MAICOの 「 あ ら か る と 」

写真と文で綴る森羅万象と「逍遥の記(只管不歩)」など。

「シュプリンゲン」と「きらめきの森」

2010年08月10日 | あらかると

昨日JR武蔵野線に乗っているとき車内広告の絵に目が留まりました。巻頭の写真がそれで、金砂子にきらめく森の中に黒揚羽が飛んでいるなんとも幻想的な日本画だった。作者名が絵の中には無かったのですぐには分からなかったが、隣のポスターの「イルカ」は作者が東京芸術大学学長の「宮田亮平」先生のものだと一目で分かった。そして日本画は手塚雄二先生のものだった。

東京芸大には芸大美術館の開業初日から約8年にわたり下請けの警備員として勤務していたので懐かしく思われた。とくに宮田先生からは何度となく気さくに声をかけて頂きました。

ということで調べました。


手塚雄二先生(東京芸大日本画教授)の絵は「きらめきの森・2005年制作」で、製作コンセプトを次のように述べられています。

自宅の庭先に黒揚羽がふわふわ舞い降りてきました。
こんな都会にも生きる場所があるのだろうかと、その優雅な舞いを眺めているうちに昔のことがふと思い出されました。
今より不便だったけれど、人間の営みの中でとても大切なもの、心の豊かさのあったあの頃の生活。
黒揚羽は黄金色の鱗粉を撒き散らしながら私の心のきらめく森の中に消えていきました。
胡蝶の夢ならぬ、私の見ていることが幻なのかもしれないと、と思わせるひとときの邂逅でした。(以上(社)全国鉄道広告振興協会全国キャンペーン事務局ホームページより)

手塚先生のホームページ。近日中に個展が開かれるようです。


また宮田先生は次のように述べられています。

私にとって「イルカ」の存在というのは、私のこうありたいという思いや、こうしたいんだという希望を運んでくれる、いわば「伝道師」の役割をしてくれているものです。
ですから、イルカのような形をしていますが、実際のイルカではありません。
これまでに数多くの作品を造ってきましたが、1つの作品を造っている間に色々なアイデアが浮かんできますので、次々と違った「シュプリンゲン」が生まれてきているのです。(以上(社)全国鉄道広告振興協会全国キャンペーン事務局ホームページより)

宮田亮平東京芸大学長のホームページ

宮田先生は「自分と『いるか』」について、2002年11月教官アーカイヴ展に寄せて、次のようにも述べられています。

ドイツ留学をしている時に「いるか」に出会い「シュプリンゲン」というドイツ語を覚えました。このシュプリンゲンの響きは、日本語よりも遙かに「いるか」らしく思うのですが、皆さんはどう思いますか。シュプリンゲンの豊かな伸び具合と躍動感。日常では冷たいイメージの金属との融合をわたくしなりにイメージしました。一番肝心なのがシュプリンゲンの表情と身体にある模様です。模様についてはわたくしが優しさを込めて描いておりますが、表情についてはやさしさ、たくましさ、愛らしさ、沢山の表情の中から観た方々の想像で加えていただきたいと思います。

芸術作品は制作年代や製作意図(コンセプト)が分かると、鑑賞に深みが出てくるのでお奨めです。
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