なぜロシアのエルミタージュ美術館にエミールガレの作品があるのか不思議だった。
要は露仏同盟というものがあり、フランスからロシアに献上されたということだった。
展示は1878.1889のパリ万博のガラス作品から始まる。
ヴェネツィアのもの、イスラム趣味を取り入れたもの、中国にヒントを得たものと世界各地の工芸品に刺激を受けた万博がまざまざとよみがえる!
Bunkamura、ミュージアムの「エミールガレとドーム兄弟」の展覧会だ。
さて次はガレだが「ロレーヌの黄金の書」を乗せるためのテーブルには息をのむ!
これもまたロシア皇帝に贈られたもので「ロレーヌの黄金の書」とはロレーヌの著名なアーティストの紹介の分厚い本でそれをさまざまな花が彩られたテーブルに乗せる趣向だ。
ロレーヌはもともとフランスとドイツの国境に位置していてドイツとの戦争が多かったという、ロシアに助けを求めたのだろう。
花器「トケイソウ」も素晴らしい、トケイソウは十字架のキリストの苦しみをあらわすという。
ガレの作品は「物言うガラス」とも言う、作品にボードレールとかメーテルリンクの詩の一節が書かれていて極めて象徴性を帯びているのだ。
またガレはこうした高級品ばかり作ったわけではない、いわゆる量産品も多く創った。
さて、ドーム兄弟に目を転ずるとガレと通じるものがありつつガレにはない明快さがある、風景を描いた花器など実に良い。
ガレとドームははじめは敵対視していたがナンシー派では行動をともにしたという。
「ガレとドーム兄弟」と展覧会は銘打っているのに展示カタログではドーム兄弟についての解説文がないのは不親切ではある。
最後はラリックで締めくくられる、「バッカスの巫女」など惚れ惚れする美しさだ。
全体的に展示内容の水準が極めて高くこんなものがロシアに眠っていたのかと驚いた。
来年六本木に開館する国立新美術館のチラシをもらう、ポンピドーセンター所蔵の「異邦人たちのパリ」がオープニング展覧会とか、どんな水準になるか期待したい。