改正について意見を問われた時、社会党の党首だった土井氏は、「駄目なものは、駄目なんです」と、感情論で突き放した。氏に比べれば、そんな言い方をしない私の方が、ずっと親切だ。

 土井氏は社会党の委員長で、私は年金生活者だから、こっちはまさに「みみずの戯言」だ。世間で受け止められる重みは、提灯と釣り鐘だろう。誤解する人はいないと思うが、提灯が私の言葉で、釣鐘が土井氏の言葉です。世間は、まだそこまで変化していません。

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