暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

2021年「口切の茶事」を終えて・・・(2)

2021年12月01日 | 社中の茶事(2018年~)

 

つづき)

暁庵の口切では最初に茶壷を拝見します。「その方がこれから行われる口切への期待がいや増すと思うの・・・」という恩師N先生に教えられた仕方を守っています。

床から茶壷が点前座(道具畳)へ運ばれ網袋が外されると、「お壺、口覆共に拝見を・・・」と正客から声が掛かり、茶壷を鑑賞して頂きます(小習いの壷莊と同じ手順です)。

正客KTさまから順番にゆっくり茶壷を上座から下座へ回しながら拝見していただきました。

「茶壷は桜の吉野山を描いた仁清写で、朝日が昇り始め、陽の光を浴びながら吉野山が徐々に桜の花に彩られていきます。やがて夕方になって陽が沈んでいくという、吉野山の一日の景を表しています」とご亭主がお話ししています。口覆は唐松金襴です。

御茶入日記が持ち出され、茶壷が点前座(道具畳)へ戻ると、いよいよ口切です。

 

 

葉茶じょうご一式が水屋から持ち出され、小刀で合口をゆっくり切り始めました。お客様一同、我がことのようにM氏の口切を見詰めています。蓋が開けられると、

「いずれのお茶を差し上げましょうか?」

「ご亭主にお任せいたします」と正客。

口を切り終えた壷の中には葉茶がぎっしり上部まで詰められ、中に半袋(37.5g)が3つ入っています。
葉茶をじょうごへ移し、半袋の一つを取り出し、「無上でございます」

亭主M氏が選んだのは、京都柳桜園でこの時期だけ販売される炉開き抹茶「新茶 無上」でした。

口切にはいろいろな見どころがありますが、その一つは葉茶じょうごの葉茶を詰茶と書かれた挽家へ入れ、残りを茶壷に戻す時の所作と音だと思っています。

 

 

漏斗の背面を軽く「トントン」と叩きながらサラサラという音も心地よく挽家へ葉茶が入れられていきます。

それから漏斗の背面をリズムよく「トットットーン トトトーン」と叩きながら残りの葉茶を全部茶壷に戻しました。

暁庵も茶道口近くでその様子を拝見していましたが、いつまでも拝見していたい・・口切の音を聴いていたい・・・と思いました。

封書に糊が付けられ、口が封じられ、判が押されました。

 

小堀遠州流のお客さま、社中の先輩と後輩に見守られて、M氏の初めての口切でしたが、
全ての所作が的確で美しく、ご精進の程が伺え、嬉しかったです。

誠におめでとうございます! 口切を見事に成し遂げられたご亭主の喜びが我が身のように感じられました。

 

 

次いで初炭、懐石と茶事は進行していきました。

懐石の小梶由香さんが腕をふるってくださった献立を記します。

 

口切の茶事の献立  2021年11月14日   小梶由香作成

  飯   白飯 一文字

  汁   青海苔麩 小豆 辛子

  向付  鯛細造り 莫大海 芽じそ 山葵 加減酢

  椀盛  五彩真蒸 (かに、きくらげ、帆立 銀杏 すり身の白)

             芽ほうれん草 椎茸 松葉柚子

  焼物  甘鯛味噌幽庵焼

  預鉢  海老芋 合鴨 ほうれん草 針柚子

  箸洗  針栗 梅肉

  八寸  蒸百合根 海老黄味寿司

  香物 すぐき 水菜

 

   (椀盛・・・五彩真蒸  芽ほうれん草 椎茸 松葉柚子)

 (預鉢・・・海老芋 合鴨 ほうれん草 針柚子)(鉢は鼠志野、玉置保夫造)

 

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