日本における最初の建築物を映した写真は「城」だったそうだ。
しかし展示されている熊本城の写真の何とうらさびれて荒れ果てた城の姿であるか!
熊本城は原因不明の火災で焼失したというがいとも簡単に焼け落ちてしまいそうだ!
庭園美術館の「建築の記憶」、建築物を撮った写真で構成されるこの展覧会は写真渡来のころから現代のたとえば「せんだいメディアテーク」やら、2006開館の「青森県立美術館」を撮った写真までを俯瞰できる好企画だ。
さて、城の写真から今度は宮中の写真へと進み、さらに伊東忠太、堀口捨巳という歴史に名前を残す建築家が登場する。
伊東は1901年北京城調査に、小川一眞を伴って出かける。
で、小川が写真を撮影するのだが、小川一眞出版部などあるのには驚く。
分離派建築会を築いた堀口は「写真集」という形で記録を作った嚆矢とあげられる。
ここでハナヤ勘兵衛なる珍しい名前の写真家をきく。
本名は桑田和雄でフォトモンタージュの技法を使ったらしい。
美術館の二階に上がると広島の建造物についてだとかあれこれあって、伊勢神宮と桂離宮がクローズアップされる。
伊勢神宮は社を撮影することを許されたのは戦後になってからだ。
二十年に一度「式年遷宮」が行われるが、写真家渡辺義雄は、新しいほうの建物を撮影するという条件で許可を得て、生涯で三度撮影したという。
桂離宮を取り上げたのは写真家石元泰博だ。
シカゴで身につけたバウハウス的感覚で石元はモダンデザインを離宮の中に求める。
そこのところはカタログの石元自身の筆に詳しい。
最後は冒頭に挙げた「せんだいメディアテーク」などの現代写真だ。
この施設は伊東豊雄によるもので、伊東のオペラシティでの展覧会の記憶も新しい。
で、それを撮影したのは畠山直哉、畠山は‘UNDER CONSTRUCTION‘と題してこの施設が出来上がるまでを膨大なフィルムに収める、その一部は会場でビデオ上映される。
「写真」を主体に観るのもよし、「建築」を主体に観るのもよし、楽しめる展覧会だ。
展示替えがあるので、カタログは三千円と高いが必要だろう。
美術館を出て庭園を散策、春の足音が聞こえるいい一日だった。
この展覧会で「せんだいメディアテーク」の建設過程のビデオが見られるとは!これはぜひ行きたいと思います。
実は仙台でのオフィスがすぐ近くで、建設される様子をつぶさに見てきました。最初は三角錐形に組まれたパイプに驚き、次はガラス張りに驚き...と、なかなか刺激的な過程でした。完成後も市民図書館にお世話になったり、上階には国内の展覧会カタログも置いてあったりと、本当に身近な施設だったので懐かしいです。
okiさん、いつもながら貴重な展覧会情報ありがとうございます!
私も先日行って参りました。
美術館の雰囲気と相まって
とても上品な展覧会となっていました。
さて、東山魁夷展のプレビューの件で
お伝えしたいことございます。
ご面倒でもメールにてご連絡いただければ幸いです。
take アットマーク icnet.ne.jp
Juneさんはそういえば仙台の方でしたね、なじみがおありでしょう。
しかし3/31までに行かなければいけない展覧会が多いことですね/笑。
Takさんわざわざどうも。
ちなみに庭園美術館の新館フロアは他館のチラシがいっぱい置いてあって好きです。
メール明日にでも送らせていただきますね。
>石元はモダンデザインを離宮の中
同感です。鈴木が青森県美を色と光に還元しているのとまた対照的でした。
図録はここの単独開催ですから費用がかさむでしょうし仕方ないめんもありますね。
最後の三名はおっしゃるとおり恣意的な人選ですね。
鈴木理策って、写真美術館で展覧会を開いた人でしょ、ここに出てくるとは思わなかった。
写真美術館つながりで小川一眞の「紫禁城写真展」がもうすぐ始まりますが、ここでその一端に触れたからパスしようかなと。