写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

三角形の2辺の和

2018年04月17日 | 生活・ニュース

 我が家の周囲を巡っている下水管の所々には合計10個もの枡が設けてある。5、6年前に枡の点検をしたことはあるが、それ以来開けてみるようなことはないまま今日に至っていた。

 借家の下水管が詰まっていたこともあり、特に問題が起きているわけではないが、念のため枡を、この際点検をしてみることにした。家の設計図と見比べながらひとつずつ蓋を開けて溜まっている汚泥をすくい上げていく。

 いつの間にか周辺の土が盛り上がって、蓋が見えなくなっているものもあったが、何とか掘り出してすべての点検を終えた。土砂が流れ込んでいるものや、枡の隙間から木の細い根が入り込み、管の中で成長しているものも見つかり、点検した甲斐があった。

 仕事の最後に、枡の周辺の地中を走っている植木の太い根っこを切り除くために、枝切りノコで切断していると、急に一筋の水が噴き出し始めた。「ややっ、しまった。水道の塩ビパイプを切ってしまったぞ」と、すぐに気がつき、元栓を閉めに走った。

 私が、洗車用にガレージまで細い水道管を地中浅く引いていたものに気がつかず、傷つけてしまった。仕事の最後の最後でこの始末である。補修するパイプや中間継ぎ手は納屋にある。さてどうして直せばいいかを考えた。地中に浅いところで、しかも外径が13mmと細い塩ビパイプである。

 傷つけたところを5cmばかり切り取り、塩ビパイプを持ち上げて両端に接着剤を塗って中間継ぎ手に差し込み、元の一直線の状態に戻せば補修は完了である。この手法は太いパイプでは持ち上げることができないので適用できないが、細いからできるやり方である。中学生の時に習った「三角形の2辺の和は、他の1辺より長い」という定理が、この年になってやっと実生活で役に立った。