かつて日活児童映画というものがありました。たぶん1970年代から80年代にかけて小学生だった人たちは、この企画の映画をどこかで1本くらいは見ている可能性が低くないと思います(どのくらいのパーセンテージの小学生が見ていたかなんて見当もつかないので、このようなあいまいな記述になることをお許しください)。
この企画は、1972年から93年まで続けられました。ちょうど日活がロマンポルノ路線に移った時期で、それと平行してこの企画があったわけで、あるいは「われわれはロマンポルノだけじゃないんだぜ」という日活なりの表明という意味合いもあったのかもしれません。
wikipediaによると
>小学校の体育館などで、授業の一環として巡回上映されたり、母親グループが自主上映することが多かった。(なお、母親グループによる自主上映は、レンタルビデオの普及により、衰退していった。)
(中略)
当初は「日活児童映画室」が名義であったが、1978年に日活の経営立て直しのため「日活児童映画株式会社」に分社化された。
だそうで、学校の授業の一環やPTAというか、そういったところの会合で親子ともども鑑賞するという形態もとられたようですね。
内容は、オリジナルもありますが、児童文学を原作にしたものが多く、つまりは学校生活でのさまざまな子どもたちのふれあいや教師たちとの関係など、まさに子どもたちの日常を淡々と描いた映画・・・ということになるのでしょうか。
で、いまの時代、こういう映画ありませんよねえ。
テレビのドラマだって、小学生が主人公(あるいは小学校を舞台)のものなんて激減したし(70年代は、「熱中時代」なんてドラマがものすごい視聴率をだしたり、あるいは「あばれはっちゃく」シリーズが長く放送されたりと、小学校を舞台、あるいは小学生を主人公とする内容の物語が流行していた時代だったのでしょう)、映画にいたっては、私は日本映画の現状にそんなに詳しいわけではないけど、このようなドラマはたぶん制作されていても自治体などの依頼によるものがほとんどで、なかなかそれらは劇映画として公開されるのは難しいんじゃないんですかね。
wikipediaによると、次のような作品が製作されたとのことです。
>作品一覧 [編集]※配給のみのものも含む。
1972年 「大地の冬のなかまたち」- 監督:樋口弘美(原作:後藤竜二)
1974年 「ともだち」- 監督:澤田幸弘(映画デビュー間もない頃の松田優作や正式デビュー前の原田美枝子が出演)
1975年 「アフリカの鳥」- 監督:磯見忠彦(子役時代の戸川京子が出演)
1976年 「新どぶ川学級」 - 監督:岡本孝二、原作:須永茂夫(主演:森次晃嗣 友情出演:吉永小百合)
1976年 「四年三組のはた」 - 監督:藤井克彦、原作:宮川ひろ(主演:柿崎澄子)
1977年 「先生のつうしんぼ」- 監督:武田一成、原作:宮川ひろ(主演:渡辺篤史。初代「あばれはっちゃく」第5話に出演した葺本光秀が登場)
1978年 「走れトマト-にっぽん横断300キロ」- 監督:岡本孝二
1980年 「お母さんのつうしんぼ」 - 監督:武田一成、原作:宮川ひろ(主演:二宮さよ子)
1981年 「青葉学園物語」 - 監督:大澤豊、原作:吉本直志郎(主演:市毛良枝)
1983年 「ボクのおやじとぼく」 - 監督:中原俊、原作:吉田とし(主演:夏木勲)
1985年 「まってました転校生!」- 監督:藤井克彦、原作:布勢博一(予告編に、4代目「あばれはっちゃく」を引退したばかりの、坂詰貴之が登場)
1986年 「やがて…春」 - 監督:中山節夫
1987年 「おじさんは原始人だった」 - 監督:斎藤貞郎、原作:大原興三郎
1987年 「街は虹いろ子ども色」 - 原作・監督:大澤豊
1990年 「夏のページ」 - 監督:及川善弘、原作:みなみらんぼう(音楽も担当)
