ところで、この試合の球審を務めたM・Bridge氏であるが、どうも途中から様子がおかしく感じられた。
右太ももの裏側を何度となく手でもむようなしぐさが見え始めた。
そのうち、瞬間的な動きに反応できず、走るのも右足を引きずるようになった。
審判委員室の中にいた審判部長とはじめとする十数人の審判委員からも、様子がおかしいとの声が出はじめた。
試合の終了後にM・Bridge氏から聞く話によると、太もも裏の筋肉のケイレンとのこと。
それにしても、審判委員は常に硬球の鋭いワンプレーに対して反応しなければならないが、どこか故障があると、機敏な反応ができない。
また、この暑さの中いわゆる熱中症は、選手ならずとも審判委員にも当然起こりうる。
したがって、まず一番心配したのは、大会本部の先生たちであり、また裏方のメディカルトレーナー達であった。
審判委員室の中では、同じ経験したことがある審判委員がひしめく中で、どちらかと言うと、このまま最後まで我慢するだろうとの冷たい判断(!?)。
実際、審判を務めている中で、審判委員が治療のため試合を止めて中断することは、試合中の球児に悪く、ほぼ絶対そのままいけるよと強がりを言う。
しかし、体のメンテナンスのプロであるメディカルトレーナーにとっては、そんな精神論ではなく、単に体の変調に速やかに対応すべきとの考えがあり、実は、7回の攻防の途中から、トレーナーはすぐに対処できるよう、スタンバイしているとの連絡が審判委員室に入る。
ここで、M・Bridge氏に確認し、足の状態を球場主任から聞いてみたが、M・Bridge氏は治療を拒否。
そのまま何とか9回裏までやりとげるとの力強い言葉。
M・Bridge氏が何とかこの貧打戦に、それでも力を振り絞って、最後までジャッジしていただいた。
もしかして、わたしとひらひら審判員がプレッシャーになっていたのかと心配するが・・・。
ところで、清水庵原球場に行ったのは、M・Bridge氏が担当する静岡市立商業Vs吉田の試合を見るためではない。
私自身がその後の第3試合浜松南高校対清水東高校の2塁を担当するためだ。
こちらの方は、今年の選手権大会ですでに2度目、1週間ぶりの球場であり、またクルーが我が支部審判長のY木指導員をはじめ、同じ地区で固められていたため、安心してリラックスるしてジャッジできた。
その典型が1回表の浜松南高校の攻撃の時。
ランナー1塁で次の打者が、守備側からすればダブルプレーにはちょうどよいショート前のゴロ。
これをショートが難なくさばき、2塁のピポットマンに送球、1塁走者はフォースアウト、そしてピポットマンがそのまま1塁へ転送かと思ったらここで問題が発生。
1塁ランナーはなんと2塁ベースではなくピポットマンに向かって走塁してきた、しかも少し足を高く上げスライディングしてきた。
したがって、2塁手はこれをよけようとして、バランスを失い、転がってしまって1塁へ送球するどころではなかった。
わたしは、即タイムをかけ、1塁走者に向かってインターフェアのコール、そして1塁に振り向きながら走ってきた打者走者に対してアウトを宣告した。
あまりないケースだが、この日はジャッジに余裕があった分、即座に対処できた。
やはり日ごろ組むクルーとはどこかジャッジに余裕ができ、その分正確になるようだ。
試合は3点差で清水東が優勢のまま終盤にきたが、8回表浜松南も2点を挙げあと1点差による。
そしてなんと9回表に浜松南が1点を加え同点となった。
試合の流れとしては面白い展開だが、このまま延長となると、こちらも体力に自信がない。
前の試合のM・Bridge氏ほどではないが、やはり足の筋肉にハリが出てきて、この頃長引く太ももの筋肉が心なしか痛み出していた。
しかし、この熱戦の中にいれば、足の痛みなど忘れるほどの集中力の高まり。
9回の裏もランナーがいながらもあと1打でない清水東。ツーアウトとなりこのまま延長かと思われたが、最後の打者は第1球目を迷わず振りぬき、レフトセンター間の鋭い打球となり2塁走者がそのままホームインしてゲームセットとなった。
帰りの東名は、何もなかったように静岡県内全線順調に流れていて、40分で家に着いた。
終わりよければすべてよし。
気ぜわしい一日であったが、無事終了。
ひらひら審判員もこの日は、満面の笑みでご子息の勝利を喜んだことだろう。
つづく・・・。