半藤一利氏のエッセー「清張さんと司馬さん」の中で司馬遼太郎が面白いことを言っていますので、環境省レッドリスト2015絶滅危惧ⅠB(EN)に指定されているチュウヒの写真と一緒にそれを紹介しましょう。<・・・>が引用部分(・・・)は補足部分
<司馬:(戦前までの)陸軍は、相手に対して有利な兵器があるとか、実効ある戦略があるとかいうことで妙な秘密主義をとったのではなく、弱点を隠すためにそのようにしていたのですね>
<司馬:国家でも人間個々でも、真の強さというのは、平気で自分の弱みというカードを見せる精神からくるものでしょう>(中略)
<司馬:日露戦争に勝ってから日本は変になったと、私はかねがね思っています。むろん負けていたら大変で、ロシアの植民地になっていたでしょうけど>
<司馬:しかし、勝って虚勢を示す国家になった。この虚勢が1945年の国家滅亡の遠因でした。日露戦争は、海軍は別として、満州における陸軍は危うかったのです>
<司馬:そのことを日露戦争後、正直に公表し、オープンでもって歴史として大いに検討していれば、昭和になってあのように国家がいびつにならずにすんだでしょう>
<司馬:しかし、軍は当時の本質を隠しました。理由は、帝政ロシアが復讐のためにもう一度やってくることを恐れ、弱点を隠してしまいたかったのです(中略)率直はいいですね。個人でも団体でも>
<半藤:そういう態度がまた、ユーモアを生んだり、余裕になってくる。・・・司馬:ほんとだなあ。ユーモアが生まれると言語が磨かれますね>
<司馬:やがて日本語がきれいになって、すばらしい日本語として育ってゆく。そうでない日本語が官僚言語ですね。弱点を隠すためにできている>
<半藤:「善処する」とかですね。ほんとうは(太平洋戦争)開戦に際して海軍が「実は米英が相手では勝てない」と隠さずに言えばよかったわけですね。・・・司馬:そういってこそ愛国者だし、勇者だし、真に軍事の専門家だったといえますね>
つづく
参考文献:「清張さんと司馬さん」 半藤一利著