日々適当

hibitekitou

クレしんオールナイト

新文芸坐×アニメスタイル 再検証!? 映画『クレヨンしんちゃん』PART 2

昨年行われたPart 1の続きのオールナイト上映が池袋の新文芸坐にて1/26に行われました。上映された映画は

ヘンダーランドの大冒険
暗黒タマタマ大追跡
電撃!ブタのヒヅメ大作戦

の三作。第4作から6作目のものとなり、本郷みつる監督から原恵一監督への交代を体験できる内容となっています。22時半に開場となり、22時45分からトークショーが行われました。そのトークショーの内容をメモとして残しておきます。
トークショーはアニメスタイルの小黒祐一郎氏が司会となり、ゲストに本郷みつる氏、原恵一氏、湯浅政明氏の三名を招いて行われました。劇場はほぼ満席。中央の列は全て埋まり、左右の列に少し空席があるといった感じのお客さんの入りだったでしょうか。

三人の監督が呼び込まれ、それぞれの挨拶が終わるとトークショーが始まります。
お話は、今回上映される映画について順番に聴いていく形になっております。まずはヘンダーランドの大冒険。

この頃、本郷氏はシャーマニックプリンセスというOVA作品の監督もされていらっしゃいました。その関係で、同作品の総作画監督をしていた石田敦子氏や作画監督をされていた大倉雅彦氏がヘンダーランドの大冒険に参加されている事が語られました。

話が前後しますが、雲黒斎の頃から、クレヨンしんちゃんが面白いという話がアニメーターに広がっていたそうで、やりたいという人々が次々と現れていたのだそうです。その結果、本郷氏は、今日上映される映画の頃が作画のクオリティが一番高いと思うと語っております。例えば暗黒タマタマの所で語られたのは、現在監督業をされている安藤真裕氏(花咲くいろはとかストレンヂア等の監督)がヘクソンと七人衆との戦いを100カット以上を担当したという事だったり、吉原正行氏がブタのヒヅメの冒頭のアクションシーンを担当した事だったり、末吉裕一郎氏が参加しはじめたのもこの頃です(暗黒タマタマの青森から東京への移動の場面を担当。本郷氏曰く、高倉佳彦氏の紹介じゃなかったかなということです)。プロダクションIG系の人が参加している事については、荒川真嗣氏による紹介ってルートもあったようです。この辺の話の流れの中で、攻殻機動隊より前か後かという話があり、そこで原氏の記憶として、安藤真裕氏が、クレしんに参加できたのは劇場版の攻殻機動隊がなかなか動かなかったからと言っていたというエピソードを話しておりました。

まぁそんなわけで、湯浅氏以外の作画関係のお話はこんな感じだったでしょうか。

ヘンダーランドに話を戻すと、この制作は、本郷氏の記憶では意外とスムーズに進んだそうです。そして、前作(雲黒斎)がけっこうマニアックになったという感じがあるので、この作品はバランスのよいものを目指したそうで、本郷氏の好きな童話やファンタジーの要素を引用し構成された事を話しておりました。なお、今までそのモチーフとなった童話が何かをあてた方はいらっしゃらないそうです。で、その童話に雪だるまが登場するそうです。そこから悪い雪だるま、ス・ノーマン・パーが生まれます。そのアイデアは本郷氏から生まれたものですが、キャラクターがあのようになったのは原氏によるものだそうで。原氏は、作るのが楽しかったと語っております。内面を出せばいいんだって。そこで、湯浅氏が、ス・ノーマン・パーはスノーマンと何か関係があるのかと本郷氏に聴いておりましたが、前述した通りの内容で、まったく関係がないと明言されておりました。
この作品は、オリジナルの要素が限りなく高いわけですけど、原作者の臼井儀人さんからいくつかオーダーを受けていた記憶があると言うことも本郷氏から語られました。マカオとジョマというキャラクターの存在や、トッペマは女の子であるとか。
そして、湯浅氏の存在です。ヘンダーランドの設定は彼が担当しています。つまり、遊園地を一つ丸ごとデザインした。そこで、スタッフでロケハンとしてディズニーランドに行ったという話や、湯浅氏はそれとは別にディズニーランドにはじめていって、それまでまったく興味は無かったけど、すごくよくできていてディズニー凄いという感想を持った事などが話されました。
面白いエピソードとしては、小黒氏がヘンダー鉄道を運転するサルの存在感が何かの伏線じゃないかというぐらいあったという話をふった時、そこの絵コンテは原氏が行ったそうですが、原氏曰く、本郷氏が突然、ヘンダーランドの本当のボスはあのチンパンジーってのはどうだろうと言い出したという事があったそうです。
そしてヘンダーランドのアクションの最大の山場。ラストの部分は原画を全て湯浅氏がされています。当時、ずっと設定をやっていたのだけど、最後の二週間ぐらいで50カットぐらいの原画を仕上げたそうです。本郷氏曰く、そこの部分は絵コンテも湯浅氏が切ったのだけど、絵コンテを見ても、原画を見ても、何が描いてあるか分からなかったそうです。動撮されたものを見て、初めて何が描いてあるか分かったそうで。それを本郷氏や原氏が分析しているのだけど、背景動画で描かれたこのシーンは、カメラワークも手書きで表現されることになるのだけど、それは、湯浅氏の頭の中でデフォルメされた絵になっており、いわば、カメラのレンズを次々と付け替えて撮影されたようなもので、だから、絵コンテや原画を見ただけでは分からないのではないかって事でした。(この人の頭の使っている所が他の人と違う的な事が話されたり)

