錦帯橋を渡り、武家屋敷のあった白壁の通りを進むと吉香公園に入る。その一隅に「田中穂積」の胸像がある。
その脇には「美しき天然」と題が書かれた五線譜の石碑が置いてある。前を人が通りかかると曲が流れてくる。
♪ 空にさえずる鳥の声 峰より落つる滝の音
大波小波とうとうと 響き絶えせぬ海の音
聞けや人々面白き 此の天然の音楽を
調べ自在に弾き給う 神の御手の尊しや ♪
田中穂積は岩国市横山の出身で、明治33年海軍軍楽隊長の時にこれを作曲したと記してある。
私が幼い頃、この歌を母が良く口ずさんでいたから知っていた。その頃は「天然の美」と呼んでいた。
古めかしい歌詞を聞いて、この世にはない風景のような気がしていた。何か少し物悲しい歌だと思っていた。
当時、錦帯橋の河原にはよくサーカス団が来ていた。「木下」とか「矢野」というサーカス団だったことを思い出す。
フィナーレを飾る空中ブランコの時に、必ずこの「天然の美」の曲が天幕の小屋に物悲しく流れ、美女が空を舞うのを見ていた。
サーカスは、子供心に少し陰のある哀愁を帯びたショーのように感じていた。隣接して、「へび女」とか「ろくろ首」などの見世物小屋があったせいかもしれない。
いまもこの曲を聞くと、手を握り締め身体を固くして見ていた、サーカス小屋の中の幼い私がフォーカスされて浮かび出てくる。ふと我に返り、毎日を綱渡りしているような自分に気がつく。
(写真は、吉香公園の「田中穂積」胸像)
その脇には「美しき天然」と題が書かれた五線譜の石碑が置いてある。前を人が通りかかると曲が流れてくる。
♪ 空にさえずる鳥の声 峰より落つる滝の音
大波小波とうとうと 響き絶えせぬ海の音
聞けや人々面白き 此の天然の音楽を
調べ自在に弾き給う 神の御手の尊しや ♪
田中穂積は岩国市横山の出身で、明治33年海軍軍楽隊長の時にこれを作曲したと記してある。
私が幼い頃、この歌を母が良く口ずさんでいたから知っていた。その頃は「天然の美」と呼んでいた。
古めかしい歌詞を聞いて、この世にはない風景のような気がしていた。何か少し物悲しい歌だと思っていた。
当時、錦帯橋の河原にはよくサーカス団が来ていた。「木下」とか「矢野」というサーカス団だったことを思い出す。
フィナーレを飾る空中ブランコの時に、必ずこの「天然の美」の曲が天幕の小屋に物悲しく流れ、美女が空を舞うのを見ていた。
サーカスは、子供心に少し陰のある哀愁を帯びたショーのように感じていた。隣接して、「へび女」とか「ろくろ首」などの見世物小屋があったせいかもしれない。
いまもこの曲を聞くと、手を握り締め身体を固くして見ていた、サーカス小屋の中の幼い私がフォーカスされて浮かび出てくる。ふと我に返り、毎日を綱渡りしているような自分に気がつく。
(写真は、吉香公園の「田中穂積」胸像)