暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

口切の茶事(2015年)-2

2015年12月02日 | 茶事


(つづき)
正客Kさまより
「どうぞご都合により茶壺の拝見をお願いします」
「ご都合により・・・」というのは拝見の仕方がいくつかあるためで、
今回は教本とは違うN先生にお習いしたやり方で、口切の前に茶壺を拝見にお出しします。

茶壺はむらさき茶会の後に「古希の記念に・・・」という口実で購入しました。
口切は特別な行事であり、口切の茶事へお招きを受けるのは茶人として最高の栄誉とも言われていますので、
亭主としても姿勢を正し、茶壺を新たにし、日頃の感謝の心を込めました。
仁清写の茶壺で銘「みよしの」です。

   み吉野の山をいろどる花の雲
       今や錦の時雨ふるらし      暁庵


お正客さまはじめ全員に茶壺を右から左へ回して頂きました。
(満開の桜と同時に錦の時雨を連想してもらえたかしら・・・それと・・・)

御茶入日記を持ち出し、茶壺を持ち帰り、口切をしました。
口切をしたところで
「いずれのお茶を差し上げましょうか?」
「ご亭主様におまかせいたします」とKさま。
「承知いたしました」
茶の入った半袋3つのうち1つを取り出し、茶銘を読み上げ、挽家(ひきや)に入れました。
「千代の寿(上林)でございます」(意中のお茶だったらしく皆さまニッコリ)



詰と書かれた挽家へ葉茶じょうごの詰茶を入れ、葉茶じょうごを傾けて
「トーン トトトン」
・・・この音の響きに口切を実感しながら、残りの詰茶を壺へ戻し、合口を美濃紙で封じ、印を押しました。
お客さまも我がことのように息を詰めて見守ってくださり、心地良い一体感を感じながら・・・。

口切の後は初炭手前、炭斗のふくべを持ち出すと、どっとドヨメキが・・・。
ふくべは茶友Wさんが畑で丹精込めて育て、贈ってくださった逸品、存在感が凄かったみたいです。
なんせ、炉用の大きな炭が小さく感じるほどで、大のお気に入りです。
やっとこのふくべを使って口切の茶事ができたと感無量でした。


   炉縁は根来塗、釜は霰唐松文真形

備忘録として、口切を中心に茶事の流れを書き記しておきます。

1)客は待合で汲み出しを頂いたら、蹲を使い、席入
2)挨拶、正客が「ご都合で茶壷の拝見を」と所望する
3)亭主は壺を床から運んで、炉の下座・かぎ畳で網を脱がせ口緒をほどく。網と口緒は定座へ置く
4)茶壷を拝見に出す。 拝見の間亭主はかぎ畳に座っている
5)詰が正客へ壺を持っていく頃に席を立ち、水屋から御茶入日記を正客へ持ち出し正客前に座り、壺の下座へ置き、壺を持って戻る
6)口覆をはずし壺の封印を改める
7)正客より茶壺、口覆についてお尋ねがある(問答)
8)亭主は水屋から葉茶じょうご一式を持ち出し、壺の下座におく。
9)前畳縁内に挽家(ひきや)二つを左右同時に出し、その前に一式のった美濃紙を出す。
 挽家の蓋を左右同時に開けて横へ置き、壺の口覆をはずし右肩へ置く。
10)茶壷の口を切る。蓋を取り、口覆の前に置いて、亭主は正客に所望の濃茶を尋ねる。
「いずれのお茶をさしあげましょうか」 (問答)
11)詰め茶(薄茶)を葉茶じょうごにあけ、客に所望された袋に入った濃茶を取り出し、右の挽家に入れ蓋をする。
じょうごをまわして詰茶を「詰」と書かれた左の挽家へ入れ、残りを壺に戻す。
12)壺に蓋をして、封紙に糊をつけ合口に封をし、捺印する
13)諸道具を元に戻し、口覆をかぶせ、葉茶じょうご一式を水屋にひく
14)かぎ畳へ斜めにすわり、左手で網袋と口緒を取り、口緒を懐に入れ、右手に網を持たせ壺正面にまわる
15)茶壷を網に入れて水屋へ持ち帰る。
16)御茶入日記を下げて茶道口で礼、襖を閉める
17)初炭手前
18)懐石と主菓子
19)中立
20)銅鑼の合図で後入して濃茶点前。
21)後炭
22)薄茶点前
23)最後の挨拶をし、送礼。


 
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今日のお勧め(として過去のmy blogから)・・・「紅葉のさんぽみち-2・・・栄摂院の散紅葉」