万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日本国のエネルギー政策は融解するのか

2012年05月11日 10時58分16秒 | 日本政治
石原知事に住民投票請求=原発「都民で決める」―市民団体(時事通信) - goo ニュース
 現在、日本国は、エネルギー危機のただなかにあります。それは、エネルギー政策の融解といってもよいほど、深刻な状況です。

 エネルギー政策には、数ある政策の中でとりわけ守備範囲が広く、政策横断的であるという特徴があります。防衛、安全保障、外交、通商、インフラ、産業、雇用、環境…など、あらゆる政策領域との間に影響関係があるのです。ですから、その中の一つだけを基準として判断しますと、他の政策領域で致命的な損害やリスクが発生することがあります。現在の日本国政府のエネルギー政策を見ていますと、原子炉の安全性、並びに、再生エネの普及だけを基準に据えており、他の関連する領域への影響を無視しています。政府は、エネルギー政策の包括性を理解していないのです。

 また、国と地方との関係においても、分解が進行しています。地方自治体のエネルギー政策に関する権限要求はエスカレートする一方であり、地方自治体の長や議会のみならず、東京都では、反原発派の市民団体が、署名を集めた上で、都に対して住民投票を実施する条例の制定を求めています。この要求が通れば、都民が、国のエネルギー政策全体を決定することになりかねず、越権行為でもあります。しかも、この要求では、永住外国人にまで投票権を付与しようとしていますので、国家の枠組みさえ融解しそうなのです(憲法違反では…)。

 垂直・水平の両方向に引っ張られて、日本国のエネルギー政策は、融解の危機に瀕しています。にもかかわらず、政府は、この融解を止めようともせず、むしろ、促進しようとさえしているのです。エネルギー政策なき国家はやがて漂流し、”愚者の船”の如く、自ら船底に穴をあけて沈没するのではないでしょうか。

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コメント (6)
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