昨日の記事(大統領の執事の涙という映画)に関連し、最近読んだ岩波新書の「ドキュメントアメリカの金権政治」軽部謙介著から、アメリカ議会の内側を長居植物園の梅の花と一緒に紹介しましょう。
アメリカ議会では、税金を配分する予算審議の中に、ほとんど吟味されることなく予算が通過するイヤーマークと呼ばれる補助金があります。
イヤーマーク(直訳すれば耳印)とは、もともと放牧した家畜の所有者を特定するため羊や牛の耳に付けた印のことで、議員が取ってきた補助金を他の予算と区別するために使われるようになったようです。
現代アメリカのイヤーマークは、政治献金やロビー活動に対する議員からの返礼としてアメリカのマネーポリティックスに深く組み込まれ、容易に変革できそうもありません。
アメリカの市民団体によれば、連邦予算に現れたイヤーマークは2005年に1万5000件、ホワイトハウス発表によれば2008年に1万1534件、その額は165億ドル(1兆6500億円)にも上るとか。
議会にはイヤーマークで個人的な利益を得てはならないというルールがありますが、連邦予算を議員が個人的な栄誉獲得に利用しているとの批判は絶えないようです。
例えば2008年、ニューヨーク市立大学に女性、アフリカ系、ヒスパニック系若者が幹部公務員として採用されるのを援助する機関「チャールズ・ランゲル・センター・フォー・パブリック・サービス」の設立が決まりました。
この機関をイヤーマークとして予算に乗せ、設立させたのは、大学のあるマンハッタン北部を選挙区とする民主党下院議員チャールズ・ランゲルです。
ランゲル氏は、1970年に初当選以来下院議員に連続当選、2006年には下院歳入委員長を務めている大物議員で、今年(2014年11月)の中間選挙で23期目に挑戦するそうです。
ランゲル議員は、下院議員を辞めるのは(大物議員なら簡単にできるイヤーマークを希望する支援者が大勢いて)簡単ではないが、当選したら2016年末には引退すると回答しているそうです。
つづく
参考文献:ドキュメントアメリカの金権政治 軽部謙介著