写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

一網打尽

2015年10月05日 | 生活・ニュース

 秋晴れの日曜日の午後、久しぶりに錦帯橋へ出かけてみた。行楽の秋というだけあって、河原には観光バスが並んでいる。橋を渡っている人も多い中、欄干から身を乗り出して川を覗きこんでいる人もいる。川面を見ると、アユを獲ろうとしている男が2人腰のあたりまで水に浸かり立っていた。

 1人は長い竿を立て、川底をさらうように竿をゆっくりと振り回している。もう1人は青色の投網を肩に担いで、しきりに水面をにらんでいる。アユの姿は水面を透して見えるのだろうか。投網を投げる瞬間を撮ろうと思い、川土手からデジカメの望遠を利かしてしばらく構えていたが、一向に投げる気配がない。

 その姿勢のまま5、6分が経ち、デジカメの画面から目を離したちょうどその時、間が悪く投網が投げられた。「しまった。シャッターチャンスだったのに」と油断していたことを悔いながらも漁獲が気になった。

 男は投網を担いで河原に上がってきたが、1匹も入っていないのだろう、網の中を確かめる気配はない。10月ともなれば落ちアユの季節だが、まだその数は少ないのかもしれない。一網打尽とは行かなかったようである。

 一網打尽といえば、今日(10月5日)からはがきが送られてくる「マイナンバー」。国民一人一人に12桁の番号が付けられて、いろいろと管理されるのに利用されるとのこと。国民の全員が一網打尽となり、これを悪用しての新手の犯罪も起きそうである。マイナンバーを付けられることで一網打尽ならぬ、一毛でも駄賃がもらえるようなら大歓迎したいものだが、はてさてどんなことになるのか。