暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

おようのあま絵巻  サントリー美術館

2011年04月25日 | 美術館・博物館
4月23日(土)はあいにくの天気でしたが、
「夢に挑むコレクションの軌跡」開催中のサントリー美術館へ出掛けました。
「おようのあま絵巻」(二巻 室町時代 十六世紀)が4月20日から
展示されていたからです。

「おようのあま絵巻」は、茶道大辞典(淡交社)を広げていた時に偶然知り、
ユーモラスな絵と物語に惹かれ、いつか本物に出会いたいと思っていたのです。

「おようのあま絵巻」にしばしお付き合いください。

御用(およう)の尼は、内裏や貴族・大名の館の女房たちの御用を聞き、
薬や香、扇などの小間物や古着を売り歩く老尼でした。
ある日、北白川の草庵の前を通りかかると、中から念仏の声がします。
いつしか念仏に誘われるように草庵へ入っていくおようの尼。

売り物の入った大きな袋を傍らに置き、
「あら苦しや」と、草庵の縁側で休ませてもらいます。
墨染の衣を着て心穏やかに念仏を唱えていた老僧は事情を聞き
「茶を飲み静かに休み給え」と声をかけます。

挿入された絵には老僧の部屋の押し入れに茶道具が見えます。
曲物の水指に柄杓、風炉釜、朱の足付盆に茶碗か茶入、
それらが長板に載せられています。

老僧は茶を点て尼に振舞ったのです。
茶は当時薬としても飲まれていたのでした。
老僧にやさしく介抱してもらい、茶を振舞われ、
おようの尼はどんなにか嬉しかったことでしょう。
お礼の気持ちを込めて、身の回りの世話をする若い嫁を
紹介すると言ってしまいます。

               

数日後の夜、草庵を訪ねたのは、おようの尼その人でした。
若い女性を装って帷子を深く被った尼に老僧は気づかず
嫁が来たと有頂天になって盃を進めます。
尼は恥ずかしげに二献飲み、
僧も一献飲んで
「茶湯のもとへ立ち寄り大は(葉)を二三服点て飲み」しました。

絵(写真2)には、前と同様な茶道具が別室に置かれています。
夫婦のかための盃ごとをし、おもてなしの心を託して茶を点てたのでしょう。
こうして一夜を共にし、夜が明けて老僧はすべてを悟ります。

                

でも、この物語に強く惹かれたのはここからの展開でした。
若い嫁の話に心を奪われた老僧は御伽草子となって
世間の笑いものになったかもしれませんが、
その後二人は念仏を唱えて心やすらかに暮らしましたとさ。

時は室町時代、応仁の大乱前の京都です。
まさに暗黒の中世(混沌の時代)に暮らすおようの尼と老僧。
念仏(仏教)によって救われる、ほのぼのとした展開に
この絵巻を読んだり見たりした人々はさぞやホッとしたことでしょう。

北白川あたりの草庵で夫婦二人で念仏と茶三昧・・・私のあこがれです。

                         

「夢に挑むコレクションの軌跡」
    サントリー美術館にて 3月26日-5月22日(日)開催
    http://www.suntory.co.jp/sma/index.html



2 コメント

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御伽草子 (暁庵)
2011-04-25 23:34:09
サントリー美術館会場の解説がどう書かれていたか?
全然覚えていませんが、いろいろな解説や私見を加味して書いた一文です。
老僧が若い女と思い込んだのは無理もありません。
きっとおようの尼は懸命に若い嫁を演じたことでしょうし、
前もって灯りを暗くして待つように老僧に指示していたのですから。
・・・とても味のある結末だと思いませんか?

鼠と人間の姫君が結婚するという鼠草子絵巻にも興味を持ちました。
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Unknown (楽居庵)
2011-04-25 21:34:22
暁庵さんのブログを読み、翌日サントリー美術館に午後遅く行ったため、Artist's Action for
JAPANは店じまいでした。

その「おようのあま絵巻」も含めて御伽草子が楽しくて閉館に、
老尼と老僧の出会いの結果が暁庵さんのブログでよくわかりました。

確かサントリーの解説では、老僧が若い女の色恋に迷った…ということだったので…

Artist's Action for JAPANは、29日
資生堂へまいります。
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