写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

甘い考え

2005年05月10日 | 生活・ニュース
 我が家の裏にある団地に、あるご婦人が住んでいる。年の功70数歳。日中はひとりのため、散歩に出かける回数が多い。

 私でも妻でも、誰と出会っても必ずエプロンのポケットから黒砂糖入りの飴玉を1個出してくれる。

 たいした世間話があるわけでもなく、「今日は暑い・寒い・雨が降りそう」などの短い会話のあと、最後の一言は間違いなく「ほいじゃあ、気をつけんさいよ」と言って、すたこら去っていく。

 先日のことだった。このご婦人の姿をしばらく見ないなと思っていたところ、左足を少しかばったような歩き方をしているのが見えた。

 「どうしました?」「家の前の坂で転げてしもうて、足首にひびが入って」とのこと。

 人に出会うたびに「気をつけんさいよ」と、あれだけ声をかけていた人が、こともあろうに本人が・・・と可哀そうでもあり、おかしくもあり。

 今度会った時からは、こちらから「奥さん、気をつけんさいよ」と、先手を打って言わなくてはいけない破目になった。

 そんなことよりもあのご婦人早く良くなって、ポケットに入れた飴玉を桃太郎のように、♪ひとつ・私に・下さいな♪

 庭仕事をしていても何か口さみしくて、通りに眼をやるが誰もいなく、糖分のやや欠乏した連休明けを過ごしている。これって、甘い考えか?
   (写真は、団地の「ずっこけ坂」)