1991年 「うしろの正面だあれ」 - 監督:有原誠治、原作:海老名香葉子(アニメーション作品)
1993年 「河童の三平」 - 監督:平田敏夫、原作:水木しげる(アニメーション作品)
93年が最後の作品なのは、直接的な理由としては、93年に日活が倒産してこの部門が打ち切られたということですが(wikipdiaの「日活」の記事には、
>1993年(平成5年) - 7月1日 株式会社にっかつのほか、100%子会社の株式会社にっかつ撮影所、にっかつビデオ株式会社、にっかつ中央興業株式会社、にっかつ芸能株式会社、株式会社函館にっかつゴルフクラブ、株式会社にっかつ映像コミュニケーションズの七社が東京地方裁判所民事第八部に会社更生法の適用を申請し倒産。7月6日に保全管理命令が下り、保全管理人に三宅省三弁護士が選任される。9月30日に更生手続開始決定がなされ、三宅省三弁護士が法律家管財人、ナムコの中村雅哉会長兼社長が事業管財人となり、再建活動に入る。後ににっかつ児童映画は破産申立をおこない、清算する。函館ケーブルテレビ放送株式会社の経営から撤退する
とあります)、現実的な理由として、たぶん時代がもはやこのようなジャンルの映画を求めていなかったということではないかと考えられます。最後の2本がアニメーションなのも、たぶん実写での映画製作が難しくなっていたことを反映しているのではないでしょうか。とくに調べたわけでもないので違うといわれればそれまでですが、そんなにひどい見当違いでもないでしょう。
でも…時代が違うというレベルの話になるし、いまこのような映画が製作されて私が鑑賞するかというと、どうもあんまり見ないような気がしますが(自分で言っていれば世話はないですが)、でもこういったジャンルの映画がほぼ消滅した(と断言しちゃいます)のは、ノスタルジックな話ですけどやはり残念ですね。
いまの時代、なかなか子どもたちもこのような映画を見て日々の生活を見つめなおすとか親や教師も子どもたちへの態度をちょっと自省するなんてこともあんまりできない相談でしょうし、まさに時代が要求している映画ではないということですが、あるいは機会があれば見てみて「昔は、こんな映画があったんだなあ」と勉強してみるのも悪いことではありません・・・。
しかし、これらの映画って、DVDとかで発売されていないんですよね。
ビデオなども不完全にしか発売されていないし、しかもその価格はべらぼうだったりします。好きな人は、このような映画は本当に好きだから、大喜びで購入しますから(映画ファンでない人には、いまひとつピンと来ない話かもしれませんが、映画のソフトとかを買うのが好きな人間(たとえば私)にとっては、本当にこういうものは他人からすれば「馬鹿か」というような値段で買います)高い値段になっちゃうわけです。
CSの日本映画専門チャンネルあたりで放送されることもありますが、しかしそれもめったに放送されるようなことはないし、知ったのは事後だったりします。実は私もそうです。
ほかにも上映会などで公開されることもあります。しかし、これらはなかなか事前に情報を入手するのは困難でしょう。私もいまのところ仕入れることができませんでした。
が、過日、1本の映画のVHSビデオを大枚をはたいて入手しました。その記事を後日書きます。
この企画は、1972年から93年まで続けられました。ちょうど日活がロマンポルノ路線に移った時期で、それと平行してこの企画があったわけで、あるいは「われわれはロマンポルノだけじゃないんだぜ」という日活なりの表明という意味合いもあったのかもしれません。
wikipediaによると
>小学校の体育館などで、授業の一環として巡回上映されたり、母親グループが自主上映することが多かった。(なお、母親グループによる自主上映は、レンタルビデオの普及により、衰退していった。)
(中略)
当初は「日活児童映画室」が名義であったが、1978年に日活の経営立て直しのため「日活児童映画株式会社」に分社化された。
