写真エッセイ&工房「木馬」

日々の身近な出来事や想いを短いエッセイにのせて、 瀬戸内の岩国から…… 
  茅野 友

親子別居

2009年06月08日 | 季節・自然・植物
 ヤマガラのヒナが孵って2週間が経った。毎日親がせっせと虫をくわえてきて6羽の養育に余念はない。

 巣箱からわずか2mくらい離れた椅子に座っていても、恐れることなく巣箱に入っていく。私の顔は危害を加えるような顔でないと信用されているのかもしれない。

 夕方、親の居ぬ間を狙って巣箱の中の写真を撮らせてもらった。数日前はまだ幼い赤ちゃんヒナに見えた羽は、もう生えそろっていて幼稚園児くらいに見える。

 この分なら、あと1週間もすれば飛び立つのではないかと思わせるほどだ。真っ黒いつぶらな目をして私をじっと見る。声は出さない。動きもせずうずくまっている。

 頭と羽は黒く顔は白、腹は赤く、すでに親と同じ色になっている。上半身にはまだやわらかい産毛が残っている。3枚写真を撮っただけで開けていた屋根を急いで閉じた。

 辺りが薄暗くなってきて、それまで飛び交っていたツバメもスズメも姿を消したが、ヤマガラの親は巣箱に帰ってこない。

 どうやらこの巣箱はヒナ専用の子供部屋のようである。親は山にある本来の巣にいるのだろう。

 それにしてもヤマガラ夫婦の働きぶりには頭が下がる。1時間に4回は餌をくわえて巣箱にやってきて、折り返しまた高さ30mもあろう山に向かって飛び立っていく。

 1日で14時間はそれを繰り返す。とすると、1日に4*30*14=1,680mの高さの山に飛んで行っていることになる。

 小鳥がヒナを一人前にするために、これほどの献身的な働きである。自分自身の子育てを思うと、ヤマガラに比べかなり見劣りがする。

 あともう一息だ。6羽全部が大きく羽ばたいていくのは間違いなさそうだ。巣箱を提供したからには、ヤマガラの恩返しを私は今から期待しているが、さて……。。 
  (写真は孵化後2週間が経った「ヤマガラのヒナ」)