暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

長月・名水の茶事・・・(2)

2022年09月26日 | 社中の茶事(2018年~)

 

つづき)

小堀遠州流のお客さまに炭手前についてどのようなお話をしたらよいか、迷いましたが、次の3つに絞りました。

〇 灰形・・・9種類の灰形と鱗灰を真行草に分け、裏千家では真は鱗灰のみ、行は二文字押切、丸灰押切、遠山灰など7種。草は二文字掻上灰、丸灰掻上、藁灰の3種です(茶道大辞典より)。その日の灰形は二文字押切、一番よく使う灰形でした。

〇 炭・・・炭は風炉なので、風炉中に胴炭、丸ギッチョ、割りギッチョ、丸管、白い枝炭、点炭が入っています。炭の大きさや種類、継ぎ方が小堀遠州流とは全く違うので、実際の風炉中を拝見して流儀による違いを見て欲しいです。

〇 「月形に切る」・・・灰器を持ちだし、中掃きの後に灰匙で風炉灰正面の前側の灰を軽く掬い取ることを「月形に切る」と言います。「月形に切る」のは陰陽思想から来ていて、燃え盛る火(陽)に対して月(陰)を切り、陰陽のバランスを保ちます。また、藤灰を炉中に撒きますが、これは雪の景色を表わしていて、風炉を使う暑い時期の涼しさの演出だけではなく、雪は溶けて水(陰)になるので、これも火(陽)に対しての陰ということになります。

 

(写真が無いので、某先輩の素晴らしい風炉中を参考に掲載しました。

 初炭前の写真で、灰形は二文字押切、下火の丸ギッチョ3本が入っています)

 

亭主M氏が炭を置き、月形を切って、香を焚き、香合を拝見に出しました。それから釜を風炉近くへ引いてから

「どうぞお正客様から順番に風炉中をご覧ください」

風炉は面取唐銅で一ノ瀬宗和造。釜は糸目桐文車軸釜、釜師・長野新氏に特注し、桃山時代の伊予地方で造られたお気に入りの古釜(写し)を造ってもらいました。

香合は「桐絵埋もれ木香合」(道場宗廣作)です。亭主M氏の先の転勤先であった仙台市、市内を流れる名取川(広瀬川)産の埋もれ木で作られています。漆黒の埋もれ木は手に取るとずっしりと重く、川に沈む流木古材が数百年数千年を経て埋没樹木となった歳月を感じます。

香は沈香(松栄堂)です。

     名取川(広瀬川)の埋もれ木

初炭が終わり、再び茶道口から待合のテーブル席へ動座して頂き、そちらで懐石と菓子をお出ししました。

懐石は佐藤愛真さんです。亭主M氏から注文された食材(今までの転勤先に因むもの)を巧みに取り入れてくださって、きっとお客さまも堪能したことでしょう。私たち3人も水屋で相伴し、舌鼓を打ちました。暁庵は湯葉真蒸の煮物椀、かますの幽庵焼、八寸の仙台麩に感激一入!でしたが、いかがでしたでしょうか?

今回も急なしめ縄づくりで忙しく・・・写真がありませんが、懐石献立を記します。

お献立 

  向付   鯵の昆布〆め  緑おろし 花穂 山葵 加減酢

  飯    一文字

  汁    菊白玉団子  仙台味噌仕立  辛子

  煮物椀  湯葉真蒸  車海老  つる菜  青柚子

    焼物   かますの幽庵焼

  強肴   車海老  帆立  胡瓜  黄身酢和え

  箸洗   岩梨  梅酢仕立

  八寸   焼き唐墨  仙台麩(無花果 田楽味噌)

  香物   仙台茄子の浅漬  生姜の守口漬  瓢箪

  湯斗

  酒   「生酒」 晴雲酒造(埼玉県比企郡小川町)(名水「日本水」由来の酒を亭主が用意)

 

 

初秋の薫りと彩りに満ちた主菓子は銘「よそおい」。亭主M氏が最初に裏千家茶道の手ほどきを受けた思い出の地、名古屋市にある菓子舗「美濃忠」製です。 (つづく) 

 

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