少し前埼玉県立美術館で「巴里憧憬」というかなりこった展覧会があった。
それに比べればこの展覧会は実にオーソドックス、黒田清輝に始まって、浅井忠、藤島武二、佐伯祐三、藤田嗣治、岡本太郎など現代作家を除けば誰もが知っている画家で構成されている、誰にも親しみやすい展覧会といえようー芸大美術館は「パリへー洋画家たち百年の夢」を観に行く。
黒田がもともとパリへ行ったのは法律を極めるためとは知らなかった、コランとの出会いが彼を美術の道に進ませることになる。
彼が重視したのは裸婦画だ、洋画を日本に根付かせるためには裸婦画への抵抗をなくすことが重要と考えたそうだ。
しかしパリ万博の後はこの人も印象派的タッチになるのが面白い。
黒田がレンブラントの模写をやっていたのも面白い。
藤島武二も面白い、宮中に飾る装飾画を依頼され、「日の出の風景」と決めた配意が、なかなか快心の作品を作れず、70歳にしてようやく内蒙古で理想の日の出に出会ったという。
安井曽太郎は第一次大戦勃発で自分が重要と思う45点の作品だけ持って帰国、しかし親友が残りの作品も保管してくれて後で見たらそれらもなかなかよかったと感じたとか。
藤田嗣治は「私の夢」も出品されている、新潟に所蔵されている作品だ。
藤田の白はカンヴァスの下地塗りを通常の一層ではなく二層にしていたことが最近の研究からわかったとか、メキシコに行ったのは四人目の妻と!とかいろいろ面白い。
こんな感じで肩もこらずにゆっくり観られる展覧会だ、最も現代美術のコーナーは解説も一切なくていささか不親切に感じた。
まさに日本洋画の百年の歴史が詰まってました。okiさんのおっしゃる通り、見やすくて、勉強にもなる、教科書のようでしたね(^^;
ところで今回、私的に、ああ、やっぱりと思ったのは、小磯良平でした。以前、音楽の練習風景をテーマにした絵を観た時、フェルメールの影響を感じたのですが、今回はモロに「レースを編む女」でした(笑)
もちろん古典の模写は誰もが通る道ですけどー。
しかしここは展示構成がいただけない。
地下の展示室に「芸大コレクション」を一室設けたために展覧会の流れがとたんに悪くなるし、現代作家の解説も設けてほしかったです。