写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

絆社会

2011年05月27日 | 生活・ニュース

 昨年末、2期6年間の民生委員の役を終えた。150世帯の担当地区には、30世帯もの高齢者の独り暮らしがあった。孤独死に2度も遭遇した。民生委員の立場で何とかできなかっただろうかと思ったが、所詮広域・大世帯が相手では、民生委員ひとりの力では簡単に対応は出来なかった。

 ただ一つ、「赤電話」というシステムを民間会社が運営しているものを利用するよう勧めて歩いた。市も利用料の支援をしている。万一、独居老人が非常事態に陥った場合、ベルを押しさえすれば救急車が来てくれるか、または指定しておいた見守り人が来てくれるというものである。

 今夕、テレビを見ていたら、広島県三次市のある自治会が、興味あるシステムを試験的に実施中であることを報じていた。孤独死が5件もあった町だという。独り暮らしの高齢者が、ケーブルテレビと契約をすると、一定時間テレビのスイッチを入れない時間があると、事前に指定した人が駆けつけてくるようにしてある。指定した人とは、身内だけでなく指名された近所の見守り隊のメンバーであったりもする。

 さらに、日々の状況は、遠隔地にいる子や親戚にも報せてくれるという。こんなシステムが広がれば、地域の絆の細さや、人間関係の希薄さをただ嘆くばかりでなく、実効の上がる見守りが大いに期待できる。今の時代、社会構造や人の気持ちを急に昔のように温かみのあるものに変えることは難しい。人の情けや温情も、個人情報の保護とやらで余計なおせっかいだと嫌う人さえいる。

 ここは、やや機械的で冷たい感じはするが、三次市のようなシステムを取り入れることを、あながち否定はできない。それを補完する形で、地域住民や民生委員が時に見守りに歩いたりというような形がいいのではと、今は昔の元民生委員はテレビに向かって小さくつぶやいている。

 「孤独死で何が悪い?」というお方、亡くなる立場の人はそれでいいでしょうが、何かと大変なことが残っていそうです。それでも最後まで孤独を愛したいという人は、う~ん、仕方ないですねぇ。