写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

邸宅美術館

2009年06月24日 | エッセイ・本・映画・音楽・絵画
 6月11日から14日まで、シンフォニア岩国で「岩国絵画クラブ」が主催する第38回「岩国絵画クラブ展」が開催された。

 幼馴染の同級生2人がこの会に入っており、活躍していることは知っていた。「機会があればお出かけください」と書いた案内状をもらっていた。

 奥さんと二人でこれを見に出かけてみた。小さなものから、人の背丈ほどのものまでいろいろな大きさの力作がたくさん飾られている。

 絵画旅行というのだろうか、尾道まで出かけ、各人が好みの画題を見つけて書いているものもある。

 どの作品を見ても我が家の部屋に飾っておきたくなるようなものばかり。どのくらいの時間をかけて描いたのだろう。油絵具はどのくらいの費用がかかるのだろう。そんなことばかりを思いながら時間をかけて見て回った。

 数日後、この展示会に出品していた同級生のS婦人が庭のバラを見に立ち寄ってくれた。「『5月の昼下がり』というあの絵は、水面が本当に静かに波打って見えたよ」と言うと、「ほめてもらうと嬉しいわ」と謙虚である。

 「あんな絵を部屋に飾って眺めてみたい」と言うや「飾ってください」と嬉しい返事。2日後にはその絵を届けてくれた。

 絵と言ってもただの絵ではない。S婦人が描いた絵は、過去に東京・上野の森美術館で展示されたり表彰されたりしている。

 そんな人が描いた絵を我が家で飾るなんて、思ってもみないことにびっくりするやら嬉しいやら。絵の大きさは20号。73cmの正方形のものである。

 10畳の居間の壁に掛けてみた。うん、ちょうどいい。部屋の格が上がリ、安普請の我が家がたちまち邸宅美術館になった。

 部屋に本物の絵があると、いいことはよく分かった。将来のお宝候補のこの絵を毎日1度は眺め「買えば高いのだろうな」と、ひとり値踏みしている6月の昼下がりである。
  (写真は、S婦人が描いた油絵「5月の昼下がり」)