今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

877 シアトル【アメリカ】

2019-07-29 15:10:25 | 海外
坊やは妻の膝上がいたく気に入ったらしい。母親が「ご迷惑でしょ」と抱き取るのだが、またヨチヨチと歩いて来て繰り返しよじ登る。妻があまりの可愛さにホホズリなどするものだから、もう抱かれたまま離れようとしない。手に負えなくて母親は、スマホでパパを呼び出し、様子を実況中継して見せている。スマホのパパは大笑いだ。シアトルのキングストリート駅。私たちはポートランド行きの特急列車を待っている。



この街に1泊しか滞在できなかったことが心残りである。万博の跡地だというシアトルセンターはスペース・ニードルが屹立し、ミュージアムのSF的建築が魅惑的だ。噴水を囲んで憩う緑地の家族連れに、自分もいつの間にか溶け込んでいる心地よさ。モノレールでダウンタウンに行くと、整然と区画されたビル街が楽しい散歩を誘う。街に溢れているのはスターバックスのロゴマークだが、そこはやはりシアトルである。



巨大な人物像が招き入れるように立つ美術館や、大きな音楽ホールが繁華街で活発に活動しているようで、ややこじつけて言えば、この街は、コーヒーと文化の香りがほどよくブレンドして漂っている。シアトルを舞台にした映画で、雨に濡れながら歩く主人公が「これがシアトルさ」とつぶやいて肩をすくめる場面がある。米国人なら納得の仕草なのだろう。しかしこの季節、シアトルはまばゆいばかりの陽光で、眩しい。



地理的なことを言えば、シアトルは米国の北西の端である。早くから発展した東部の都市から見れば「最果て」の地であろう。そこになぜこれほどの大都市が生まれたのか。先住のシアトル酋長率いるインディアン部族を強制移住させて建設された街だというが、太平洋に面した良港の地がポイントだろう。東から伸びてきた鉄道がここで海と通じ、日本など東洋貿易の拠点になった。「最果て」が「先端」になったのだ。



航空機や軍需産業などで潤う大都会だということだが、スターバックスだけでなく、マイクロソフトもアマゾンも、さらにはジミ・ヘンドリックスまでもがこの街で誕生したのだとか。なるほど、それなら豊かな街が生まれて当然だ。観光名所だというPike Place Marketに行くと、びっくりするほどの混雑で、前に進むこともままならない。客のほとんどは観光客のようで、私たちは巨大な粒のサクランボを買った。



このマーケットに行ったおかげで、シアトルの地形がよく理解できた。市街地からマーケットは急坂の下にあり、港に続く。つまり街は、湾からすぐに立ち上がる台地上に営まれている。私たちはAmtrakのカスケード号でバンクーバーからやって来たのだが、右手の車窓は入江の美しい風景が展開する一方、左側は崖地で視界が塞がれ続ける。カリフォルニアへと南下する鉄路は、そのわずかな平坦部に敷かれている。



翌日、シアトルからポートランドに向かうカスケード号は、到着がずいぶん遅れた。米国の鉄道の旅は、ヨーロッパほど快適でないことは何度も体験しているから、遅れくらいでは驚かない。待合ホールの可愛い坊やのおかげで退屈せずに済んだ。それにしても車社会の米国では、鉄道の駅は概ね殺風景である。売店もなく閑散としている。周辺を見晴らすと、イチロー選手が活躍したSafeco Fieldが見えた。(2019.6.28-29)



























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