暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

「曉雪の朝茶事」(立礼)・・・(2)

2023年08月06日 | 「立礼の茶事」(2023年~自会記録)

     (外は真夏の太陽がジリジリと・・・最高気温が35℃とか)

つづき)

懐石は伏傘です。

6月の「颯々の茶事」から2回続けて伏傘ですが、夏の朝茶事にはもうピッタリ!とすぐに決めました。

伏傘は、梅雨時や夏の暑い時期に懐石をできるだけ簡素にして、一番の眼目である濃茶へスムースに導く・・・と言う目的の他にも、亭主の負担軽減策でもあります。

朝茶事では懐石前に初炭があるので、最初の御膳(向付、お粥、汁)の準備が出来ず、AYさんに全てお任せしました。お陰であわてずに炭手前やお客さまとのお話ができて助かりましたし、給仕は半東Y氏にお願いしました。

車のお客さまが多いのでアルコールは無しとし、半東Y氏がワイングラスにノンアルコールのワインを素敵なマナーで注いでくれたことでしょう。

暁庵は煮物椀と預け鉢を担当しましたが、暑さと焦りもあって台所で朦朧となり、一時は内心どうなることかしら?状態でしたが、AYさんとY氏が一生懸命手伝ってくださって何とか切り抜けました。 

それでも、優しいお客さま方は美味しく賞味してくださったようで安堵しました。ふう~っ (余裕がなかったので懐石の写真はありません・・・

 

   (水指は蜜柑(昭阿弥造)、橘楽庵さまのお越しを記念して選びました)

 

伏傘の献立

飯   粥    梅干 ちりめん山椒

汁   トウモロコシ麩 じゅんさい  辛子 ・・・2回分を鍋で出す

向付  鯵 胡瓜 大葉 茗荷 胡麻

 

椀物(冷) 卵豆腐 海老 茗荷 オクラ  摺り生姜

預鉢(冷) トマトマリネ オクラ ベビーコーン カラーピーマン 切り干し大根

      白和えペースト添え 

飯器  白飯

(箸洗 ・・・省略)

(八寸 ・・・省略)

湯桶   

香の物  沢庵  胡瓜糠漬け  柴漬け

ワイン(ノンアルコール) 

 

      (主菓子の銘「橘楽」、諸江屋製)

懐石の後に待合へ動座して頂き、主菓子をお出ししました。

お正客Yさまは橘楽庵という庵名をお持ちです。それで冷えたオレンジゼリー(金沢の諸江屋製)をお出しし、菓子銘を「橘楽(きつらく)」としました。氷に少し色を着けたり、雪ダルマの氷を作ったり、真夏の茶事を少しでも涼しく、楽しく・・・と。

そのまま中立となり、暑いので待合でゆっくりして頂き、銅鑼は打たずに再び迎え付けに参りました。つづく)

 

   「曉雪の朝茶事」(立礼)・・・(3)へつづく  (1)へ

    朝茶事の準備中です

 


「曉雪の朝茶事」(立礼)・・・(1)

2023年08月03日 | 「立礼の茶事」(2023年~自会記録)

 

つづき)

7月30日(日)に小堀遠州流のYさま、Sさま、Fさまをお迎えして「曉雪の朝茶事」(立礼)をしました。

朝茶事なので6時席入がベストですが、東京からのお客さまがいらしたので8時の席入になりました。

 

待合に「合掌童子」の短冊を掛けました。京都の暁天講座早朝座禅会の凛とした清々しい気持ちを忘れないように、合掌する気持を忘れないように・・・

煙草盆はガラス長方皿、火入はガラスのイルカです。

イルカは、12年前に大好きな映画「グランブルー」(リュック・ベンソン監督)をイメージして行った「水無月の茶事」の時に入手したもので、書斎(・・とは名ばかりの茶道具物置)で前日に見つけました。まるで、明日の朝茶事に使ってください・・・と言わんばかりに現われたのです。

火入の灰形は水屋AYさんにお願いしましたが、とても上手に作ってくださって日頃の修練がしのばれて嬉しかったです

詰Fさまが板木を3つ(客の人数分)打ち、それを合図に半東Y氏が梅ジュースをお出しし御案内しました。既に陽は高く、ベランダの腰掛待合はちょうど日陰がない時間帯です。少しでも暑さを凌いでいただけるよう蹲や露地にたっぷりと水を撒いてお迎えしました。

「お召し上がりになりましたら、外は暑いのでこちらでお待ちください。亭主が参りましたら、蹲を使って席入をお願いいたします」と半東Y氏。

 

    (「暁雪満群山」、坐忘斎お家元の御筆)    

床の御軸は「暁雪満群山」、御筆は坐忘斎お家元です。

「暁」は、「明時」あかときの転じた言葉で、夜半から夜の明ける頃までを言うそうです。

暁の陽光が一筋、雪山の頂へ射し、徐々に群れなしている山々を明るく染め上げていく・・・そんな雄大な景色が目の前に浮かんで来ます。

夏の朝茶事、少しでも涼しさを感じて頂ければ・・・と。

・・・そして嬉しいことに、いつもこの御軸を掛けると坐忘斎お家元の「お茶を頑張ってください!」というエールが聞こえて来る気がするのです。

お客さまと親しくご挨拶を交わし、初炭になりました。

 

        (初座の点前座です)

眉風炉に桐文真形釜(高橋敬典造)を掛け、点茶盤なので今回は玄々斎好みの松唐草炭斗にしました。

小堀遠州流のお客さまでしたので、途中で炭の置き方を見たいご様子でしたが、「朝茶事なので後ほど風炉中を拝見して頂き、その時にいろいろご説明させて頂きますね」

釜を上げ、下火を直し、炭を置き、月形を切り、香を焚き、香合を拝見に出してから、風炉中を拝見して頂きました。

私も何度か小堀遠州流の炭手前を拝見させて頂きましたが、炭手前が一番流派の違いが鮮明なように思います。3人のお客さまは興奮気味に感想やら、質問をしてくださいました。

それで、じっくりと風炉中を見てもらいながら、灰形(二文字押切でした)や炭の種類や大きさ、置き方の違い、撒かれた白い藤灰や月形の陰陽の意味などをお話ししました。

 

       (玄々斎好みの松唐草炭斗)

いつもは何も考えずに当たり前にやっている炭手前ですが、他流のお客さまだと驚きや感動、鋭い質問があり、こちらも新鮮でとても勉強になります。

香合は「掛絡( くわら )香合」(岡本陽斎作)、香は沈香(松栄堂)を焚きました。

裏千家4代仙叟のお好みで、「掛絡( くわら )」とは袈裟についている丸い象牙の輪のことで、それから意匠されたものです。黒の真塗、表蓋に桔梗、裏蓋に藤の花の金蒔絵があります。

小堀遠州流のお客さまは流儀の仕方で袱紗をたたんで、その上に香合を置いて丁寧に見てくださり、とても嬉しく思いました。

さて、初炭の後は懐石です。早朝なので懐石の方は頼めず3人でがんばりました(汗)・・・(つづく)

 

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