暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

コロナ禍の「文月の朝茶事」・・・(3)後座の花と濃茶

2020年08月03日 | 茶事・茶会(2015年~自会記録)

      (白い木槿と野葡萄   花入れは火吹き竹)

 

(つづき)

各服点で美味しい濃茶をスムースに差し上げたい・・・と半東Kさんと心をくだきました。

特に火相と湯相、朝茶事では後炭をしないので、中立で最後まで良い火相を保つよう炭を足しました。炭の足し方も一気ではなく徐々に火が回るように工夫しました。

小柄な朝鮮風炉なので湯が薄茶まで足りるように湯も足し、これで一安心です。

中立の間に床のお軸をはずし、中釘に花を生けました。

 

       (濃茶の点前座)

 

濃茶は松花の昔(丸久小山園詰)です。茶杓で茶碗に掬い出した途端に茶香が薫り立ち、開け放たれた茶室に充ちていきました。

濃茶は各服点なので多めに掬い出し(1椀に4gが目安)、湯を注いで練り始めました。湯が多めに入ってしまい「ゆるめになりまして申し訳ございません・・・

次客さまには別の茶碗(茶巾入り)を半東が持ち出し、茶入から3杓掬った後に回し出し、湯を入れ練りました。三客さまとお詰さまには水屋から濃茶入りの茶碗を持ち出してもらい練り上げました。

お服加減はいかがでしょうか?

お詰Uさまの濃茶をお出し服加減をお尋ねすると、待ちかねたようにお声が掛かりました。

「本当はもっと後にお尋ねするべきなのでしょうが、円相の露が消えないうちに花のことをお尋ねします。後入りした時に床の花の清々しさに息を呑み、感動いたしました・・・」とお正客さま。

「ありがとうございます。気に入っていただけたようで嬉しいです。花は最後まであれこれ迷いましたが、白い木槿の清らかさが朝茶事にぴったりと思い決めました。もう1種はカラスウリです(茶事後、カラスウリではなく野葡萄だと気が付きました・・・)。Nさまがお正客でしたので、八ヶ岳の茶事の時に購入したあの花入れを使ってみました」

壁に打った円相の露は早や消えようとしていて、止まることのない時の流れや命のはかなさを思わせ、それゆえに朝茶事で交わるひと時のご縁を有難く思いました。

 

 (花入れは火吹き竹に布を巻き、漆を塗ったものを転用)

 

茶碗の拝見は正客N氏の主茶碗だけとし、あとの3碗は紹介だけとしました。主茶碗は御本三島で愛称「伊備津比女」です。次客M氏は5代大樋長左衛門の飴釉茶碗、三客AIさまは御本雲鶴、詰Uさまは茜雲茶碗の銘「宝龍」、いずれも小ぶりの茶碗です。

丹波焼・肩衝茶入(石田陶春作)、茶杓(後藤瑞巌師 銘「無事」、仕覆(俵屋金襴)を拝見にお出ししました。

茶杓の銘「無事」は、般若心経の教えの1つである「空(くう)」を表しています。 
空とは、全ての物事は移り変わって行く、とどまることがないという意味です。
物事にとらわれず、移り変わることを受け入れる心が重要であるとの教えです。

今日の朝茶事にピッタリの茶杓があってヨカッタ!

   (拝見にお出しした茶入と茶杓)

薄茶になり、こちらも各服点で、三客さまとお詰さまにはKさんが水屋で点ててお持ちしました。

薄器は根来塗の薬器、茶杓は濃茶と同じ「無事」です。

干菓子は2種、源吉兆庵の「陸の宝珠」と美濃忠の「山宝菓」をガラスの角皿に盛りましたが、取りやすいように半包装のままお出ししました。

終わりの挨拶を交わす頃になって雨がぽつぽつ降り始め、〆のお見送りができず、ご挨拶にて終了いたしました。

 

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