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今日は、この街にいます。

昨日の街は、懐かしい記憶になった。そして・・

775 赤城(群馬県)湧玉の枯れることなし太古より

2017-07-18 05:36:51 | 群馬・栃木
関東平野の北端を塞ぐ形で、群馬県のほぼ中央にどっかり居座る赤城山は、標高こそ1828m(最高峰の黒檜山)とさほどでもないのだが、その広大な裾野は、富士山に次ぐ面積だというのは本当かもしれない。だから山麓には、今でこそ合併で数が減ったものの、かつては多くの町や村が、細かく境界を線引きしていた。そうした自治体の一つに「赤城村」があった。西麓の小さな村に過ぎないけれど、村名は山を代表する大きさである。 . . . 本文を読む
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774 赤岩(群馬県)七夕は雲上蒼天憂いなし

2017-07-12 17:37:54 | 群馬・栃木
私はいま、群馬県北西部の標高1000mの山中にいる。所在地をいえば吾妻郡中之条町赤岩となるが、赤岩集落からは遠く離れ、森の中に3世帯ほどの家屋が点在しているだけの奥深い地である。今夜は月が低く、森の支配者は闇だ。だが天空では、北斗七星が輝いている。梅雨前線が呼び込んだ豪雨のため、特別警報が発令されている山陰や九州北部には申し訳ないほど、穏やかに澄んだ夜空である。しばし星に見とれる。 . . . 本文を読む
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746 宇都宮(栃木県)晴れ晴れと餃子を食べて空を見る

2016-12-11 10:00:09 | 群馬・栃木
師走入りした宇都宮の朝は、眩しく晴れ上がった。市役所最上階に登ると、峰に筋状の雪を輝かせる男体山が奥日光の稜線に屹立している。南側に回ると、二つの頂を並べる筑波山が確認され、さらに南西の方向遥かに、富士山が白いシルエットを浮かべている。関東平野北辺からの眺めは広大である。出勤してくる職員に「ご苦労さん」と声をかけてやりたいけれど、不審者と警戒させてはかわいそうだから、黙ってエレベーターを降りる。 . . . 本文を読む
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741 粕川(群馬県)森の中地場のアートを堪能し

2016-11-09 07:00:00 | 群馬・栃木
下校途中の女子高生なのだろう、電車内で制服姿のまま寝そべり、気だるそうに串を焼き、酒を酌み交わしている。呆然と見つめる教師らしき男と車掌。ホームの表示は「高崎」とあるから、群馬の高崎に通う女子高生らしい。手前で女性が鑑賞しているように、もちろんこれは絵である。まるで一コマ漫画のようだけれど、100号の油絵なのだ。私は赤城山南面の、森の中の美術館へとやって来て、不思議なアートを楽しんでいる。 . . . 本文を読む
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740 暮坂峠(群馬県)像のない牧水まつり名も哀し

2016-11-08 12:35:56 | 群馬・栃木
いつもはひっそり閑としている暮坂峠が、10月20日だけは賑やかになる。1922年(大正11年)のこの日、峠を越えた詩人・若山牧水は、2年後に発表した「枯野の旅」で「上野の草津の湯より澤渡の湯に越ゆる路名も寂し暮坂峠」と詠った。土地の名を美しく広めてくれたと地元の人々は感謝の詩碑を建立、毎年この日に「牧水まつり」を催して今年で60回になる。詩碑の前で詩吟や合唱が披露されている。ところが牧水の像が無い。 . . . 本文を読む
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723 六合(群馬県)どこから来てどこへ行くのか浅葱色

2016-09-15 07:51:18 | 群馬・栃木
アサギマダラが舞っている。アゲハよりはやや小型ながら、モンシロよりずっと大きい姿で、浅葱色の翅を優雅に泳がせている。ここは群馬県中之条町が営む花の駅・花楽の里。草津 から帰る湯治客が、肌を休めようと立ち寄った沢渡温泉に通じる暮坂峠道にあって、標高1000mほどに広がる花の園だ。その一角にフジバカマの群落を育てたところ、アサギマダラがやって来るようになったという。どこから来て、どこへ行くのだろう。 . . . 本文を読む
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718 吉岡(群馬県)いにしえがじっと見ている藪の奥

2016-08-14 17:22:02 | 群馬・栃木
夏草がはびこる薮の奥で、黒々と口を開ける闇は、石室への入口である。先ほどから私は、容赦ない日差しと草いきれに閉口しつつ「小さな古墳だけれど、私が入るであろう墓より遥かに大きい」などと考えている。吉岡町南下(みなみしも)。群馬県のほぼ中央、前橋・高崎・渋川の3市に囲まれて、自治体区分地図では陸の孤島のような小さい町なのだが、確認されている古墳は400基を超え、古墳大国・群馬でも有数の古代の墓域なのだ。 . . . 本文を読む
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717 尻焼(群馬県)いい湯だなとは言い難し尻は焼け

