暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

「萩の月」の茶事-3

2014年09月24日 | 茶事  京都編
銅鑼を5つ打って、後座の席入りです。
花と割れ壷にたっぷり露を打って、お迎えしました。

名水点ではないのですが、木地釣瓶の水指です。
水は近くの松井酒造・鴨川蔵の井戸水をわけていただいています。
茶入から緑の抹茶を廻しだし、湯を汲み入れ、練り始めました。

濃茶のお好みをお尋ねすると
「少し濃いめが好きです」とお客さま。
追杓を加減して少し濃いめに練り上げました。
茶銘は「北野の昔」、一保堂詰で京都限定品とか。

茶碗は高麗御本三島、愛称「伊備都比売(いびつひめ)」と申します。
茶入は薩摩焼の胴締め、十五代沈壽官作です。
(以前、東博で見た松永耳庵旧蔵の薩摩焼茶入に魅せられて
 購入しました。最初の三溪園茶会で使った、思い出深い茶入です)
茶杓は藤井誠堂和尚作の銘「古城」、仕覆は能衣装裂、小林芙佐子作です。

                  
               露をたっぷり打って・・           

薄茶となり、煙草盆を運び出そうとすると、
中立で用意した火入の炭が立ち消えていました。残念!

気を取り直して干菓子を運び、
祥瑞の主茶碗で薄茶を一服さしあげました。
薄茶は「丹頂の昔」、一保堂詰、
干菓子は常盤木(かぎや政秋)と味噌クッキー(本田味噌店)をお出ししました。

替茶碗は、虫明焼で「萩の月」が描かれています。
もう一つの虫明焼の茶碗(葦に雁絵)と2つ並べて、お出しする予定でしたが
やめました。
2つ並べるとお互いの好さが相殺されるような気がしたので・・・。

複雑な染付模様が美しく、ずっしり重い祥瑞(三代三浦竹泉作)と
小柄で軽く、手にすっぽりおさまる、侘びた虫明焼が対照的で、
その違いをお客さまにも愛でて頂いたようです。

                
                お彼岸ですね・・・哲学の道の曼珠沙華

薄茶になって、いろいろな話が飛び交いましたが、
3年前、短い京都探訪中に灑雪庵と出合った話を披露しました。
前の住人がお茶をされていたので、どこか「お茶」の雰囲気を感じたこと、
その方が戸口で見送ってくださった時、まるで茶事のようだと思ったこと、
・・・それが、この家を借りる決め手になったのでした。

そして、今日の茶事後のお見送りは、
あの時のように玄関でお見送りさせていただきます・・と申しますと
「どうぞお見送りご無用に・・ではなく、
 どうぞお見送りをおねがいします・・ですね」とお正客さま。

戸口に立ち、去ってゆくYさまとSさまの後姿をいつまでも見ていたい・・・
と思いながら見送りました。
(振り向いてお辞儀までの間合い、これが実に絶妙なのです・・・)


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