暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

茶事のサウンド・スケープ (1)  板木

2009年10月02日 | 茶事のサウンド・スケープ
茶事では言葉ではなく、音で合図する、音で判断する、音を味わう・・・
音にいつも耳を澄ませ、客と亭主は心を添わせています。
  
板木(ばんぎ)の音が好きです。
板木には、欅、桑、楠木などが硬く締まって、
音の良いことから使われています。

お客さまが待合または腰掛待合に集まると、
お詰が板木を打って
「お客さまがお揃いです」と亭主方へ知らせます。

茶事スタートの瞬間です。
水屋で板木の音を聞くと、いつも身が引き締まる思いがします。

禅寺では雲水が托鉢から帰ると、板木または木魚を
叩いてから手を合わせ、入室します。
それに習って・・とお聞きしました。
また、寺院によっては時刻や集会の合図にも使うそうです。

板木の打ち方は指導の先生によって違うようで、
今まで三通りの打ち方をお聞きしています。
きっと流派によっても違いがあるのでしょうね。
私は裏千家流です。

(1) お客さまの人数分を打つ。
 六人以上大勢では五までとし、あとは省略してもよい。
 お客さまの人数は予めわかっているので、揃ったことを
 水屋に伝わればよい・・・とのことでした。

(2) お客さまの人数分を打つ。
 人数が多い時は五または三まで打って、
 後は省略の打ち方(早く続けて・・・早や打ち)をする。

(3) 「これから板木を打ちます」と、水屋へ知らせるため、
  最初に早や打ちをし、それから人数分を打つ。

お習いした茶事の会では客が10名近いので、
(1)または(2)の打ち方です。
私の茶事ではお客さまが3名から6名さまなので
(1)がほとんどでしたが、
横浜開港を祝う茶事で(3)の打ち方を始めて聞きました。

板木を打つ間合いは、ほんの少しゆっくりめでしょうか。
そういえば、早すぎると師匠がよく言ってましたっけ。
「半鐘じゃないんだから、同じ速度で間合いをとって・・・
 打ち方で心のあり様がわかる」と。

雲水が軽く手を合わせる間(ウン)をとって、呼吸を整えてしっかりと・・。

「今日のお客さまはどんな打ち方かしら?」
毎回、板木の音を聞くのがとても楽しみなのです。

     待合の囲炉裏の火相いかならむ
         板木の音に身を引き締めて

              (長屋門公園正午の茶事 2008年2月)
        (2)へ
                             
         
       写真は、ある茶席の入り口にあった「板木」です。

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