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海軍官僚と太平洋戦争
太平洋戦争を発掘する
/
2007年09月04日 21時35分53秒
文芸春秋の8月号に、半藤一利、秦郁彦、戸一成、福田和也、平間洋一というメンバーで「昭和の海軍、エリート集団の栄光と失墜」という座談会特集が載っていたので一部を紹介しよう。
大和ミュージアムの大和
まず日米開戦時の海軍大臣は、前軍令部総長、伏見宮(日米早期開戦論者)に徹底的に従順であったために、開戦2ヶ月前に大臣になれた嶋田繁太郎である。
海軍兵学校で同期であった山本五十六の嶋田評は、「あのおめでたい嶋ハンが」であり、当時「ボンクラだから海軍大臣になれた」と陰口されていた人物である。
射程距離32kmを誇った酸素魚雷
嶋田海軍大臣は、「艦長が艦と運命を共にしないのは何事か」というのが口癖で、大臣の命令通り艦の沈没の際に脱出しない艦長が続出、中佐クラスの中堅幹部が払底してしまったというから戦争に勝てる訳が無い。
又、太平洋戦争開戦時の海軍軍令部総長も、伏見宮にポストを譲られた凡庸な長野修身で、長野総長は「武士らしく戦艦、空母に立ち向かえ」と潜水艦部隊に号令している。
酸素魚雷の説明
兵器としての潜水艦は、敵の軍艦の手薄なタイミングに輸送船を沈めて補給を絶つことが最も効果的な運用方法であり、ドイツのUボートやアメリカ潜水艦は、この運用で絶大な戦果を上げていた。
人間魚雷回天
ところが、日本海軍の潜水艦は、長野総長の指示で戦争に勝つことよりも武士道精神を優先して敵の軍艦への攻撃をしかけために、その殆どが戦果を上げる前に沈められてしまっている。
回天の説明
又、官僚組織であった海軍では、戦時中にもかかわらず毎年恒例の人事異動を発令していて、例えばミッドウエー海戦の直前にも大規模な人事異動によって海戦に出撃する艦隊幹部が上から下まで大幅に入れ替わったというから、戦争に勝って国を守ることよりも官僚組織を守ることを優先させていたのである。
特殊潜航艇
かつての社会保険庁の長官や各省の幹部が毎年クルクル変わるように、当時の海軍官僚にも適材という考えは無く、戦争の真っ最中にも海軍大学卒業年次による重要ポストの定期異動を最後まで続けていたというのであきれるばかりである。
武士道という美学を戦争に持ち込み、入省年次の古い官僚の上には有能であっても年次の若い官僚を絶対に置かない定期異動をしていては、勝てる道理は無かったのである。
この精神主義や人事システムは、遺伝子のように今の官僚組織にも脈々と受け継がれ、太平洋戦争に負けたように日本が崩壊するまで続く可能性があることを我々は覚えておく必要がある。
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