1989年から1990年、6か国国際隊の一員として南極大陸を220日間に渡って犬ぞりで横断した舟津さんが南極で遭難寸前となりますが、冷静に対処して難を逃れています。近所にいるミサゴの写真と一緒に紹介しましょう。<・・・>部は著書からの引用・・・飛行していたミサゴがダーウィンポーズ。
氷点下20℃~30℃、風速35mの吹雪のなか<もうこうなっては開き直って「今は何をなすべきか」を考える。とにかく気を落ち着かせる必要があると感じ、大声で笑ってみる。バカ笑いのあとは景気の良い歌を歌う。そうしているうちにだんだん心が落ち着いてきて、開き直りの気持ちが前面に出てくる>・・・実は杭に止るためのポーズでした。
<すると状況にどのように対応してゆけばよいかが順序だって考えられるようになってくる。暴風を避けるにはまず穴を掘る。しかし雪が硬くて手では掘れない。何かポケットの中に掘る道具はないか。こういった思考の順序でウインドパンツのポケットのプライヤー(ペンチのようなもの)の存在に気づく>・・・杭に爪が掛かり
<そのプライヤーを取り出して雪面を叩くように穴を掘りはじめた。次に、体温維持のために雪が衣類の隙間から入り込み体温で溶けて衣服の中が濡れるのを極力防ぐ必要があると考えた>・・・杭に着陸
<ズボンの裾、手袋の上端部、ジャケットの裾などを締めることで雪の侵入を防ぐ。ちょっとの隙間も見逃してはならない。そして足に気を向ける。靴下と防水ソックスだけだったので徐々に冷たくなってきている。これは絶えず動かす以外方法は無かった>・・・爪の位置を調整中
<パニックの一歩手前だった気持ちもようやく平常に戻った。「よし、絶対に生き延びてやる。こんな経験は一生のうちにめったにできるものではない。この機会を楽しませてもらおうじゃないか」とサバイバルゲームに挑戦するような気持ちとなる>・・・両足の爪でしっかりと杭を掴みました。
<風上に頭を向け、這いつくばってプライヤーで雪面を掘る。硬くてなかなか掘れない。掘れても雪ですぐに埋まる。それをかき出してまた掘る。とにかく掘るしか自分の生きる道は無いと言い聞かせて掘り続ける。足が冷えてくるとその場でジャンプして足を蹴り上げ血液を足に送る>・・・翼を広げてバランスを取り
<何とか真下に70センチほど穴を掘り、その下は硬くて掘れなかったので横に向かって掘り、足の入れ場所を確保する。手袋が少しずつ湿ってくるが、濡れることは極力避けないといけない>・・・右足も杭の上に
<ようやく足を入れる横穴をつくって横になる。上半身は10秒で雪で埋まり動かせないが、足は横穴に入っているので動かせる。口から首にかけて腕で小さな空間をつくりその空間の中で呼吸していた>・・・これで安定したようです。
つづく
参考文献:犬ぞり隊南極大陸を横断す 舟津圭三著