写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

「生クリームの中の蛙」

2021年02月15日 | 生活・ニュース

 生クリームの瓶に落ちてしまった蛙が2匹いた。2匹とも浮いていることが難しく沈み始める。手足をばたつかせても浮き上がることが出来ない。1匹は「こんなことをしてもどうせだめだ」と諦めて沈んでいった。

 もう1匹は「いくら死が迫っていても最後まで生きるんだ」と足をばたつかせている。しかし、1cmも上がれず同じ場所で何度も足を動かし続けていた。

 すると、さんざん足を動かしたために突然生クリームが固まってバターになり、蛙は驚いて足をけると瓶の縁に飛び移ることが出来て助かった。

 以上は、ブエノスアイレスの精神科医で作家のホルヘ・ブカイ氏の「寓話セラピー」という作品中の「生クリームの中の蛙」という寓話である。この話には「どうやってもダメ」と思って努力を放棄する傾向がある時のヒントが隠されている。今いる環境の中で「自分が出来る限りのことをする」というところだと、この寓話を紹介しているエッセイスト・海原純子さんは書いている。

 努力する前からすでに諦めるのではなく、努力をしてもだめなら諦める。変に大人の対応で諦めるのではなく、泥臭くやっていると思いがけないことが起きることもある。こんな前向きな精神が大分衰えてきた今を、この寓話を読みながら反省する。

 「努力しても達成できないことは多い。しかし、達成できた人はみんな努力してきた」「宝くじを買っても殆ど当たらない。しかし、当たった人は宝くじを買った人である」。何ごとも挑戦してみないと分からないという、誰もが分かっているお話である。