2016-07-20 14:51:57 | 群馬・栃木
草津白根山の東麓を抉るようにして、白砂川が南行している。そこに東北部の水を集め合体する流れを長笹沢川と言い、合流部に温泉が連続する。その一つが尻焼温泉で、川底からも湯が湧いている。この一帯を俯瞰すれば、草津の100もの源泉が噴き出す高原を、やはり温泉の湧く谷が縁取っていると分かる。中央アルプスほどの標高はないとはいえ、群馬県北西部の、長野・新潟県境に広がる大山塊まっただ中である。 . . . 本文を読む
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707 浅間(群馬県)牛さんよ浅間の草は美味いだろう

2016-07-03 23:17:31 | 群馬・栃木
朝、カーテンを開けると、空の青さに眼が驚いた。私が「地中海ブルー」と勝手に呼んでいる、濃く輝く青である。水蒸気が多い日本では、滅多にお目にかかれない空だ。前日の雨に洗われ、若葉は瑞々しい少年少女期へと成長している。私は暮坂峠に近い標高1000mの陶芸工房に居る。これほどの好天とあっては、土いじりどころではあるまい。「そうだ、浅間牧場に行ってみよう」と思い立つ。北軽井沢まで1時間とかからないだろう。 . . . 本文を読む
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698 須川(群馬県)宿場には馬と水車とユアン窯

2016-05-18 09:41:29 | 群馬・栃木
江戸と越後を結ぶ三国街道に、須川という宿場があった。高崎城下で中山道から北へ発する街道は、渋川、中山などの宿を経て、12番目の須川宿に至る。平野は渋川あたりで果て、しだいに山がちとなる上州路は、須川郷まで登って段丘上の平坦部に出会う。国境の谷川岳を望む宿場には本陣・脇本陣が置かれ、50軒ほどの旅籠で賑わっていたという。現在は「みなかみ町須川」。一部は復元整備され「たくみの里」という観光地になっている。 . . . 本文を読む
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660 月夜野(群馬県)義人とはかく云う君よ茂左衛門

2015-11-04 10:58:09 | 群馬・栃木
秋の夜長を持て余し、筑摩版「現代日本文学体系」の現代名作集に収められている『磔茂左衛門』を読んだ。作者の藤森成吉(1892-1977)には初めて接する。その戯曲の出来はともかく、月報に収録されている同氏の短文を読んで呆れてしまった。「この賎民の生地月夜野と云うは、何一つ見るものもない貧寒な村落だ‥‥」。この侮蔑まみれの表現に義憤を覚え、月夜野の街を目指す。茂左衛門の事績を訪ね歩こうというわけである。 . . . 本文を読む
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657 美野原(群馬県)野と原は水が通じて美野原に

2015-10-20 12:49:55 | 群馬・栃木
広辞苑は《野》を「自然の広い平地。山すその傾斜地」だといい、《原》は「平らで広く、多く草などが生えた土地」だという。違いはよくわからない。その野と原を組み合わせた《野原》は「草などが生えている広い平地」と、やはり似たようなものである。しかし「古く日本人は、野と原を明確に使い分けていた」という解説を読んだ記憶がある。「野」は耕作地あるいは耕作可能な土地で、「原」はもっと荒蕪な原野を指すのではなかったか。 . . . 本文を読む
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613 四万(群馬県)清流に頬上気させお湯ガール

2014-11-25 15:33:09 | 群馬・栃木
日本人は、いや日本人に限らず、いやいや人間に限らず、その身を地中から沸く湯に浸すことは大好きなようである。確かに疲れがとれ、肌が奇麗になるような気がするし、周囲の景色が良ければなお結構だ。だから私もその機会があれば喜んで入る。しかし入るためにわざわざ出かけるほど好きというわけではない。その程度だから、日本中のいたるところで温泉場が成り立ち、湯客で賑わう様子が時には不思議に思えることがある。 . . . 本文を読む
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609 三原田(群馬県)縄文の家族も見ていたこの風景

2014-11-22 08:46:48 | 群馬・栃木
利根川が上越国境の谷を駆け下り、関東平野を潤い始めるあたりの赤城山西麓に、《三原田》という地域がある。かつては群馬県勢多郡赤城村といったが、現在は合併して渋川市に含まれる。林野と畑地が混在する台地が崖となって利根川に落ちる三原田の段丘上に、閑静な住宅地が広がっている。市街地から遠く利便性に欠けるけれど眺望は抜群である。そこは5000年前にも住宅団地が広がっていた。暮らしていたのは三原田縄文人である。 . . . 本文を読む
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608 小野上(群馬県)日溜まりに不足を知らず曼珠沙華

2014-11-22 08:40:34 | 群馬・栃木
新宿から伊香保を経由して草津に向かう高速バスを利用して、月に1、2度、群馬県西北部の山中に通っている。山での陶芸を愉しむためで、もう3年を超える。そのバスが伊香保温泉を通過し、榛名山を下って吾妻川に差し掛かると、「えも言われぬ風景」が車窓をよぎる。対岸の山麓に点在する集落が、南面する小さな扇状地の日溜まりに抱かれている、ただそれだけの眺望なのだが、自然と生活がしっくり溶け合って、実に美しい。 . . . 本文を読む
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