拝島正子のブログ

をとこもすなるぶろぐといふものを、をんなもしてみむとてするなり

歌が日経平均と連動した件

2024-08-07 09:20:11 | 音楽

駅の階段を昇ってたら「電車がきます」という電光案内が見えた。じゃ、これから来るんだな、ゆっくり昇ればいいや、と思ってホームに上がると既に電車が来ていた。

案内に偽りあり、である。「きます」(wird kommen)ではなく「きています」(ist gekommen)である。

車内でも疑問が炸裂。路線案内を見ると、新御茶ノ水から乃木坂までが一直線に並んでいる。

だが、直線はおかしい。日比谷から霞が関にかけて、ほぼ直角に右にカーブしているはずである。まあ、しかし、こんなことをメトロに言ったらこれぞ「カスハラ」にほかならない。それに、私自身、この路線にこれまで何百回と乗っているが、そのカーブを意識したことはない。最近ブラタモリの影響で地上をブラブラしてるから思い出したのである。地上を走っていれば気がついたろうが。よし、この際である。そのカーブを意識して体験しよう、と思い、日比谷を過ぎたあたりで席を立ち、乗車扉の窓から目を凝らしてみる。まっくらである。しかし、急に減速し、キキキッという音がして若干の遠心力を感じた。これだ!初めて、この路線のカーブを体験した瞬間であった。

そうやって向かった先は、「クラシックの家」(和訳)のセッション(申し遅れましたが、この回の筆者は私、横野好夫です)。3か月後のリート会のためにも貴重な機会である。で、最初に歌ったのが「美しい水車屋の娘」の第1曲。この曲は、この曲集の中で、私的には一番暗譜に近づいている。暗譜を試してみようか。だが、いまいち自信がない。そこで、アンチョコの意味で歌詞カードを譜面台に置いた。するとアンチョコで気もそぞろ、かえって歌詞がデタラメになった。おかげで気分は一昨日の日経平均(=大暴落)。この日、暗譜で見事な歌を聴かせたN美男は「歌ってる最中は邪念が湧くもの。2か月前までに暗譜が完了しているくらいでないと、そうした邪念を払うことはできない」と言っていた。うーん、N美男といい、M美女といい、若者はいいことを言う。「老いたるは子に従え」とはよく言ったもの。よし、今月いっぱい暗譜につとめて完璧に覚えられたら本番は暗譜で歌おう。じゃなきゃ、観念して譜面を置こう。とりあえず、今日は暗譜は止め。そう開き直って歌った同歌曲集の第7曲は自分的には及第点の出来。気分は昨日の日経平均(=大高騰)。

因みに、この第7曲は「いらだち」という日本語タイトルが付いているが、「いらだち」と言うとなにか怒ってる感じ。だが、原題は「Ungeduld」。彼女に思いを伝えたくて伝えたくて「辛抱たまらん」というニュアンスである。だから「焦燥」の方がいいと思う。因みの因み、「Ungeduld」から「Un」をとった「Geduld」(辛抱)は、バッハのカンタータの歌詞の常連。神様がいずれは助けてくれるんだからそれまで「辛抱」しなさい、ということである。そんな「Geduld」に「Un」(否定の前綴り)がつくところが、ロマン派の詩らしいところである(ロマン派の詩人は、宗教と一線を画した)。

この日、私が最後に歌ったのは「水車屋」から離れ、同じシューベルトの「万霊節の連禱」。来週がお盆だからちょうどいいと思って。だが、カトリックの万霊節と日本のお盆は死者を想う点は同じだが異なる点がある。まず、日本のお盆は祖先の霊を祀るが、万霊節はすべての死者の霊を慰める。そして、日本のお盆は夏だが(暦の上では立秋過ぎ)万霊節は11月である。乱高下したこの日の気分は、最後にこの歌を歌って静まったのであった。まったくもってこの数日の日経平均と連動したある歌い手(私)の気分であった。



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