写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

四季咲き

2015年11月02日 | 季節・自然・植物

 久しぶりに裏庭に出てみると、晩秋の今、バラが咲いている。「こんな時季にバラが咲いているね」というと、奥さんはすかさず「あら、知らないの。四季咲きのバラだから、春夏秋に咲くのよ」と、当たり前のような顔をしている。

 私のなけなしの植物の知識では、花は咲く時期は四季それぞれであるが、年に一度だけしか咲かないものと思いこんでいた。それなのに、今咲いているバラは四季それぞれに花を咲かせるとはちょっとした驚きであると共に、小さな発見でもあった。

 早速調べてみると、バラには主に一季咲きといって春にだけ咲くもの、一季咲きではあるが夏から秋の間に時季は不規則であるがもう一度咲くもの、四季咲きといって冬以外通年定期的に咲くもの、四季咲きに近いが春の開花後も不定期に何度か繰り返し咲くものがあるという。

 
一季咲きのバラは開花期が短いイメージがあるが、年に一度、咲くパワーを集中させるため、見事で美しい花を咲かせる。四季咲きは四季とはいいながら冬には咲かない。花がもっとも美しいのは秋で、年中だらだら咲かせるよりも、春と秋に限定して咲かせ、夏の花は蕾から落としてしまうほうが秋の花を何倍も楽しめるようである。

 こんな知識を頭に入れて再び庭に出て「四季咲きのバラ」をじっくりと眺めてみた。名前は知らないが赤、白、ピンクや薄紫色をした花が華やかに咲き乱れるという程ではないが、美しく咲いている。ハナミズキやヒメシャラの葉が紅葉まっただ中のこんな時季に花を付けるとは、四季咲きのバラは家主があまり関心を示さない中、頑張っているではないか。

 年に一度しか咲かない草花や樹木が多い中、何度も花を咲かせる。華やかさに似合わず健気というよりは頑張り屋さん、根性のある花だ。それに引きかえ私の人生はどうだっただろうか。四季と言わず一度でも大きく花開いたことがあったかなかったか。四季咲きのバラを眺めながら、遠い昔のことに思いを馳せてみた。