今年惜しくもノーベル文学賞を逃した村上春樹さんの作品「村上朝日堂」の中に、文章の書き方というエッセーがあったので長居植物園の昆虫の写真と一緒に紹介しましょう。<・・・>部分がその引用・・・蜜を求めて飛行中のオオスカシバ
村上さんは、いきなり<文章を書くコツは文章を書かないことである・・・といってもわかりにくいだろうけど、要するに「書きすぎない」ということだ>と言います。写真を撮るコツも、画面にアレコレ写し過ぎないことでしょう。・・・コスモスの中央でホバリング中のオオスカシバ。
<文章というのは「さあ書こう」と思ってなかなか書けるものではない。まず「何を書くか」という内容が必要だし、「どんな風に書くか」というスタイルが必要である>一方、デジカメで写真を撮ろうと思うと、なんでもすぐ撮ることができます。・・・コスモスの中に入ったアゲハチョウ。
<でも若いうちから、自分にふさわしい内容やスタイルが発見できるかというと、これは天才でもないかぎりむずかしい。だからどこかから既成の内容やスタイルを借りてきて、適当にしのいでいくことになる>写真も人の作品を多く見て、そのスタイルを真似ることから始めるのが大切でしょう。・・・ウラナミシジミの表側
<既成のものというのは他人にも受け入れられやすいから、器用な人だとまわりから「お、うまいね」なんてけっこう言われたりする>写真も全く同じと思います。・・・ツマグロヒョウモンの雌
<本人もその気になる。もっとほめられようと思う・・・という風にして駄目になった人を僕は何人も見てきた>ホントに現実は意外と厳しいものです。・・・ミツバチ
<確かに文章というのは量を書けば上手くなる。でも自分の中にきちんとした方向感覚が無い限り、上手さの大半は「器用さ」で終わってしまう>写真も多く撮れば上手くなる、でもオリジナリティが無いと器用さだけで終わりでしょう。・・・オオスカシバをもう一枚
<それではそんな方向感覚はどうすれば身につくか?これはもう、文章云々をべつにしてとにかく生きるということしかない>写真もそうかも・・・ホバリング中のミツバチ
<どんな風に書くかというのは、どんな風に生きるかというのとだいたい同じだ。どんな風に女の子を口説くかとか、どんな風に喧嘩するかとか、寿司屋に行って何を食べるかとか、そういうことです>なるほど哲学的ですね。・・・飛行中のアゲハチョウ
<ひととおりそういうことをやってみて、「なんだ、これならべつに文章なんてわざわざ書く必要もないや」と思えばそれは最高にハッピーだし、「それでもまだ書きたい」と思えばー上手い下手は別にしてー自分自身のきちんとした文章が書ける>文章と写真は、どうやら共通している部分があるらしいという話でした。
参考文献:村上朝日堂 村上春樹・安西水丸著