今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

330 立川(東京都)・・・都市軸を行きつ戻りつ伸びる街

2011-04-04 11:53:43 | 東京(都下)
前にも書いたことだが、JR中央線の立川駅に降りると、乗降客のあまりの多さに驚かされる。7年前に発表された立川市の「都市軸沿道地域まちづくり誘導指針」によると、「JR立川駅の乗車人員は平成13年度には14万人を超え、吉祥寺駅を抜いて新宿駅より西では1位になった」と書いてある。混み合う駅は暮らし難い街の象徴にも思えるが、逆に人々の押し合う熱気が、伸び盛りの街には不可欠の栄養源だということだろうか。

ところで「都市軸」とは何だろう? 立川駅北口のテラスを行くと、「昭和記念公園」などを指し示す方向板といっしょに、「都市軸」が堂々と掲げられている。その指す先には道路とも広場とも判然としないスペースがまっすぐ北に延び、その空中をモノレールがスルスルと通過して行く。これらの直線の何かが「軸」なのだろうか。

先の「指針」には「都市軸とは、都市計画道路の名称からそう呼ばれている」と、まるで意味を成さない説明しかない。私が無知なだけかと広辞苑を引くが、出ていない。判然としないものの、どうやら都市計画や都市設計で基軸となる概念のようだ。立川はそんな抽象的な言葉を、最も一般的であるべき道路案内に掲げる奇妙な街だ。この奇妙さは、若い街の証左ともいえようか。若さは奇を衒う。そしてそれが成熟へのステップになる。

1977年の基地返還で、街の中央部に広大な空白が生まれ、そこに自由な発想で街づくりに取り組めることになった立川市は、奮い立ったことだろう。その一つが都市軸沿道の商業・業務エリア整備であり、もう一つは「基地の街」の記憶をアートで包み込もうという「ファーレ立川アート」作戦になった。鉄と硝子とコンクリートの都市軸タウンを行くと、唐突に前衛オブジェと視線が合ったりしてどぎまぎさせられる。面白い試みだ。

広場でカラフルな大蛇が2頭、絡み合っている。ベビーカーでやって来た幼児が車を抜け出し、よじ登ろうと懸命だ。母親は先着の母親と談笑に余念がない。かつて人気を集めたテレビドラマ「金曜日の妻たちへ」の舞台は多摩センターあたりの新興住宅地だった。その多摩センターは昨今、住民の高齢化が懸案になりつつある。「金妻」はどこに行ったのかと思っていたら、モノレールで結ばれた立川に移り住んでいたらしい。

奇を衒った若さ剥き出しの街づくりを、好まないという人もいよう。一方で都会的なおしゃれを最優先の選択肢にする若いママたちには、この雰囲気が大いに満足なのかもしれない。だから立川駅の乗降客が増加傾向を続けているとしたら、この街づくりは成功していると、プランナーたちは胸を張ってもいい。伸び盛りの街は、そうやって隣りの八王子から買い物客を奪っているわけだが、これも都市間競争、悪いことではない。

高齢者にとってもこの街づくりは楽しめる。駅の雑踏を抜けて散歩に出、ヘビやイヌの頭をなでてから飛行機少年の足下のベンチでひと休み、シネマシティで懐かしの名画を堪能し、伊勢丹か高島屋でお弁当を買い込み、モノレールで多摩丘陵に出かける。都市軸とは人生軸のことのように思えて来る不思議。(2011.3.30)

          

        

          

        
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