写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

肥後守定駒

2007年03月21日 | 生活・ニュース
 妻が「今日のお昼は自分でお願いします」と言って出かけていった。昼前に西岩国のスーパーに買出しに出かけた。

 店の前の広場に大きなテントが張られ、何かを売り出している。立ち寄ってみると、包丁を初め、ナイフ・はさみ・草削り等のありとあらゆる刃物が並べてあった。

ガラスケースの中に、懐かしいものを見つけた。「登録商標 肥後守(ひごのかみ)定駒」と書いた紙箱に入っている小刀である。

 小中学校の頃、筆箱の中にはいつもこれを入れていた。鉛筆を削ることはもちろん、机も削ったし、家に帰ってからは、竹を削って杉鉄砲を作ったりもした。

 調べてみると、肥後守とは肥後国の国司のことで、今では折り畳み式小刀を指す。刃渡り8cmほど。その起源は肥後(熊本県)にあるともないとも言われるが、はっきりしない。

 現在「肥後守」は兵庫県三木市の、今ではたった1人の鍛冶職人により商標登録されており、同地の特産になっているという。

 大小色々なサイズのものを売っている。幼い頃を思い出し、刃渡り8cm・1300円のものを1本買うことにした。

 「2割引で、1000円でいいよ」と言いながら、店主が店頭に置いてある研磨機のほうへ持っていった。

 「ちょっと待って、研磨するから」と回転砥石にかけ、更に、たらいに置いた四角い砥石で仕上げたあと、渡してくれた。

 そのままでも切れ味鋭そうなのに、客に渡す前にもう一度研いでくれるとは、さすが刃物専門屋さんである。

 聞いてみると広島から年に2回この場所に来ているという。見ると店の前には「包丁研磨500円」と書いてあり、私がいる間に2人の主婦が包丁を持ってきていた。

 露天で包丁磨きとは、これまた懐かしい風景だ。肥後守を持ち帰り、早速鉛筆を削ってみた。

 今まで使っていたカッターナイフとは一味違い、力を入れなくてもスット削れる。少年の頃の感触を思い出しながら削ってみた。

 でもやっぱり切れ味の鋭さといえば、肥後守よりはうちのかみさんだ。いつも私は切り込まれてばかりいる。 
  (写真は、店頭で研磨中の「肥後守」)

2 コメント

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多分、私も・・・。 (好々婆)
2007-03-22 23:39:13
夫に切り込み続けて40年・・現役時代は無反応だったのに、この頃は、ボソリボソリとなにやら返ってきます。
人間が出来てるなアと、少し尊敬すらしていたのに、それが崩れつつある定年10年目です。
もう、切れ味は必要としない年になったのですね。
丸く丸くと言いきかせつつ・・・・・。

小刀を筆箱にしのばせたロードスターさんの少年時代、目に浮かんで来ます。
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好々娘さん (ロードスター)
2007-03-23 09:25:12
私も錆付いた小刀で抵抗していますが、所詮かなう敵ではありません。「……は強し」を日々感じていますよ。
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