万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ユーロからドラクマへは荊の道

2012年05月17日 17時01分35秒 | ヨーロッパ
ギリシャ、再選挙の投開票は6月17日(朝日新聞) - goo ニュース
 連立政権交渉が決裂したギリシャでは、来月の17日に再選挙が実施される予定とのことです。ユーロとギリシャの行方を決める運命の選挙となりそうですが、ギリシャのユーロ離脱に際しては、相当の混乱が発生することが予測されます。

 ギリシャが自国の中央銀行をESCBから切り離し、通貨発行権を回復すれば、ギリシャは、中央銀行による赤字国債の引き受けという手段を取り戻すことができます。高率のインフレを覚悟すれば、国内的には、財政問題の解決手段とはなるものの(対外的にはユーロ建ての国債償還・利払い問題は残る…)、もう一つの問題として、ユーロからドラクマへの移行に伴う混乱を挙げることができます。単一通貨ユーロの導入は、ドラクマをユーロと交換するだけで済んだのですが、ユーロからドラクマへの逆コースは、前者ほど簡単ではありません。まず、ユーロとドラクマとの間の線引きが困難です。ドラクマと交換される範囲としては、政府の財政、国有財産、ギリシャ国民並びに金融機関を含めたギリシャに籍を置く企業の資産…などが考えられますが、ギリシャの金融機関では、預金の引き出しが続いているところを見ますと、国民の多くは、ユーロ建てで資産を保持するための逃避行動に走っているようです(国民がユーロ建て=外貨建て預金を望む場合、政府は、ドラクマへの交換を強制できるのでしょうか?)。また、法定通貨としてドラクマを指定したとしても、市中ではユーロが依然として使用が継続され、ユーロとドラクマが併用される二重通貨体制が出現するかもしれないのです。

 ユーロ圏から離脱し、財政緩和政策を実施したとしても、ギリシャの現状が改善されるとは限りません(絶対に悪化するとは言えませんが…)。果たして、ギリシャ国民は、ユーロ離脱を選択するのでしょうか。

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