暗黒タマタマに話が移ります。この作品とブタのヒヅメが原氏が一人で絵コンテを描いた作品となります。その後は水島努監督が参入してくるわけっすね。前述した安藤真裕氏が描いたたまゆらの里の格闘シーン。そこが関節技で絞めているのが面白い的な話を本郷氏がされます。当時、原氏は格闘技にはまってらっしゃったそうで。そして、湯浅氏が指摘するには、原氏のコンテが面白いのは、アクションが全部指示されているってことだそうです。だいたいの感じしか記されていない絵コンテが多い中、具体的にどうするかという指示が書かれており、それが珍しかったと述べています。
この作品は、実際の俳優にずいぶんと似たキャラクターが登場します。今だときっちり許可をとってからやらねばならないだろうけど、当時はまだ緩かったという話がされました。ちなみに、たぶん映画とは関係ないエピソードだけど、(おそらく)しんのすけのゾウさんの歌について、後にまどみちお氏(童謡ぞうさんを作詞された方)におうかがいをたてに行った時、寛大な人で面白がって快く許可をくれたという事が話されました。
この映画で原作者の臼井儀人氏が登場しています。やっぱりこの作品もオリジナルですけど、臼井氏からアイデアをいただいているそうです。健康ランドなんかがそうみたいですね。臼井氏が登場したのは原氏のオーダーで、いい声をしていたから、って事が話されます。そんな臼井氏となぜか藤原啓二氏とともに、おかまバーに取材に行ったそうです。そこで藤原啓二氏が「田舎のダビデ像みたい」と言われたそうで、なんと秀逸な例えなんだと感心したというエピソードが話されました(笑)
湯浅氏はこの作品においても設定デザインを担当しています。しかし、本郷氏時代と作り方が変わったと話しておりました。
この映画は原氏に監督が変わるに当たり、本郷氏が得意としたSFファンタジーな方向性ではなく、現実的なものを目指したという話がされました。だから、湯浅氏も設定を描くにあたって、写真資料や実際に見てすることが増えたそうです。
ちなみに、この辺のスケッチがロビーに展示されておりましたが、湯浅氏がスケッチブックを破るという事を好まない為に、三冊のスケッチブックがによる3ページしか見ることが出来ませんでした。それを受けて、本郷氏が、アニメスタイルから出せば?って振ると、小黒氏は既にそんな動きがあるという事を話しています。これは期待です。
この映画については、原氏は、当時は自分での評価は高くなかったそうです。しかし時間を置いてから見てみると、自分らしいな、おもしろいんじゃないかって感想を持つようになったようですね。実際、大傑作ですよ、これは。

最後にブタのヒヅメです。これはスパイアクションのテイストを取り入れております。
この作品でも湯浅氏は相当参加しているわけですが、本人の記憶が薄いそうで、あまり記憶に残っていないようなことを語っています。酔っていたせいかもしれませんw しかし、原氏曰く、(暗黒タマタマやブタのヒヅメの頃が)湯浅氏の一番忙しい時期だったんじゃないかってことですね。相当無茶な要求を原氏は湯浅氏にされていたそうです。忙しくて飯を食う時間もなかった的なエピソードもはさまれます。でも、湯浅氏曰く、楽しかったんだと思うとのことでした。作画としてはぶりざえのPVや筋肉のトイレの部分を担当されていることが話されました。
そして、非常に興味深いお話。エヴァとの関係です。ブタのヒヅメのお色気の声が三石琴乃氏になったのは、原氏がエヴァを見たからということなんですな。当時、はまっていたそうです。ちなみにエヴァのテレビシリーズは95年10月から放送されましたが、その当時は本郷氏が原氏に、これ面白いよと勧めて、そういうのには興味がないんですって見なかったそうです。しかし、後にはまってこうしてブタのヒヅメに影響を与えているというのは興味深いですね(ブタのヒヅメは98年です)。お色気がしんのすけを「しんちゃん」と呼んだのは意識してのことみたいですよ。

その後、原氏の次回作。実写映画の『はじまりのみち』 [オフィシャルサイト] の話に移ります。既に完成し、2月頭の初号試写を待っている状況だそうです。アニメと実写ではずいぶんと作り方が違うと言うような話がされ、その結果、出来上がったものがすごく新鮮に感じられ、手応えを感じているそうで。早く観てもらいたいとおっしゃっておりました。

そうして最後のプレゼント争奪のじゃんけん大会。進行は本郷氏が行っております。プレゼントは三人のサインが書かれた色紙一枚。女性の方が見事勝ち残り、原氏の次回作を必ず劇場に見に行くようにと念を押されつつ、受け取っておりました。うらやましい。

そんな感じでトークショーが終了し、しばしの休憩の後、映画の上映が始まりました。
いずれも傑作で、まったく眠くなることなく、最後まで見ることが出来ましたですよ。
コメント ( 0 )|Trackback ( )
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。