ねこ庭の独り言

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『日本史の真髄』 ( 頼山陽の著書、3種類について )

2022-11-06 18:23:31 | 徒然の記

  渡部昇一氏著『日本史の真髄』( 平成2年刊 PHP研究所  ) を読んでいます。今から32年前の本です。背筋を伸ばして静かに読める本を、久しぶりに手にしました。学徒の喜びを教えてくれる書です。巻末にある氏の略歴を紹介します。

 「昭和 5年山形県生まれ。昭和30年、上智大学大学院修士課程終了」「ドイツ、イギリスに留学後、母校で教鞭を取るかたわら、アメリカ各地で講義」「現在上智大学教授、専攻・・英語学」

 「まえがき」の書き出しの部分から、心を惹かれました。

 「頼山陽は戦前・戦中にも人気があり、しかも戦後にも幸に忘れられなかった文人・詩人であり、また史家である。」

 受験用の知識として、頼山陽と『日本外史』の言葉だけはセットで覚えていますが、それ以上は何も知りません。

 「戦前の中学生で頼山陽の名前を知らない者は皆無と言えたが、今の中学生で知っている者は皆無である。」

 心を奪われたのは次の叙述でした。

 「明治の頃は、『日本外史』は全ての書生・学生の読む本ということになっていて、そのためだけの『語彙(ごい)解釈』まで出版されたほどである。幕末から明治にかけて、尊皇思想を普及させるのに最も影響するところがあった本であるから、当然とも言えよう。」

 昭和18年の12月に生まれた私は、敗戦後の教育で育ちましたから、頼山陽と『日本外史』について教えられていません。尊皇思想を忌むべきものとする戦後の教育界ですから、教えられるはずがありません。幕末・明治にかけて、日本史の概要は知っていると思っていましたが勘違いでした。頼山陽の著書が『日本外史』だけでなく、『日本政記』とさらには『日本楽府(がふ)』の3種類があることを、初めて知りました。

 大東亜戦争に敗北した結果だとしても、戦前と戦後の思想的断層は、私たち日本人がかって経験したことのないの大きさと深さです。対立の解決がないままに社会があるため、今も左翼と保守勢力が対立しています。大元の思想が分断されているのですから、政治も教育も文化も芸術もあらゆる分野で対立が生じ、そのまま時が経過しています。核戦争の脅威にさらされている国難の時であるにもかかわらず、日本の国論は一つにまとまりません。

 実は隣の韓国も、知日派と反日派の深刻な対立が国を分断していますが、誇り高い隣国は内実を日本に見せませんので、ほとんどの日本人が知りません。独裁国家になってしまった北朝鮮は、別の問題がありますので省略しますが、おそらく日本と韓国はよく似た国内の思想的分断を抱えている不幸な国だと思います。

 戦後の日本の混乱と対立の原因を掴むことが、もしかすると両国の関係改善につながらないかと、渡辺氏の著書に心が奪われます。歴史を振り返る意味からも、氏の説明を紹介します。

 「伊藤博文は、維新の志士たちが一番影響を受けたのは、頼山陽の『日本政記』の方であったと言っている。」

 ここで氏が頼山陽の著書の3種類について、簡単な説明をしています。

  ・『日本外史』・・講談的な面白さにおいて優れているが、かなり大部な本である。

  ・『日本政記』・・簡潔に日本の歴史が通覧でき、頼山陽の明快な史論を知ることができる。

  ・『日本楽府(がふ)』・・

 『日本楽府』は特に重要なので、氏の説明をそのまま紹介する方が、息子たちの理解を助ける気がします。区切りの良いところでスペースが無くなりましたので、続きは次回といたします。

コメント (2)
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