今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

866 佐野(栃木県)拉麺で厄を落としてアウトレット

2019-02-27 06:00:00 | 群馬・栃木
館林美術館は午前中に観終わったので、お昼は佐野で食べようと考えた。佐野という街は行ったことがないのだが、ラーメンが「ご当地グルメ」らしい。そこは栃木県になるものの何のことはない、館林市と佐野市は北関東北部で隣接しており、境界は渡良瀬川だったり地続きだったりして、上野国から下野国へ渡るという感慨が生じるほどの隔たりはない。茫漠とした田園地帯の向うに、冠雪した日光男体山が聳えている。



郡馬・栃木・茨城の北関東3県は、魅力度ランキングといった評価で常に全国最下位を競っているけれど、私はそのことが不思議でならない。地域にはどこでも、そこならではの魅力があるもので、順位をつけようという発想自体がおかしいとはいえ、北関東が常に下位になるのは何故だろうかと考えてみる。「広大な関東平野に線引きされた県境は、山脈などで区分される県域と違ってはっきり認識できないからではないか」



館林や佐野のあたりを移動していると、自分が今どの県にいるのかわからなくなってくる。知らないうちに埼玉県や千葉県に入っていることもあるから、県の意識が薄くなる。そんなことを考えていたら、松本清張に『神々の乱心』という未完の長編小説があることを思い出した。小説の舞台は満州、広島県三次市などとともに、珍しいことに埼玉の吉見百穴や渡良瀬遊水地、それに足利や佐野といった関東内陸部である。



もし清張さんが倒れることなく、結末まで書き終えていたら、壮大な代表作になっていただろうにと惜しまれるが、未完に終わったのはこの地域にとっても残念なことだった。書き上げられていれば必ずやドラマ化されてヒットし、映像によって北関東の地域性がより明確に意識されただろうと思われるからだ。北関東を舞台にするドラマ要素といえば、平将門に田中正造くらいで、花袋の「田舎教師」では地味過ぎるだろう。



そんな地域だから、街の存在感をアップさせたい自治体は「ゆるキャラ」に頼りたくなる。佐野市のブランドキャラクターは「さのまる」といって、ラーメンのお椀の笠をかぶり、腰には佐野のもうひとつの名物・いもフライの剣を差している。グランプリで1位になったこともあるほどで確かに可愛い。街の至る所で愛嬌を振りまいていて、閑散とした中心部では、通りを行き交う人より「さのまる」の旗の方が多い。



私たちは駅前のラーメン店でお昼を摂った。昭和の味とでも言おうか、懐かしい薄口の醤油味である。市役所向かいにある「人間国宝・田村耕一陶芸館」でいただいたラーメンマップで、一番近い店だ。「小麦が豊富で水がいいから美味しいのです」と陶芸館のおばさんが説明してくれる。いい街ですねと言うと「冬は西からの風が強くてスッゴク寒い。赤城颪です」という。からっ風は群馬よりこちらの方で暴れているらしい。



例幣使街道の宿場町だったという歴史が、町割にいくらか残っていると感じられるものの、日曜日だからか、中心部の駅や市役所界隈にはほとんど人通りがない。ところが市中を廻っていると、唐突に人波が湧き出すように出現した。厄除け大師の門前である。瓦屋根まで黄金で飾る恐るべきセンスの寺だが、厄は商売のいいタネらしい。そしてアウトレットモールに行くと、遠来の買い物客で溢れているのだった。(2019.2.3)






































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