だそうで、学校の授業の一環やPTAというか、そういったところの会合で親子ともども鑑賞するという形態もとられたようですね。
内容は、オリジナルもありますが、児童文学を原作にしたものが多く、つまりは学校生活でのさまざまな子どもたちのふれあいや教師たちとの関係など、まさに子どもたちの日常を淡々と描いた映画・・・ということになるのでしょうか。
で、いまの時代、こういう映画ありませんよねえ。
テレビのドラマだって、小学生が主人公(あるいは小学校を舞台)のものなんて激減したし(70年代は、「熱中時代」なんてドラマがものすごい視聴率をだしたり、あるいは「あばれはっちゃく」シリーズが長く放送されたりと、小学校を舞台、あるいは小学生を主人公とする内容の物語が流行していた時代だったのでしょう)、映画にいたっては、私は日本映画の現状にそんなに詳しいわけではないけど、このようなドラマはたぶん制作されていても自治体などの依頼によるものがほとんどで、なかなかそれらは劇映画として公開されるのは難しいんじゃないんですかね。
wikipediaによると、次のような作品が製作されたとのことです。
>作品一覧 [編集]※配給のみのものも含む。
1972年 「大地の冬のなかまたち」- 監督:樋口弘美(原作:後藤竜二)
1974年 「ともだち」- 監督:澤田幸弘(映画デビュー間もない頃の松田優作や正式デビュー前の原田美枝子が出演)
1975年 「アフリカの鳥」- 監督:磯見忠彦(子役時代の戸川京子が出演)
1976年 「新どぶ川学級」 - 監督:岡本孝二、原作:須永茂夫(主演:森次晃嗣 友情出演:吉永小百合)
1976年 「四年三組のはた」 - 監督:藤井克彦、原作:宮川ひろ(主演:柿崎澄子)
1977年 「先生のつうしんぼ」- 監督:武田一成、原作:宮川ひろ(主演:渡辺篤史。初代「あばれはっちゃく」第5話に出演した葺本光秀が登場)
1978年 「走れトマト-にっぽん横断300キロ」- 監督:岡本孝二
1980年 「お母さんのつうしんぼ」 - 監督:武田一成、原作:宮川ひろ(主演:二宮さよ子)
1981年 「青葉学園物語」 - 監督:大澤豊、原作:吉本直志郎(主演:市毛良枝)
1983年 「ボクのおやじとぼく」 - 監督:中原俊、原作:吉田とし(主演:夏木勲)
1985年 「まってました転校生!」- 監督:藤井克彦、原作:布勢博一(予告編に、4代目「あばれはっちゃく」を引退したばかりの、坂詰貴之が登場)
1986年 「やがて…春」 - 監督:中山節夫
1987年 「おじさんは原始人だった」 - 監督:斎藤貞郎、原作:大原興三郎
1987年 「街は虹いろ子ども色」 - 原作・監督:大澤豊
1990年 「夏のページ」 - 監督:及川善弘、原作:みなみらんぼう(音楽も担当)
1991年 「うしろの正面だあれ」 - 監督:有原誠治、原作:海老名香葉子(アニメーション作品)
1993年 「河童の三平」 - 監督:平田敏夫、原作:水木しげる(アニメーション作品)
93年が最後の作品なのは、直接的な理由としては、93年に日活が倒産してこの部門が打ち切られたということですが(wikipdiaの「日活」の記事には、
>1993年(平成5年) - 7月1日 株式会社にっかつのほか、100%子会社の株式会社にっかつ撮影所、にっかつビデオ株式会社、にっかつ中央興業株式会社、にっかつ芸能株式会社、株式会社函館にっかつゴルフクラブ、株式会社にっかつ映像コミュニケーションズの七社が東京地方裁判所民事第八部に会社更生法の適用を申請し倒産。7月6日に保全管理命令が下り、保全管理人に三宅省三弁護士が選任される。9月30日に更生手続開始決定がなされ、三宅省三弁護士が法律家管財人、ナムコの中村雅哉会長兼社長が事業管財人となり、再建活動に入る。後ににっかつ児童映画は破産申立をおこない、清算する。函館ケーブルテレビ放送株式会社の経営から撤退する
