みどりの野原

野原の便り

2月18日 草地生態系の保全

2012年02月18日 | Weblog
シンポジウムの受付を手伝ったおかげで講演・報告等を聞けた。

カヤネズミから見た草地の生態系の講演。
その後、3人の方から報告 ①淀川のヨシ原の復元・②石川における自然回復造成後の昆虫相の推移・③チュウヒが生息する草原の保全。
最後はパネルディスカッションが行われた。

カヤネズミは「生活のすべてを草地に依存している草地性の動物」だそうだ。
ススキの群落の中で巣を見たことはあるが実物は見たことがない。
人間の親指サイズの大きさ。500円玉1枚分の重さだそうだ。
生まれたての子供は1g爪ほどだとか。
大きさを実感するために実物大の作り物のカヤネズミが回ってきた。

カヤネズミは四季を通じて変化する草地の多様な環境をうまく利用して暮らしている。その生息地保全・植生保護の研究・活動を話された。
生息地の堤防の草刈りを、区画に分け、春と秋堤防上に常に植生が残るように2~3週間間隔で草を刈り、その営巣状況と植生の変化を調査されたところ成果があり、淀川河川事務所ではカヤネズミの生息に配慮した草刈りマニュアルが配布されたとのこと。

①かつての淀川は舟運のために水制によって水路を狭め、勾配を緩くするために蛇行させたため、わんど・たまりなど止水域が存在。また出水時には氾濫原となる多様な地形があった。
その多様な地形が多様な生物をはぐくんでいた。
今は水路は広く深く直線になり、河川敷も水に浸かることもなくなった。

鵜殿では乾燥化・クズや蔓草の繁茂などで衰退したヨシ復元のための水路導入や切り下げなどの試みがなされている。
淀川・宇治川・木津川・桂川などで、洪水疎通力や草本植生群落の復元のため高木化・樹林化した樹木の伐採も行われているとのこと。


ヨシでつくられた箸 ヨシ利用の試み

②石川でも中流域で両岸はほとんどコンクリートの直線的な水路となり、河川敷には都市公園やグランドが造られ本来の河原の植生の多くが失われ、それに伴い、昆虫や小動物が生息場所を奪われ減少している。
一部河川敷の自然復元改修工事が実施され、推移の調査では昆虫相の回復も期待できることがわかったとか。

③鳥にとっても餌となる昆虫や生き物の住みかである湿原・草原の保全は大切だ。
チュウヒは実際にはイヌワシやクマタカより生息数は少なく、日本全体で60つがいしかいないという。それが種の保存に関する法律の中には載っていないのだそうだ。

多様な生態系を取り戻すため、各地で活動されている報告を聞き、後、活発な討論がなされた。

温暖・湿潤な気候の日本では放牧・野焼き・刈り祓いなど人の手が入らないと草地は維持されず森になってしまう。

土を削るほどにしかも頻繁に草刈りがされる「刈りすぎ」が気になる。
「草を刈る」これだけでもいつ刈るか・全部刈るか区画を決めて刈るか・どの程度刈るか。
知恵を絞れば昆虫たちにもひいては動物や鳥にも・人間にもやさしい環境が作れるのではと思った。
「木を切る」時にも同じようによく考えて切ることが大事なのではないか。

草を刈る・木を切る時、まずは「どのような環境にしたいか」を考えて行動することが大事だ。
椅子が不足するほどの参加者の熱気が感じられた。
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