そごう美術館でも「モダンデザインの先駆者」としてこの人の展覧会が開かれたということで今回の展示カタログにそごう美術館の学芸員が執筆している、この人の建築への志向は知る人ぞ知るものだったのだろう、東京美術学校で建築を学び卒業制作は「音楽家住宅設計図案」だったという。
でもってステンドグラスの研究にイギリスに留学し、特にモリスに関心を持ったという。
一般には陶芸家として知られる富本憲吉、それをデザインの分野から振り返ろうという展覧会が松下電工汐留ミュージアムで開かれている。
お客さんはほとんどいないのに監視員は豊富にいるという変な展覧会だ。
それはともあれ、富本の出発点は陶芸にあったのではないことは確認しておかねばなるまい。
初期のこの人は南薫造と木版画なんかやっていた、楽焼に出合うのはバーナードリーチと知り合ってからだ。
木版画だけではない、モスク模様刺繍壁掛けとかこの人の関心はいろいろ広い。
柳屋書店というのが大坂にあったそうだ、モダン書店でこの人はそこのデザインの仕事もしたという。
面白いのは結婚して夫婦で絵付けとかやって仲がいいことはいいのだが、娘を学校に通わせず東京からわざわざ人を呼んで教えさせたという、で子どものために机といすを作ったりもする、風変わりでもある。
そのうち娘を東京は成城学園に通わせるということで祖師谷の地に700坪の土地に家を建てたりする、イギリス的住宅で建築家の名にふさわしい。
富本が極めてモダンであったのは電気が一般家庭に通ったのが1927なのに、もう1929には「電気スタンド」を創ることからも明らかだ。
そんなこんなでいろいろ展示される、晩年の彼は故郷奈良の風景をいつくしみ、又「放浪の陶工」などとも自嘲したりするが、羊歯模様やアザミに心奪われ、白磁の壺に花を生けるという彼独特の陶芸作品も充分味わえる展覧会だ。
生誕百二十年ということで関西では大規模な回顧展も開かれている、汐留の展覧会も充分面白い。