とあります)、現実的な理由として、たぶん時代がもはやこのようなジャンルの映画を求めていなかったということではないかと考えられます。最後の2本がアニメーションなのも、たぶん実写での映画製作が難しくなっていたことを反映しているのではないでしょうか。とくに調べたわけでもないので違うといわれればそれまでですが、そんなにひどい見当違いでもないでしょう。
でも…時代が違うというレベルの話になるし、いまこのような映画が製作されて私が鑑賞するかというと、どうもあんまり見ないような気がしますが(自分で言っていれば世話はないですが)、でもこういったジャンルの映画がほぼ消滅した(と断言しちゃいます)のは、ノスタルジックな話ですけどやはり残念ですね。
いまの時代、なかなか子どもたちもこのような映画を見て日々の生活を見つめなおすとか親や教師も子どもたちへの態度をちょっと自省するなんてこともあんまりできない相談でしょうし、まさに時代が要求している映画ではないということですが、あるいは機会があれば見てみて「昔は、こんな映画があったんだなあ」と勉強してみるのも悪いことではありません・・・。
しかし、これらの映画って、DVDとかで発売されていないんですよね。
ビデオなども不完全にしか発売されていないし、しかもその価格はべらぼうだったりします。好きな人は、このような映画は本当に好きだから、大喜びで購入しますから(映画ファンでない人には、いまひとつピンと来ない話かもしれませんが、映画のソフトとかを買うのが好きな人間(たとえば私)にとっては、本当にこういうものは他人からすれば「馬鹿か」というような値段で買います)高い値段になっちゃうわけです。
CSの日本映画専門チャンネルあたりで放送されることもありますが、しかしそれもめったに放送されるようなことはないし、知ったのは事後だったりします。実は私もそうです。
ほかにも上映会などで公開されることもあります。しかし、これらはなかなか事前に情報を入手するのは困難でしょう。私もいまのところ仕入れることができませんでした。
が、過日、1本の映画のVHSビデオを大枚をはたいて入手しました。その記事を後日書きます。
>サザエさん
長谷川町子という人は、そっちの方面はかなりうるさいですからね。自分の会社を「姉妹社」としていたくらいですから。死んだ時も、たしか朝日新聞社とフジテレビから同時にしばらく後で公表したはず。
関係ない話ですが、いまにして思えばよく朝日新聞がちがう系列のフジテレビに権利を渡したものです。後ほどうるさくなかったんでしょうね。
>人権関係の啓蒙映画で意外な人が出演してる場合があります。
そういうのはありますね、たしかに。
なるほどね、そういう気概はあったでしょうね。それは大変よかったと思います。
>出演者見ると結構有名人が出てますね。
ええ、児童映画には趣旨に賛同して出演した人もいたようですね。吉永小百合すら出ていたくらいですから。
図書館に置いてあるかもしれないので、収蔵リストの確認も面白いかもしれません。
>図書館に置いてあるかもしれないので、収蔵リストの確認も面白いかもしれません。
日活児童映画の場合、趣旨からして公共図書館には置いてありそうですね。いろいろ確認してみたいと思います。ご意見ありがとうございます。
ちょうど、このコメント欄に書き込もうとしていたときに一時閉鎖されたことを思い出しました。
昨年ですが、こういう催し物があったりもするようです↓http://grissomgang.web.fc2.com/nikkatsu-jidou.htm
>昨年ですが、こういう催し物があったりもするようです
はい、私もネット検索してこれを知り、うひゃー、見たかったと悔しく思いました。なかなかね、こういう催しも前もって情報を知るのも難しいですしね。可能ならソフト化してほしいというのが正直なところです。